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105/125

武将 蒲生氏郷 第105話伏兵・奇襲への対応

(1584年・尾張国/長久手手前の林道)

長久手へ向かう街道を進んでいたときだった。

前方の林がわずかに揺れ、

斥候が手を挙げて合図した。

「止まれ!」

槍隊が足を止め、

鉄砲隊が火縄を押さえ、

荷駄隊が列を締めた。

林の奥で、

枝が折れる乾いた音が続いた。

次の瞬間、

家康方の伏兵が林の影から飛び出した。

槍を構えた十数名が、

街道へ向けて一気に駆け下りてきた。

氏郷はすぐに声を上げた。

「槍隊、前へ!

 押し返せ!」

槍隊が前に出て、

槍の穂先を揃えた。

林から出てきた敵兵とぶつかり、

槍の柄がぶつかる音が響いた。

左馬允が馬を寄せ、

側面の林を指さした。

「殿、右側も動きます!

 側面、警戒を強めます!」

弓隊が右側へ散り、

矢を番えた。

鉄砲隊は左側の開けた場所へ移動し、

射撃位置を確保した。

「鉄砲、構え!」

左馬允の声で、

鉄砲隊が火縄を火皿に近づけた。

火縄の煙が細く立ち上がり、

兵たちが前方を見据えた。

林の奥から、

さらに敵兵が現れた。

槍を振り上げ、

街道へ向かって走ってくる。

氏郷が短く命じた。

「撃て!」

火縄が火皿に落ち、

乾いた破裂音が連続して響いた。

白い煙が林へ流れ、

敵兵が足を止めた。

前に出ていた数名が倒れ、

後続が混乱した。

槍隊がその隙に前へ出て、

敵を押し返した。

槍の穂先が林の影へ押し込まれ、

敵兵が後退した。

左馬允が側面を確認し、

弓隊へ指示を飛ばした。

「右側、射て!」

弓隊が矢を放ち、

林の影へ矢が吸い込まれた。

枝が揺れ、

敵兵の動きが止まった。

街道の中央では、

荷駄隊が荷車を寄せて防壁を作り、

馬を後方へ下げていた。

兵たちが荷車の間に入り、

槍を構えて警戒した。

氏郷は前方を確認し、

槍隊へ合図した。

「押し出せ!

 街道を確保する!」

槍隊が一斉に前へ進み、

敵兵を林の奥へ押し返した。

鉄砲隊が再び火縄を構え、

弓隊が側面を固めた。

林の中で枝が折れる音が続き、

やがて敵兵の姿が消えた。

伏兵は完全に退いた。

左馬允が馬を進め、

林の奥を確認した。

「殿。

 伏兵は小勢。

 街道を塞ぐ意図だけのようです。

 このまま進めます」

氏郷はうなずき、

隊列へ向き直った。

「列を整えよ。

 遅れるな。

 長久手へ向かう」

槍隊が前へ戻り、

鉄砲隊が火縄を整え、

弓隊が矢束を確認した。

荷駄隊が荷車を押し出し、

街道の中央へ戻った。

伏兵を退けた氏郷隊は、

再び街道を進み始めた。

林の影が後ろへ流れ、

前方には長久手の丘陵が近づいていた。


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