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2013年
6月9日
21:11
パレスチナ エルサレム郊外
基地に帰還すると、社員一同が集結していた。
「ディアナ、ラリー戻ってきたか」
「この気違いのせいで全滅しかけたけど戻りました」
「助けてやったのに礼の一つもねえのか? ああ?」
基地は動員の準備を完了したゲリラ達が揃っている。
自分達が訓練を見ていないはずの奴が多いのは、他のとこから動員されてきた奴かもしれない。
もうシャワー浴びてベッドにダイブしたい気分だが、会議でもするらしい。
「今回の偵察行動、我々にも損害が出てしまった。 死亡者は無かったが、三人が重軽傷で本国送還だ」
「本国か…」
さっさとこんなクソッタレな場所から帰りたいな。
「偵察の結果だが、ラインリバーがイスラエルの一個小隊と衝突し、これを撃破したようだ」
「どうよみんな!?」
勝ち誇った気分で叫ぶ。
「お前はそんなんだから筋肉女言われるんだぜ」
「黙れカール、あんたに言われる筋合いは無いわ」
自分だって脳まで筋肉のくせに…
「要するに敵の行動が開始したと言うことだ。 つまり… 仕事の時間だぞ! てめぇら!」
「イィィィハァァァ!!!」
ラリーがまたも雄叫びを上げて、拳を振り上げる。
「さぁ、戦争だ!」
ゲリラは市街の民衆に溶け込み、そして消え去る。
今や兵士の戦場は広い平原や砂漠でなく、狭く一般市民の住む市街地なのだ。
ジャングルに潜んでいたゲリラも市民の中に紛れ、匿われるようになった。
「とことんこの仕事に不適な銃だな」
「うー、なんとかできないかな…」
もちろん社員達も観光客かなんかに紛れることになったが、やっぱりM14は邪魔になった。
「お前、宿に留守した方が良いんじゃね?」
「ええ~…」
それは最高に不味い…
「なんとか…!」
「観光客がベトナムにまで飛んで行った古い銃を持ってるわけないだろ?」
サムのもっともな指摘に悄気ざるを得ない…
「不味いんだよ! 色々と持ってないと不味いんだよ!」
「何でだよ?」
「言えないけど… メタ的に不味い…」
「メタ?」
「それ以上は駄目だディアナ! 早まるな!」
仕方なく今回もM1911で譲歩し、ほぼ丸腰の状態(一般人からしたらとんでもない)でM14を宿のタンスに隠した。
戦闘が始まったら取り出し、戦場に馳せ向かう事になる。
「じゃ、コーヒーでも飲もうかな」
「俺は紅茶が飲みたいぞ。 注いでくれよ」
「自分でやれ」
窓の外は真っ暗で、星が瞬いていた。
普通、先進国の観光客はそこに感動を覚えたりするが、見慣れた光景なので何も感じない。
むしろ明る過ぎると行動が悟られやすいので、月よ隠れろ星よ消え失せろと念じている。
「いやでも綺麗じゃん」
「あっちゃー、また声出てたか」
限り無くブラックなコーヒーと、限り無く濃厚な匂いを放つ紅茶が出来上がり、それをテーブルまで運んだ。
「おぉ、なんだかんだ言って作ってくれぬぉ!」
「どうした? 恩に着ろよー女の子の特製紅茶だぞー」
「お前砂糖って知ってるか?」
コップには血のように赤い何かの液体がなみなみと入っている。
「砂糖? 軟弱者め、あんな怪しい白い粉要らないでしょ」
「何で危ない言い方をする!?」
漆黒のコーヒーを喉に流すと、痛覚まで反応する苦みが伝わった。
こんくらい味ないと駄目だね。
「お前は完全に男、いや漢だ…」
「その舌捩じ切ってやろうか? 小僧」
「もはや悪魔だよ! 誰か助け」
下の階でおとなしくしていたジョナサンは、上階からの暴れる音に驚いたが、気には止めなかった。
「我々は一般市民には危害を加えない! テロリストを引き出せば危害は加えない!」
暗闇に拡声器の音が響き、仮眠を取っていた私は飛び起きた。
「敵?」
「らしいな」
窓から道を覗くとメルカバ戦車が一輛、ハンヴィーが二台、低速で走行している。
見える限り、その回りには歩兵が十人護衛していた。
「ジョナサンのとこ行くよ」
「おっし」
タンスからM14を出して、狭い廊下に出る。
「機甲部隊か… 大きくでたな」
「誰かRPG持ってんのかな」
古びた階段を素早く駆け下りて、ジョナサンのいる大部屋に急ぐ。
「ディアナ、眠れたか?」
「ああ、もっと寝たいよサム」
シグ552を担いだサムも、階段から続いて下りてきた。
「アメリカに帰ったらぐっすり眠れるさ」
部屋に入ると、ジョナサンが背を向けて仁王立ちしていた。
なんておっかない…
「来たか」
こっちに振り返り、呟くように言う。
なんで電気付けないかね。
座ってしばらく待つと社員が集り、部屋は楽しいくらい騒がしくなった。
ジョナサンは仁王立ちのまま、無線を口に近付ける。
「始めるか」
To Be Continued…




