夜更け前
2013年
6月9日
17:04
パレスチナ エルサレム近郊
「あー、カールぅ、水筒寄越せ」
「残念だったな、もう口付けたよ」
砂の中に埋もれかけている道路を辿り、市街地に向かう。
「うっへぇ、汗臭そ…」
「お前それどういう意味だオラ」
「ジャクソンあんたは?」
「二つありますが」
「用意が良いね! 一つくれ」
ジャクソンから水筒を半ば強引に奪い、一口だけ舐めてリュックに仕舞った。
「後で返すからな」
「新人よ覚えておけ、この女は借りた物を返さない」
「あんたは私の風評を下げて何がしたいの?」
いい加減呆れてきたぞ…
「その言葉そのまま返せるんだからな」
威圧させる為に腰のガバメントを抜き、弾倉を入れる。
「お前って本当に… なんでもない…」
「そうか」
一筋の鋭い銃声が鳴り、ロビンの右胸に弾丸が貫通した。
「エネミーカミング!」
「ヘッダンヘッダン!」
素早く地面に飛び込み、仕舞いかけていたガバメントを前に構える。
「ジョナサンこちらラインリバー! 銃撃を受けてロビンがやられた! 応援求む、エルサレム東の砂漠の道!」
「了解、状況を把握し持ち堪えろ。 近くにナイルリバーがいるので向かわせる」
無線を胸ポケットに入れて何も無い砂漠を見渡す。
「南西方向に集団がいる。 俺が見張っとく」
「こんな砂漠に集団なんて、敵と考えて間違ないよ」
ロビンのいる方から血の匂いが漂ってくる。
「ジャクソンなにボサッとしてんの。 ロビンを連れてきて」
リュックから応急処置のキットを引っ張り出し、ロビンを待った。
「ディアナさん救急なんて出来るんですか?」
「失礼な。 あたしは戦場の天使、衛生兵だよ」
「お前が天使ならロビンを撃った奴は大天使だな」
「ふん、地獄に引き摺り落としてやる」
足を引っ張られてやってきたロビンは、右胸の鎖骨の辺りに弾丸が命中し、肺の上にそれが止まっている。
臓器は問題無いが、代わりに血管がやられていた。
「血がドックドク出てるぞ。 カール、血拭いてやって」
「了解、タオルくれ」
白いタオルを投げて寄越し、消毒液のボトルを開ける。
「消毒したら止血して包帯巻く。 意識が無いっぽいのが問題だけど、応援に回収してもらうまで持たせればいい」
カールが頷き、地面にまで流れる血をタオルで拭いた。
ボトルの中の消毒液を、やや綺麗になった傷口にぶっかける。
「集団が接近してきてるぞ。 UZI借りとけよ」
「非常事態かぁ。 拝借拝借」
青ざめている顔に許しを得て、マイクロUZIを手に取る。
「これライセンス品じゃなくてIMIの奴じゃないの?」
本当にえげつないな…
「止血パッド貼るよ」
白い四角形のガーゼを貼ろうとした時、再び銃声。
だが威嚇射撃か探索射撃だったようで、弾丸は虚空を通過してどこぞに消えて行った。
「全員無事?」
「奴等いい気になりやがって」
「ロビンさんはどうです?」
「ま、大丈夫でしょ。 弾丸引っこ抜いて無いけど…」
「これ以上失血するのは不味いだろ」
まったく、応援って奴はいつ来るんだか…
水筒に口を付け、さっきからまったく動かない敵を睨む。
さっきの射撃があっちから来ていた以上、あいつらが敵で間違い無い。
相手はこっちの戦力を把握しているだろうか。
こっちはわからない。
だからといってにらめっこ状態が続くと、良くないのだが。
「もうすぐ夜になるぞ…」
「あり?」
知らない内にすっかり日が赤くなっていた。
確か援護要請したのが昼過ぎ…
「ジョナサン聞いてる? 応援は? ナイルリバーってのはどこのどいつ?」
「聞いてるぞラインリバー。 ナイルリバーは検問に引っ掛かりかけているようだ」
「ロビンが死んでもいいのかって言って頂戴」
「ラリーがそんなことに耳を傾けると思うか? 奴はいま検問を相手に殴り合いをしているんだよ」
「あー 後であいつ殺す」
いくら馬鹿で気違いだからって、仲間が危機的状況を知らん振りするか?
「ディアナ、いっそ奇襲するのはどうだ?」
「あんた死ぬ気?」
そういえば、軍にいた時もこんな状況になったことが…
何を考えている、昔は関係無い…
「カール、もしかして余裕が無くなってきたとか、ふざけたことを考えてるわけ?」
「ああ、不味くないか?」
「あたしなんていつだって不味い状況よ。 仕事場じゃ撃たれて、国に帰れば借金取りに追われる」
「お前はなんでそんなにクレイジーなんだ…」
いよいよ日光がエルサレムの方角に沈み始める。
To Be Continued…




