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Dead or Alive  作者: 煤路山楽天
ガザ
31/38

小手調べといこうか

2013年

7月6日

10:05

USA アイオワ州

 ブローニングハイパワーのグリップを握り、カートリッジを叩いてスライドを引いた。


「弾薬は全部入ってるよ。 あの的に射撃しながら接近して」


「サンキューリン。 わかってるよ」


 20m先に素っ気無い的があり、中心に当てれば二点、外側なら一点となる。


 カールとマリーは四人くらい同時に出来るのに後ろで見守っていた。


 地面は砂利でそうそう転ぶ事はない。


「タイミングは任せるよ、ダイ」


「イェア」


 リンはカールのすぐ隣りで、射撃場と通路を隔てる柵に寄っ掛かっている。


 アイソセレススタンスに構え、まずは一発撃った。


 足を踏み出してさらに一発。


「二発命中、二点ね」


 歩く速度を早めて続け様に撃ちまくる。


 やっぱりこの反動がいい。


「相変わらずダイは外さないね」


「本格的に化物女だな…」


 カール、あいつ後で殺しとくか…


 早歩きから走りにシフトチェンジし、逆に連射速度を下げた。


 そうでもしないと当たらなくなる。


「今は十点ね!」


「全弾命中で良いよ!」


 銃口から吐かれる硝煙がやや視界を隠して、的へ狙いが少し付け辛い。


 真っ直ぐに前進しているので、集弾性は良くなるはずなのだが、狙いの精度はがたがた落ちてしまうのが走り撃ち。


 経験上の話だが。


 的からほんの数mまで近付いた。


 蜂の巣になっている的の中心を示す点を、情けもへったくれも無く撃ちまくる。


 やがてスライドが戻らなくなり、引き金に手応えが消えた。


「二十三点! さすがダイ!」


「俺たちに出来ない事を平然と…」


「それ以上言ったら駄目よ!」


 暴走しかけるカールを走って戻りながら突っ込む。


「腕上がった?」


「当然でしょ…」


 我が事のように喜ぶリンにハイパワーを投げ、流れる汗を腕で拭った


「外れ無しっていうのが…」


「ディアナさん凄いね!」


「マリー、あんたやる?」


 まだ称えようとしているリンを抑え、マリーの顔を見つめる。


「マリーちゃん? ならこんなデカブツより、小さいのが良いんじゃない?」


「ま、最初はそうか?」


「うん? そうする?」


 マリーはよくわかってなさそうだが、リンに取ってこいと指令した。


「マリーいい?」


「な、なに?」


「まず、絶対に銃口を自分に向けない。 次、絶対に指先を銃口の前に出さない」


「え、うん…」


 マリーの後ろにいるカールが呆れるくらい、くどくどと注意を垂れ、最後に、


「絶対に銃を手放さない」


 と結んだ。


「それ戦場の話だろ…」


「うるっさい」


 呆れ顔から半笑いに変わった、カールの呟きにカウンターを打ち、小屋から出てきたリンに視線を移す。


「S&W M36チーフ… 五発装填のリボルバーね」


「カール使い方教えてやって」


「俺?」


 さっきまで持っていたオートマチックより、かなりちっちゃい銃をカールにパス。


「よし、マリーちゃんこっち来い…」


「はーい」


 マグを二つカールに投げ、袖をたくし上げてリンの隣りに立つ。


「二年ぶりだっけ?」


「そうね… あんたはどうよ?」


 リンは、あたしがいたハイスクールの同じクラスメイトで、あたしと同じく米軍に入った。


 あたしが二年前に除隊して以来、一切やり取りしていなかった。


「私はまだ軍にいるよ」


 撃鉄の起こし方を実演するカールを見ながら、目に掛かる髪を振り払う。


「今ダイはどうしてんの?」


「さぁて何でしょう? 鉄道の車掌? バスガール? 電話交換手?」


「古いよ… 相変わらず言う事が古いよ…」


「親父の教育が悪かったの。 さぁなんだと思う?」


「どうせまだ戦場にいるんでしょ?」


 ありゃ…


「やっぱりね」


「えー、なんでバレてんの?」


「あのダイが真面目にスーツ着て通勤してるとは思えなくてね」


 つまりあたしは社会不適合者って事か…


「そうじゃないわよ、バイタリティがあるってこと」


 親友は快活に笑い、さっきあたしがいた位置に向かうマリーに目を向けた。




「さぁてマリーちゃん。 目印の所に立ってね」


 緊張気味でヘッドホンを付けたマリーが立ち止まり、スタンスもへったくれも無いそれっぽい形でM36を構えた。


 まぁそんなもんか…


「ダイ… ディアナは調子に乗って走ってたけど、あなたは歩きでいいから」


「ねぇリン、それどういう事?」


 マリーはさっきから黙り込んで、的を見つめて身体を固めている。


 大丈夫かね、自分を撃ったりしなきゃ良いけど…


  溜息のような深い深呼吸の声がして、M36が躍り上がった。


「大幅に外れ! 狙いは正確に!」


  リンが人の耳元に関わらず叫び、あたしとマリーを同時に竦ませる。


 ややあってから、マリーが一歩を踏み出して次弾を発射した。


 今度は的の端っこを叩いて弾痕を作り、弾丸はエネルギーを失って、軽い音を立てて砂利に落ちる。


「良いよ良いよ! 一点!」


 リボルバーの鋭い銃声はさらに続き、再び的に当たる金属音が響いた。


 なかなか筋がいい気が…


 だが四発目は的を避けて後ろの土嚢に飛び込む。


「ありゃ残念…」


「お前じゃないんだから外れ無しはないだろ」


「カールちょっと黙って」


 うるさい奴黙らせて我が娘の次の行動を待つ。


 もうマリーと的の距離は半分くらいで、そのせいもあって命中率は上がるだろう。


 弾倉の最後の弾丸が発射され、三点のポイントに着弾した。


「良いよ! マグチェンジ!」


 親友の叫びがまたも耳を支配し、たまらず人差し指を詰める。


 昔から大声なのがちっとも変わっていない。


 カールの教えが良かったと見えて、排莢の動作が素早く装填も確実だ。


「さすが私の娘よね」


「娘か?」


「黙れクソッタレ」


 失礼な相棒の髪を引っ掴んで引っ張り、音を上げようがぜんぜん気にしない。


 リロードが完了し、射撃が再開する。




「十七点! お疲れさん!」


「うー、ありがとうございました!」


 緊張からの解放による呻きを上げながら、ヘッドホンを外してこっちに走ってくる。


 M36はまだ銃身から陽炎と硝煙を吐いていた。


「ディアナさん! どうだった?」


「良かったよ。 カール良くやった」


「じゃあそろそろ髪を離してもらっていいか?」


 カールの嘆願を無視しておいて、M36を受け取りのんびりしているリンに渡す。


「言ってなかったけど今日はライフル撃てないからね。 担当者が夏風邪引いてるから」


「どうせマリーはまだライフル撃てないでしょ。 ねぇ?」


「え? わかんない?」


「うん。 だろうね」


 もう昼になっていた。


 腹減ったな…


「もう帰るわ。 ライフル撃てないし…」


「俺…」


 知るかボケ。


「じゃあまた来なよ! 生きてたらね」


「なかなか縁起の悪い事言ってくれるね」


 いつも通りの親友に呆れ声を浴びせた。


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