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Dead or Alive  作者: 煤路山楽天
ガザ
30/38

Gun's up!

2013年

7月6日

6:10

USA アイオワ州

「…」


 いつもより馬鹿に明るい部屋に気付き、体を起こしてみた。


「おはよう! ディアナさん!」


「…おはようマリー」


 先に起きて部屋のカーテンを開けていたらしい。


 眠いけど眩しくて寝れたもんじゃない。


 仕方なくベッドを這い出て、眠い目を擦りながらキッチンに行く。


「サンドイッチ作ったけどどうかな?」


「…は?」


 素通りしたテーブルに振り返り、小綺麗に並べられたサンドイッチを見つけた。


「具なんてあったっけ?」


 確か冷蔵庫には卵と卵と卵… しか無かったはず。


「さっき買ってきたの」


「金はどうしたん?」


「ジャックおじさんがこの間くれたから…」


「あの親父ね…」


 取り敢えず目覚しの為に顔を洗い、木製のテーブルに着いた。


「頂きます…」


「どうぞ!」


 朝から元気だな…


 ベーコンとレタスが挟まれたサンドイッチを詰め込む。


「…美味しいよ」


「ありがとう!」


 ガキの頃の自分そっくりの顔で笑い、マリーは風呂の方に行った。


「洗濯するよ?」


「マジで? お願い」


 ぼんやりとiPhoneの画面を叩き、六時という表示を確認。


 すっげー早起きじゃん…


「マリー! いつもこの時間?」


「うん? そうだよ」


 体が持たんって…


 窓から目を凝らして見上げると、空は見た事がないくらい青い。


 休日だったな… する事あるかな、なんかマリーが全部やってるけど…


 サンドイッチを貪って腹を満たし、マリーにバレないようにベッドに戻ろうとしたが、


「どこ行くの? 二度寝?」


「いやぁ… そんな事ないよ…」


 マリーが怪しむような表情で戻ってきて、その道は閉ざされた。


 適当にテレビを付けると、人気の射撃場の様子をレポーターが伝える特集をやっていた。


「…あのお客さんが使っているのはM1カービンと言って…」


「骨董品じゃん」


「どうしたの?」


 洗濯機が回る音がここまで聞えてきて、マリーがいつの間にか後ろにいた。


「いやでも、あたしのも骨董品みたいなもんか…」


 寝巻のままキャビネットに行き、着替えるでなくM14を取り出す。


「なにそれ…」


「スプリングフィールドM14、あんたとあたしが生まれるずっと前に作られた銃」


 陽気な店員がM1カービンのマグチェンジを披露している。


 M14を手早く分解してレシーバーをタオルで拭いた。


「掃除はこまめにね」


「鹿でも撃つの?」


 好奇心と背徳感が入り混じった、怖々とした声で聞かれる。


「これが撃つのは的か…」


 M1カービンが人型の的に向けられ、硝煙を撒き散らして発砲した。


「人だね」


 そうだ、暇だし射撃場行くか!




「そして俺が呼ばれる…」


「わかってるじゃない」


 いつも通りカールのSUVの後部座席に乗り込み、マリーの手を引いた。


「射撃場か… お前は娘を兵士にする気か?」


 SUVのエンジンが熱風を吹して、タイヤが動力を得て回り出す。


 腰を据えてスモークの貼られた窓から家の外を眺めた。


「あたしは兵士としての技能しかないからね…」


「今日は不貞腐れてるな。 どうした?」


「ディアナさん大丈夫?」


 つまりいつもあたしは脳天気だと?


 街の風景が次々と後ろに消えて行くが、通る人は多くなり建物は高くなる。


 まだ時間は八時、出勤中のスーツどもが街を練り歩いていた。


「そういやM14持ってないな?」


「アレを待ってる子供連れってどうしてもアレじゃん?」


「まぁな…」


 時間はまだ八時で、出勤を急ぐスーツが街を歩く。


 目的地まで信号も距離もあるから、十分は掛かるだろう。


 瞼がフォースリーコン入隊試験の武装長距離走なんかよりずっと重くなってきた。


 渋々、かはわからないが、瞼を降ろす事にした。




「ディアナ、着いたぞ!」


「…ああ?」


 軽くなった目を開けて顔を起すと、SUVが止まっていた。


「ディアナさん、窓の跡が付いてるよ… はは」


「笑うんじゃない…」


 ちょっと触れると頬に長い線がくっきり付いているのが分かる。


 ドアを押してベトンで固められた駐車場に立った。


「んんー! 良く寝た…」


「おい」


 カールの咎めるような声に追われ、白塗の壁の建物に目に移す。


 木造の色褪せて薄くなっている赤い屋根は昔から変わらない。


「カール、あんたここに来た事は?」


「いや、あるとは知ってたが来たのは初めてだ」


 のんびり周りを見ているマリーを呼んでその建物に行く。


 掠れて読み辛い看板の下に、広いゲートが開かれていて古馴染みのヨナタン爺さんが、少ない客に対応していた。


「爺さん、久し振り!」


「ディアナか、そろそろおっ死んだかと思ってたぜ」


 ふさふさの白い髭に埋もれた口が動き、無表情での憎まれ口を叩く。


「余命縮んでも知らないよ? 爺さん」


「言われんでも、さっさとすぐに死ぬから気にすんな」


「なかなかクレイジーな爺さんだな…」


 カールの呆れ声には同意できる。


「ガキ連れか? ジャックに売春でもさせられたか」


「いーや、親が死んだから引き取った。 挨拶しなマリー」


「こんにちは…」


 皺と髭の塊みたいなヨナタンが怖いらしく、引き気味の声を出した。


「ガキよ、ここじゃ毎月自分撃ってくたばる奴がいる。 気を付けろよ」


 悪戯っぽく笑うヨナタンに料金を払い、金属のゲートをくぐる。


「あんなのといるからお前の性格が出来上がったのか」


「知らんね」


「私あの人苦手だなぁ…」


「あんなん好きな奴いないから大丈夫」


 距離が短い拳銃の射撃場と、長いライフルの射撃場があり、マリーも出来るであろう拳銃の方に行く事にした。


 そういえばあいつ居るかな?


「リン! 居る?」


「その声はダイ?」


 射撃場の側にある小屋から、タンクトップ姿の女が出てくる。


「やっぱりダイだ! 米軍辞めたの!?」


「とっくの昔だよ!」


 昔と変わらない友人とハグを交わし、マリーを呼んだ。


「リン、紹介するよ。 あたしの娘と野郎友達ね」


 マリーはヨナタンほどには恐怖を感じなかったらしく、丁寧に挨拶していた。


「え、娘? 姪だと思ったんだけど?」


「アレ、引き取った。 なんか撃ちたいんだけど…」


「ん、え? ああ、射撃ね」


 面倒いので説明を端折り、マリーの訝しむ目線に気にしないでと返す。


「なんだあの娘は? お前友達いたのか?」


「カール、あんたに礼儀ってのを物理的に教えてやりたいよ」


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