テロ≠革命?
2013年
7月4日
7:02
ロシア サンクトペテルブルク
「左に怪しいトラック! カール監視しといて!」
「イェア! 空港近いぞ!」
四人乗りレンタカーの後部座席で外を見つめていた。
運転はフョードル、助手席にレイモンドが座し、公道を空港に走る。
「ジョナサン、急ぎ過ぎじゃない?」
「それがVIPの望みだ。 油断するな」
ジョナサンとの無線を切り、M14をしっかりと掴んだ。
敵がテロリストなら、いつ来てもおかしくない。
「イワン、もうちょい振動を抑えてもらえると良いんだけど」
「イワンじゃないフョードルだ。 無理に決まってるだろう」
もうちょっとデリケートな運転って奴をね…
前方の白い車両にジョナサンとサイラスが乗っていて、そのまた先のサムに付いて行っている。
先発隊はもう空港であたし達を待っているはずだ。
「トラック近いぞ。 注意だ」
「スモーク加工してやがる… 中が見えない」
右の車線に張り付いたトラックの怪しさが、どうしても抜け切れない。
「荷台にテロリスト… なんてね…」
「縁起でもないぞディアナ…」
荷台の貨物の鉄板を貫き、銃弾がレンタカーを襲った。
ガラスが突き破られ、膝の上に破片が転がる。
「それみた事かい!」
「ブレーキに備えろ!」
「What a fuck!」
車が停止寸前まで急減速し、慣性が体を乗っ取って助手席に頭を痛打した。
「痛ってえぞクソッタレが!」
「備えろと言った!」
「黙ってろクソイワン!」
まだ残っている窓ガラスをぶち破り、M14を突き出すゆとりを作る。
M14は大口径だから、貨物の鉄板くらい貫けるはず…
フルオートの火力に任せ、引き金を引き切った。
「おま、ディアナ! 街中でフルオートは!」
「黙れカール! 礼儀ってやつを教えてやる!」
街? 知るか!
後ろの方で車がバックして逃げるのが視界の端に見える。
ジョナサンのセダンは逆に加速し、左の車線に消えた。
「臆病者の援護だね! レイモンドあんたも撃って!」
「ここで撃つと街に…」
「おいクソッタレ、ママのお叱りが怖い?」
レイモンドのMASADAがやっと銃撃し、運転席を弾丸が襲撃する。
あたしはタイヤでも狙うか…
再び荷台から7.62mm弾が絨毯のように発射された。
「うおっ! ヤバいね!」
「敵はVIPを狙っているはずだ。 空港に先回りする」
「その前に目に物見せてやる…」
顔を上げてM14をドアに委託し、振動を強引に抑えて後輪を撃つ。
タイヤのゴムが弾け、ホイールが地面を削り始めた。
「お客さんが来たぞ! クソッタレが!」
ラリーがRPKを構えて咆哮し、軽トラに軽機関銃の弾幕を浴びせる。
軽トラはひとたまりも無く爆発炎上し、乗っていたテロリストとともに炸裂。
「東から敵だ! ラリーお前はここで食い止めてろ!」
「高く付くぞクソマセゴリラ!」
RPKを小刻みに連射し、フェンスを越えようとする敵を叩き落とす。
ここは空港の北側ゲート、さっきからテロリストどもが押し寄せてきて、小さな戦争状態だ。
ゴリラ以下数名を乗せたジープが走り去り、ラリーと残った空港の警備員が防衛している。
「てめぇらタマ付いてるか!? 戦いは丁寧にやるもんじゃねぇ!」
フェンスの目の前まで接近、街の奥から現れる敵に火線を浴びせた。
もちろん街に大量の弾丸が行ったが、そんな事を考える気は毛頭無い。
「ラリー、聞こえるなら答えろ」
「黙れジョナサン! お楽しみ中だ!」
「私とて仲間に殺されたくはない。 黒いセダンは撃つな」
「勝手にしろクソッタレ!」
マグを叩き落として装填し、フェンスを蹴り破って外に飛び出した。
「It's a show time!」
道路を無視してフェンスに突撃する、後輪がパンクしたトラックに引き金を引く。
自分とトラックを隔てる薄いフェンスの寸前で停止し、エンジンから火炎が噴き出した。
「出て来いよ! ぶっ殺してやる!」
運転席から転がり出て来た男を撃ち殺し、助手席からは出るのかと待つ。
「焼死か射殺か選びやがれ!」
エンジンに容赦無く射撃を続け、火災を拡大させた。
「止めておけ、弾の無駄だ」
「あ? 邪魔すんのか?」
いつの間にか後ろに仁王立ちしていたジョナサンに言い返す。
トラックが爆発して吹っ飛び、機械の残骸がフェンスに叩き付けられた。
「おーいジョナサン聞こえてる? トラック逃がしちゃったよ」
脳天気なディアナの声がジョナサンの無線から流れる。
咄嗟にジョナサンから無線を奪った。
「おいディアナ! そいつの事なら俺が吹っ飛ばした! どうだ!?」
「あ、もしかしてラリー? あーうん頑張ったねー」
無線は再び奪還され、ジョナサンの声を発信する。
「ディアナよく聞け。 VIPは飛行機に乗り込んだ。 だが発進までの準備の間護衛せねばならん。 フョードルに急がせろ」
「おいイワン! さっさとしな!」
ワゴンのレンタカーが空港のゲートに滑り込み、滑走路まで直行する。
もちろん警察やれ空港やれからの許可はあるが、地元のジャーナリストどもが構内で騒いでいるのを、目敏く見つけた。
「フョードル、東の滑走路に回れ」
「イェア」
ジョナサンとの無線が繋がりっぱなしで車を誘導している。
まぁずっと銃声が聞こえるから着いたらわかるだろう。
「敵と思しきトラック五時方向」
「あたしが見る」
レイモンドの警告に従い、振り返って窓から顔を出すと、使い古しのトラックが走り来ていた。
空港に一般車両が走っている訳が無い。
「撃つよ」
M14の銃身を突き出し、ある程度偏差して射撃を浴びせる。
「曲がるぞ。 目的までもうすぐだ」
「はいはい」
攻撃の成果は確認できないが、大した結果ではないだろう。
良いとこボンネットを貫いたくらいのはず。
銃を車内に戻して一息つき、弾が残っているマグを外しポーチに戻して、未使用マグを入れて遊底を引く。
「フョードル、そちらを視認した。 十一時方向に我々がいる」
車が敵から遠ざかるように旋回して言われた方向に走った。
「さぁて、二、三人ぶっ倒れてるんじゃない?」
「ディアナ、お前は戦いながら手当てするのか?」
「なぁに言ってんの… さっさと全滅させんのよ」
「大したタマだな…」
アクセルを全開に走るワゴンは、シグを構えたサムの前に止まる。
「レイモンドとディアナか! 降りろ、的にされるぞ!」
「怖い事言ってくれるね!」
弾丸がめり込んだドアを開けて飛び降り、サムに敬礼っぽい事をした。
「ディアナ・オールグレン准尉以下四名! ただ今出頭しました!」
「俺は先任曹長止まりだったんだが…」
「キビキビ働けー、下士官君ー」
「ウゼぇ!」
空港の一隅は戦場と化している。
警官隊の装甲車が遮蔽物になり、同僚と警官がそこにへばり付いていた。
もちろん、7.62mm弾の雨から隠れる為だろう。
「おっーすラリー」
「来たのか」
一番近くの装甲車に素早く駆け込んで、そこにいたラリーに話し掛ける。
「来たよ… カール! こっち!」
雨宿り場を探すカールを呼び、M14を構え直した。
「ディアナ、敵は大した事ねぇ。 アフガンもイラクも行った事の無いアマちゃんどもだ」
「数と弾幕ね」
「そうだ。 詳しい事は知らんがゴリラのQBBと、俺のRPKさえあれば何とかなるだろ」
「じゃあ出なさいよ。 求愛するなら格好いい所見せてよね」
「よっしゃ! ゴリラ!」
何かよく知らんがやる気になったらしく、ゴリラを大きく呼ばわる。
「気違いに言われたくない!」
「うるせぇ行くぞmothr fuckar!」
ラリーは装甲車から飛び出して弾幕に身を晒し、RPKを脇目もふらず乱射し始めた。
舌打ちしながらも隣りの装甲車からゴリラが現れ、火元にQBB-95 LCWを撃ちまくる。
この時、どういう人間なのかを判断する簡単な方法がある。
正常な人間なら叫ぶなり、怯えるなりする。
弾幕に飛び出すのだからそうなるはずだ。
ゴリラは正常な人間だ。
気違いは、喜ぶ。
「イィィィッヤッフゥゥゥー!!!」
弾幕が明らかに弱まった。
「行くよクソッタレ!」
「やっぱり俺もか!」
カールを引っ張り外に出て、トラックや市販車に隠れた敵に制圧射撃を加える。
新戦場を白い小さなジェット機が滑走し始め、やがて空に飛び立った。
「で、あたし達は別便に帰るわけ?」
「そう言うなよ…」
空港のターミナルでそれを見守りながら、MP5を箱に戻すカールにぼやく。
「レイモンドとフョードルとクリスが随伴でロンドン行き… 次までにクリスの相方が決まるんでしょ?」
「らしいな… 気難しいロシア人じゃなけりゃいいな」
「本当に…」
To Be Continued…




