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Dead or Alive  作者: 煤路山楽天
サンクトペテルブルク
27/38

撃つのは撃たれてから

2013年

7月3日

8:21

ロシア サンクトペテルブルク


 ウチの会社は微妙に力があるらしい。


 ロビーに入ってきた数々の銃器がそれを物語る。


「M14はどこ?」


 山積みの荷物の中から木製の長いガンケースを探すが、なかなか見つからない…


「これじゃねぇのか?」


「おっ、サンキュー」


 カールが担いできたガンケースを受け取り、柔らかいソファに座る。


「仕事面倒くさい…」


「稼ぎだぜ?」


 カールが向かいに座って短めのケースをテーブルに下ろした。


「クソッタレの部屋でぼんやり突っ立ってなきゃいけないんでしょ?」


「夜だけだからな。 それだけ我慢してりゃ…」


「それが面倒いのよ」


「確かにな… 畜生、昼間に寝とかないとキツいな」



「部屋行こー、18時まで睡眠ターイム」


「そうしよそうしよ」


 受付まで行って泊まる部屋の鍵を貰い、その部屋のある方向へ歩く。


「ま、パレスチナの宿より広けりゃなんとも言わないよ」


「なら間違いなく大丈夫だな」




「起きろ」


 腹に響きような低音を聞き付け、飛び上がって起きて同時にガバメントを構えた。


「撃つなよ、仲間だ」


 フョードルがガバメントの銃口を掴んで逸らしている。


「なんだ… イワンか…」


「何度も言うがフョードルだ。 間違えるな」


 パレスチナの宿とほぼ同じ大きさの部屋から、カールを起こしたレイモンドとフョードルは立ち去った。


「…fuck」


「どうした?」


「何でもない…」


 制服を着てM14のベルトを引っ掛け、F.Mという印の付いた帽子を被る。


「行くよ」


 窮屈なドアにM14をつっかえながらも、マトリョーシカが飾ってある廊下に出た。


「野郎の部屋はどこだっけ?」


「三階のスイートだ。 ブルジョアジーだな」


「クソッタレが…」


 金持ち全員死ねばいいのに。


 ダークサイドに落ちかける感情を引き戻し、カールを引き連れてエレベーターに乗る。


 まぁ、元兵士らしいし、女とはいえ銃を持ってる奴を襲おうとはしないだろう。


 奴の部屋にいる人間の内、味方はカールだけと心掛ければいい。


「サイラス・ファッキン・ギルマーティン様の部屋へご案内…」


 エレベーターのドアが開き、目の前にゴリラとジョナサンがいた。


「交代ご苦労」


「頑張れよ」


「黙れクソゴリラ。 ジョナサン、明日はあたし達が昼間やるからね」


 カールが、は!? みたいな顔してるが気にしない。


「良かろう。 勝手にしろ」


「ジョナサン、俺がさり気なく罵倒されたのは気にしないのか?」


 もちろん誰も気にせず、ノックしてスイートに入った。


「なんで昼間なんだよ…」


「うるさい、ギルマーティンさん大丈夫ですかぁ?」


 許しを得て入ったスイートは、玄関の時点で自分達の部屋くらいデカい。


 というか比べる事自体がおかしいのかもしれない。


 このホテルで一番小さいの部屋と最大の部屋なのだ。


「も、もしかしてディアナさんですか?」


「はーいそうですよ。 宜しくお願いしまーす」


 リビングの方から怯えた質問がきて、それに答える。


 よしよし、掴みはOK…


 気品のある木材のドアを開け、中の人間の様子を伺った。


「さ、さっきは… その…」


「乱暴が過ぎましたね。 すいません」


 サイラスはイスの前に直立し、一歩間違えば敬礼でもしそうに見える。


「あたし達は入口にいるんで、なんか感じたら呼んでくださいな」


「はい…」


 楽しいねぇ、利口な奴を見るのは。


 逆らえばまた金的という恐怖に裏付けられてるし、ま、おとなしくしてるでしょ。


「お前はやっぱり凄い奴だな」


「なに今更言ってんのよ…」


 玄関に戻ってM14を地面に置き胡座を掻いた。


 取り敢えず、暇になる。


「カール、あんたはまたMP7?」


「いや、MP5だ。 お前が家でごろごろしてる間に買った」


「あんたは小っさい銃が好きね?」


「うるせぇな… 使いやすいんだよ、ってかお前のが長いんだよ!」


「ありゃ…」


「古いのが好きならM1カービンはどうだ?」


「古いのが好きなんじゃなくて理由があんの…」


 そうでなきゃ、わざわざ使い辛い銃なんざ持たないって。


「バディ組んでもうすぐ一年だ。 教えてくれたって良いじゃねぇか?」


 すげー気になる、と一息に言った。


「そういやあと二ヵ月で一年ね… よくこんなムサい野郎と一緒に居たな」


「おいディアナ、聞き捨てならんぞ。 さ、理由を言え!」


 半笑い顔で相棒は言う。


「…二ヶ月後ね。 いろいろトラウマがあって…」


「トラウマ? そりゃすまん…」


 彼はバツが悪そうに謝罪を呟く。


 今の相棒を紹介するのは、もうちょい後で良いよね?


 …ねぇ、アレク? ちょっと待って…




 夕暮れがようやく終わり、辺りは真っ暗になる。


 時計はもう夜九時を示していた。


 サイラスの側近の爺さんが差し入れてくれたピロシキをかじり、不味い水を飲み下す。


「ギルマーティンさん、生きてますか?」


「はい、問題ないです」


 一時間おきに叫んで確認しているが、実は必要ない。


 一時間くらい前に女が入ってきて、さっきからガタガタ聞こえるからだ。


「…いつまでヤってる気なんだか…」


「あたし達は黙ってるだけだよ…」


 玉を蹴られててよくできるなとは思うけど…


 まぁ、彼の旅行だから彼の好きなようにすればいい。


 ピロシキはこのホテルで調理された物らしく、まあまあ美味しかった。


 最近は家じゃスクランブルエッグ(それしか作れないから)、たまに外でハンバーガーを食うくらいだ。


 こういうのも良いね、マリーには悪いけど。


「ちょっと俺ションベン行ってくる…」


「うへぇ、汚ったね…」


「別に漏らしてねぇよ?」


 カールはいそいそと部屋を出て行き、静かにドアが閉まった。


 そろりとM14のハンドガードを掴み、手元に引き寄せる。


 何となく嫌な感じが、自分の頭に警鐘を鳴らした。


 言い訳するなら、突然要人の遊びが止んだ事しかないが。


「サイラスさん…」


 窓ガラスが割れる音が聞こえた。


 次いで女の悲鳴が部屋を劈き、格闘が始まる。


「…」


 問答無用でドアを蹴破り、裸の男とナイフを手にした刺客が、ベッドの上で組み合っているのを確認した。


 刺客の方は黒いフードにデカいマスクをしている。


 状況は奇襲を受けたサイラスが、喉元にナイフを向けられ腕力で支えていた。


「下がれクソッタレ!」


 ガバメントを引き抜き、同時に安全装置を外して発砲する。


 弾丸は刺客の頬を裂き、体を横に飛ばした。


「うぉぉ!」


「味方だ! 着替えとけエロオヤジ!」


 見苦しいのでシーツを投げ、破られた窓に這いずる暗殺者を蹴っ飛ばす。


「ロシア語か? アラビア語か? 英語か?」


 腹への蹴りに身を縮める、元刺客のフードをはぎ取ると、色白のロシア人顔が現れた。


 しかし右頬は千切れて血を噴き、顔を赤く染めている。


 ナイフを捨てさせ、部屋据え付けの電話を受付という名の司令室に繋いだ。


「ジョナサン、敵よ」





To Be Continued…

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