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Dead or Alive  作者: 煤路山楽天
サンクトペテルブルク
23/38

お好みの苦さで

2013年

6月19日

13:52

USA アイオワ州


「ディアナ! どこ行ってたんだ!? 俺は心配で心配で…」


「はいはい、ただいま」


 もう時計は午後を回っている。


「カールは?」


「そろそろ死んだんじゃないか?」


「あいつがいなけりゃ、あたし死んでるからね? ちょっとは慎んでやってよ」


「ぬ、そうか…」


 つっても止めないんだろうな、この親父…


 朝はベーグル食ったくらいなので、普通に腹が減ってきた。


「なんか食い物ない?」


「我が農場で収穫されたコーンはどうだ?」


「おー、くれ。 生でいいから」


 頼むだけ頼み、無駄にデカい階段を上がった二階のベッドルームに行く。


「カール生きてるー?」


 部屋はベッドが三つくらい並んでいて、さっきはその中の一番奥に担ぎ入れた。


「うー…」


「生きてるね。 そろそろ起きなよ」


「…」


 拳を軽く握り込み、枕に隠れていない頬を殴る。


「ヴェ! ちょ止め」


「さっさと起きなさい、でないともう一発…」


「死ぬ!」


 元気良く布団を弾き飛ばし、やっと起き上がった。


「俺もうここに来たくない…」


「なんと意気地のない… そこで諦める? ならそうするが良いさ、腰抜けめ…」


「なんだと?」


 さぁて、腹減った腹減った…


 傷口を庇いながら階段を降り、ジャックが居るであろうキッチンの隣りの冷蔵室に行く。


 何もかもデカいこの屋敷は、どうも田舎貴族だったジャックの先祖の、僅かばかりの見栄だったらしい。


「食い物頂戴」


「俺は畑見に行くから、帰ったらなんか作ってやる。 それまで食ってろ」


 皮を剥いてないコーンを二本渡されて、飯の後マリーを迎えに行こう、と言った。


「数週間は休み貰えるはずだから、マリーと遊ぼうかな…」


「むしろ休みが無いといったら俺が殴り込んでやる!」


「言っとくけどすぐ殺されるからね?」


 勝手口から出て行くジャックを見送り、何をしようかと考える。




「ディアナさん! 帰ってたの?」


「さんは要らないよ。 昨日帰ってきたの」


 走ってきたマリーを抱き締め、SUVに乗り込ませた。


「包帯巻いてるよ?」


「痛いから触んないで、怪我しちゃったから」


「出るぞ? ドア閉めろ」


「ん、お願い」


 各々の親に駆け寄ったり、バスに乗り込むガキどもを見ながらドアを閉める。


「…学校どうよ?」


「転校生って言って、みんな優しくしてくれるよ」


「なら良いや」


 もし、いじめるようなクソッタレがいたら、こっそりなぶり殺しに行こうと考えていた。


 もしかしたら、あたしもジャックみたいになんのかな…


 実際は数回しか会ってないのに、本当に親のような気分になっている。


「なんか食ったの?」


「ジャックおじさんの弁当食べたよ」


「残してないな?」


「うん!」


 あたしの人生でこんな温い一時が来るとはね…


 クッソ、トニーに銃預けてなけりゃ裏山いって猪撃ったのに…


「親父、なんか銃ある?」


「狩りでも行くのか? 足やってるんだし止めた方が…」


「この空気、あたしには耐えられないね… マリーあんたも来る?」


「? うん?」


 あー、あたし幸せにはなれないな。


 駄目だわ…


「ディアナ、したいようにしろ」


 気を察したのかジャックが優しく言った。


「ここは自由の国なんだぜ? 生きたいように生きるんだな」


 SUVがゆっくりと屋敷にの門に入る。




「さぁてマリー、銃を触った事は?」


「え、うん… あるけど…」


 そうだろう。


 あのハイジャックの犯人どもを殺したのは、マリーであるはずだ。


「その時は何を? 護身用の奴?」


 そんな筈はないと知りながら聞く。


 第一死体に残された弾丸が違うし、あんな所に護身用拳銃が転がっていたわけが無いのだ。


「そうじゃないと… 思う…」


「良し、じゃあ今回はあたしが昔撃ってた奴を使おう」


 ガレージに置かれた複数の銃から、AR15を拾って他のM700やれショットガンやれを片付ける。


「さぁて、行くよ」


 弾丸が貫通した左肩は痛いので、銃を右肩に担いだ。


「怪我してるのに大丈夫なの?」


「走らなければ問題無いよ。 多分…」


「病院いったの?」


「いや… ね? その…」


「駄目だよ!」


 このくらいならじっとしてれば治るし… って、じっとしてないな…


 子どもに叱られるなんて、ラリーとかにバレたらマズいだろうな。


 思いながら、まっすぐ見つめて来るマリーから顔を逸らし、手を引っ張って道を歩く。


「怪我が当たり前の仕事だからさぁ… いちいち面倒くさいんだよね」


「兵隊?」


 まぁ有りがちな間違いだ。


 トニーもよく分かってなかったし。


「いや、戦場の警備員とでも言うかな…」


「警備員さん?」


「そう。 ちょっと危ない警備員」


 数日前アジアの荒野を駆けたのを思い出し、奇妙な事にそこを恋しく思った。


 結局のところ、平和に暮らせない人間なのだろう。


「さぁて山登り山登り」


 屋敷の裏山もジャックの持ち物で、夏は猪や鹿が徘徊していてたまに狩るのだ。


「マリー、見てみ」


「なに?」


 AR15のマグに弾丸を詰めて、それを装填し安全装置を外す。


「こいつはM16の民間モデルで、セミオートになってる。 ドットサイトを使ってるから見やすいかな」


「?」


「やっぱりね」


 順を追う必要があるかな…


「M16はコルト社が… 難しい単語が増えるだけか…」


「うん?」


 どうしたものか…


 シダ植物を踏んづけて斜面を登り、マリーの手を引き上げた。


 そして前を見回すと、木立ちの中に茶色い鹿が現れる。


「手本を見せてあげる」


 発射できるか確認し、しゃがんでAR15のハンドガードとグリップを掴んだ。


 頬を付けて片目をつぶってアイアンサイトを覗き、鹿の角の根元を狙う。


「good night…」


 餞の言葉と共に引き金を引き切った。


 銃声が林間に響いて山々を渡り、鹿が倒れる。


「一丁上がり」


 立ち上がりながら、マリーの反応を伺ってみた。


「どう?」


「…死んじゃったの?」


「あんたは、あたしより優しいね」


 ジャックに連れられて初めて狩りを見た時は、可哀相などとはこれっぽっちも思わなかったが…


 斜面をずり落ちている鹿まで寄り、重力に引かれる胴体を軽く持ち上げマリーに見せる。


「脳味噌掻き回されて空気と混ざって死んでる。 あたしの仕事は人間をこのようにすること」



To Be Continued…

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