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Dead or Alive  作者: 煤路山楽天
サンクトペテルブルク
22/38

アフターサービス

2013年

6月18日

10:11

USA アイオワ州

 暗闇の中、ドアの鍵を開いて真っ暗な玄関に入った。


 家は掃除が行き届き、余計な物が余りにも無い。


「…」


 いつも通りだ。


 明朝になったらカールを呼んでジャックの家に行く必要がある。


「…痛てぇ」


 病院なんざ面倒くさいので逃げた。


 そういやズボンも迷彩服も買い直さないといけない。


 いや修復できるかな?


 冷蔵庫から生卵を出し、殻を割って口にぶち込んだ。


 ついでにパンも捩じ込んで夕食は終了する。


 帰りの飛行機で着ていた服のままベッドにダイブして眠りに着いた。




「うるせぇな…」


 インターホンが朝っぱらからがなり立て、嫌悪感を抱きながら起き上がった。


「誰?」


「誰? じゃねーよカールだ。 生きてるか?」


「あんたの声で死にそう…」


 ドアの鍵を開けてやり、ふらふらとイスに倒れる。


 数秒もせずクレイグ・ファーガソンを鍛えたような奴がリビングに現れた。


「大丈夫か?」


「足痛いし肩痛いし腕痛いし頭痛いし眠い」


「そうか… なんか飯買ってきてやろうか?」


「頼んだ…」


 カールが出て行く音が聞こえ、悪態を付きながらキッチンで顔を洗い、着替えを始める。


 出掛けの私服の入ったクローゼットまで歩くのさえ億劫だが、マリーの為だ…


「出る準備は出来たか?」


「んー」


 十分くらいでカールが帰って来たので、SUVに乗り込んだ。


「ほれハンバーガー」


「今はっきりした、あんたあたしを殺す気ね?」


「冗談だよ…」


 SUVのエンジンが唸り走り出す。


 ベーグルを頬張り、包帯を巻かれた腿の傷をさすった。


 痛い… 軍人だろうと民間人だろうと関係は無く、ただ痛い…


「十時か…」


「もっと寝たかったか?」


「あと十時間寝たい」


 ハンドルが左に切られて町並みの途絶えた郊外に向かう。


「夜になるじゃねーかよ!」


「傷を治すには寝ることだよカール君?」


 そういえばM14が壊れたんだった…


 ジャックに聞くか…




「おい大丈夫かディアナ!?」


「問題無い大丈夫」


 顔面真っ青でジャックが駆け寄ってきて、腿を触ろうとしてくるので左足で回し蹴りする。


「蹴ることは無いじゃないか…」


「うるさい変態親父」


 ジャックはまだ農作業していないのか、普段着のままだ。


 玄関からリビングに移動し、紅茶を啜る。


「さて… カール・バウアー!」


「はい!?」


「何故お前はディアナを守れなかった!?」


「ちょま」


 あたしがティーカップを傾ける最中、カールはフルボッコにされ半死半生で絨毯に転がった。


「ごめんねカール。 流石に可哀相に思えてきた」


「なら… 良いんだ… が…」


「ディアナ、悪い事は言わない。 男はもっとマシなのを探せ」


「いや、そういう関係じゃないから」


 カールが気絶したようだが、気にせず本題に水を向ける。


「マリーは?」


「学校だな。 お前が行った後に近くの学校にゴリ押しして受け入れさせた」


「あー… そりゃ良かった」


 まさか学業放棄はいけないからね…


 この親父が目付きを悪くして、「入学させてもらえますよね?」と押し掛けたのであろうと、鮮明に脳内再生された。


「じゃあお子さんの前では話せない、ちょっと危ない銃の話ね」


「何だ?」


 ガンケースからストックの吹っ飛んだM14を出し、テーブルに置く。


「どうすべきかな?」


「どうしてこうなった…」


 切れた先がささくれ立って、肩付けしたら刺さるだろう。


 気にしないけど。


「いっそ可変ストックか何かにしたらどうだ?」


「え…」


「お前な、理由はわかるし話もわかるが、ぶっちゃけお前の仕事にこの銃は合ってないぞ」


「…」


 最新の銃みたいにグリップもストックも変えてレイルを付けてみて、それがスプリングフィールドM14か?


「そうだ。 品番としては全く完全にM14だ」


「ま、それは追々ね…」


「いや今やっといた方が」


「黙れ」


「はい」


 ちょっと冷めた紅茶を改めて喉に流し、ぴくりとも動かないカールを見た。


「布団開いてるのある?」




 マリーが帰るのは午後になるだろうから、屋敷の外を散歩することにした。


 ジャックには断りを入れてないので今頃騒いでいるだろう。


「こっちだっけな」


 田舎の道をガキの頃の記憶だけで進む。


 道は舗装されているが、かなり古いのも変わっていない。


 道沿いは農場があったり林があったりと、自宅とはかけ離れた場所だ。


「あー痛てー」


 なんであんな無茶したかね?


 近所にガンショップがあったはずなので、それを探している。


 ジャックに連れられて何度も行っていたので店主は顔見知りだ。


 M14を扱っているかは知らないが、頼んで直してもらえるだろう。


 考えていたらiPhoneが鳴りだしジャックから着信ときたが、面倒いので拒否した。


 あの親父は子離れできないのか?


 車の少ない交差点を右に回り、寂れた町並みを歩く。


「おいディアナ! 里帰りか?」


「あっ、トニーさんちわっす」


 向こうから恰幅のいいおっさんが来て、声を掛けてきた。


「どうしてこんなクソ田舎に帰ってきたんだ?」


「ジャックに用事がありましてね。 ってかトニーさんにも用があるんすよ」


「ほうそうか? じゃ来いよ」


 トニーはガンショップの店主で、ジャックをボンクラと呼ぶ気の良いおっさんだ。


「軍の休暇か?」


「とっくに辞めましたよ。 今は… 会社勤めです」


「会社? お前に最も似合わない仕事だな!」


「はは… そうですね…」


 ガンショップは思ってたより近くにあり、店のテーブルにガンケースを置いて、それを開く。


「M14だな。 こりゃ骨董品か?」


「違う違う、実用品…」


「お前、軍は辞めたんじゃないのか?」


「それよりも、ストックですね?」


「派手に吹っ飛んでるな…」


 木製ストックの上半分は無くなり、下も三分の二は削られている。


 目を覆いたくなるような状態だ。


 よく見たらフォアグリップの先が切れているのにも気付く。


 やっちゃったなー…


「なんとかお願いできますかね?」


「構わんが… 金掛かるぞ? 遊びに使えるほど金あるのか?」


「はは…」


 週末にフィールド行って撃ってるわけじゃないんだな…


「沢山ありますよ。 収入はあるんで」


「仕事してねぇ奴には売らねぇよ!」


 トニーは笑い、M14をガンケースに戻してそれを肩に担いで、奥に持って行った。


 受け入れる証だろう。


「ボンクラに言っとけ! 娘の玩具くらい買ってやれってな!」


「わかりました。 でも一つ言わせてもらうと…」


「なんだ?」


 カウンターから出てきて、文句あるかというように笑う。


「仕事道具なんで、急ぎで頼みます」


 トニーは目をパチクリさせて首をかしげた。

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