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Dead or Alive  作者: 煤路山楽天
イラク ナジャフ南部
19/38

熱砂の戦場

2013年

6月16日

13:11

イラク 南部


 M14をオーバーホールする。


 古い構造の銃だからこの作業は本当に重要な事で、戦場でジャムなんざ起こしたら大惨事なのだ。


 レシーバーは特に念入りに清掃し、銃身も煤を取り去らないといけない。


 だからこの作業は、軍属の頃からずっとやってて慣れているが、時間が掛かる。


「もっとマシな銃使えよ」


「こいつとは色々あんのよ。 手放せないね」


「俺は親切で言ってるんだぜ」


 HKの手先に言われたかないね。


「せめて改造でもしたらどうだ?」


「ピストルグリップとか可変ストックとか?」


「そうそう」


「それはM14じゃないんだなぁ…」


「…」


「こいつ使ってるのは理由があるのよ」


「なかなか興味があるぞ」


「あんたにゃ教えないけどね」


 一通りの清掃を終え組み立てを始める。


 こうなれば、あたしにとってはもはや目を瞑ってもできる作業だ。


 自信はあってもそんなことしないけど。


「おい、山から誰か来るぞ」


 カールが小さく声を上げ、あたしの肩を叩く。


「えぇ?」


 部屋はジョナサンもゴリラも出払っていて、あたし達しかいなかった。


「クリスじゃない? 無人島の時の」


「そういやそうだな」


 彼は暴風のように小屋に入ってきて、素早くドアを閉じる。


「ジョナサンは!?」


「ゴリラとデート中」


「呼んでくれ! 敵だ!」


 衛星電話を掴み、ジョナサンに通話を図った。


「こちらジョナサン、何かあったか」


 電話をクリスに投げてM14をさっさと組み上げ、マグを装填する。


「こちらクリス! ノヴェンバーポイントでゲリラと遭遇した!」


「今そこにいるのか?」


「いや、私は拠点に戻っているが… ルベルが踏みとどまっている…」


「…敵の数は?」


「百人以上は居た…」


 叫んでいた声が弱く小さくなり、顔を伏せる。


「ルベルの生存は絶望的だな。 そこには誰かいるか?」


「ああ… ディアナさんとカールさんがいる」


「さん付けは非常によろしいね。 カールは呼び捨てで良いよ」


「おい!」


 予備のマグとペットボトルを腰のポーチに突っ込み、M14のベルトを肩に掛けた。


「いつでも出れるから」


「可能な限り数を… なんだ?」


 三人とも動きが止まり、ジョナサンの二の句を待つ。


「…わかった。 ディアナとカールは西へ行け。 リュウとジャクソンが同行する」


「え?」


「ゲリラの集団が地雷原に引っ掛かったようだ。 敵の多方面同時攻撃だな」


「挟み撃ちねぇ…」


「本社の部隊が到着すれば何とかなる。 既に数人が東で苦戦している、急げ」




 砂塵の向こうに走り回る人々の姿が見えた。


「敵かな?」


「だろうな」


 大きな爆音が繰り返し響き、その度に数人が倒れる。


「引っ掛かったマヌケが敵ね」


「言い方な。 そういう事だろう」


「レイモンドとビリー君は生きてるかな?」


 銃撃で砂埃が立ち視界が悪いせいで、駆け回る連中の顔は判別できない。


「リュウを待つ? いややっぱ急ぐか」


「大丈夫か?」


 カールが不安そうに言うが、二対多数はかなり危ういのだ、ちょっとでも早く参戦してやらないと。


 ベルトでぶら下がったM14のグリップを握り、セイフティを外した。


「ジョナサン。 戦闘開始するよ」


「了解した。 十分で本社の部隊が来る。 それまでに二人を連れて小屋に戻れ」


「エスコートね」


「地雷原を忘れるな」


「うわぁ、怖い怖い」


 自分の仕掛けた罠に引っ掛かるなんて最悪…


 地面に転がって肩付け照準し、手頃な敵を探す。


 目測では前線まで100m、立ち止まってSVDを構えたアラヴ人を狙い射撃した。


 弾丸は標的の右腕に命中し、血を迸らせて熱砂の上に転がる。


「バレたかな。 行こう」


「バレてないと思うが」


 狙撃された、息絶え絶えの男に駆け寄ろうとする者はおらず、こっちに振り返ってガンガン撃ち始めた奴もいない。


 だが念を入れて悪い事は無いだろう。



「ディアナ、状況はどうだ?」


「ようこそリュウ、絶好調よ」


 隠れていた岩陰にリュウとジャクソンが姿を現わし、しゃがんだリュウがスコーピオンを窪みに置く。


「お前の状況じゃない。 戦闘の状況だ」


「冷たいなぁ。 レディの冗談くらい聞かないと結婚できないよ?」


「お前は仕事ができないんじゃないか?」


 岩から顔を出し、M14を構えて最初に見えた敵を撃った。


「あたしはこっちでね」


「とんだレディだな」


 なんだとクソッタレのイエローが…


「口の達者な猿だな… ああ?」


「体ばかり馬鹿デカいお前らより頭が回るんでね」


「まあまあ、止したまえよ二人とも!」


「黙れカール」


「お前に仲裁など求めてないぞ」


「お前ら酷くね?」


 これは挨拶みたいなもんでしょ。


「さぁて本題だね。 レイモンド君とビリー君が地雷原で頑張ってますね」


「敵はどんなものか?」


「お前ら凄いな…」


「黙ってカール… 一個小隊くらいじゃない?」


「なら急ぐべきだな。 ディアナ、お前はここで狙撃か?」


「ふざけんなよ、あたしはスナイプなんて嫌だからね」


 マグを外してポーチに突っ込み、新しい物を装填する。


 ポーチからナイフを出し、銃身の下に括り付けた。


「あたしはこれよ」


「大したタマだな…」




「マグチェンジ! cover me!」


「イェア! ゲッダンゲッダン!」


 ビリーがM27 LARをフルオート射撃し、二、三人が血飛沫を上げて倒れる。


 それを横目に見つつMASADAのマグを棄て新しいマグを入れた。


 私物だが緊急事態ゆえ仕方ない。


「下がれ! 小屋まで撤退だぞ!」


「よっしゃ!」


 連射しながら後退りし、レイモンドは肩を持って誘導する。


「弾切れ!」


「イェア!」


 レイモンドがビリーと交代し、MASADAの銃身が火を吹いた。


 太陽が照り付ける砂の上に、血と苦しむゲリラが転がる。


「クソ! 敵が多いぞ!」


 銃弾の雨が右に左に降り注ぎ、駆け回るゲリラの姿が煙に霞んだ。


 どんだけ殺っても減りやしねぇ…


 ハンドガードを握る左手に痛みを感じ、目を向けると弾丸が肉を切り裂き、血を滴らせている。


「クソッタレ!」


「下がってろ!」


 ビリーがリロードを終え、射撃を再開した。


「腕がやられた! 俺の腕が!!」


「先に戻って!?」


 M27の銃声が止まり、ビリーが血を噴水のように流して倒れる。


「ビリー! おい! 起きないと死ぬぞ!」


 レイモンドの叫びも死体の永遠の無言が飲み込んだ。


 彼はなす術もなく、背を向けて走る。


「なんてこった! クソッタレ!」


「そんなあんたに助けが参ったよ!」


 如何にもな絶望の表情をしたレイモンドの前に立ち塞がり、彼を追うゲリラをM14の銃撃が叩く。


「ディアナ、お前はレイモンドの手当てだ。 ジャクソン、カール行くぞ」


「なんで命令されてんだろう、俺」


「リュウ、あんたとは後で命令権についての話し合いが必要ね」


 三人が、追いすがるゲリラに向けて一斉に火蓋を切った。

To Be Continued…

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