汚れ仕事
2013年
6月15日
13:20
イラク 南部
「テロリストの脅威が迫っている。 そうですね?」
「ああ! 操業を停止しないとなんとやら。 と事務所にな!」
マクナホンはポケットから手紙を出し、テーブルに叩き付ける。
「名乗ってはいないが、アメリカからここまで追っかけてきた競合社じゃないのは確かだ!」
ストレスになっているらしく、明るい口調から怒ったような言い方に変わった。
「テロリストって連中はしつこいからね」
「そこだディアナ。 我々が二、三回敵を退けても、奴等は何度だってくる」
「完膚無きまでに叩き潰す?」
「それはないだろ…」
「何よカール、ちょっとした冗談じゃない」
「ちっとも面白くないぞ」
クソッタレの丸坊主巨人め… 話に割り込むな…
「さて、後を考えても仕方ない。 今を見よう」
「東は施設のそばに監視塔を建てれば良いんじゃない?」
「良いねお嬢さん! 資材を搬入しよう!」
「あたしはディアナです」
「これは失礼ディアナさん!」
マクナホンは上機嫌に笑うが、ジョナサンが遮った。
「それまでに敵が来たなら、どうするか」
「山でアンブッシュすれば良いんじゃないか?」
ロビンが挙手して提言した。
「基本的にはそうなるな。 そこは問題無しと見ていいだろう」
本社の奴が窓から外を見、ガリルのセイフティを外すのが見えた。
「西に二人、砂塵で視認が難しい」
「ジャクソンとリュウだろう。 彼らの意見も聞こう」
気になって覗いてみると、帽子を深く被った低身長の男と外燈を羽織った男が来ていた。
「ジャクソン、リュウ、今戻った」
中国人が割と高い声で言った。
「ご苦労。 ちょっとこっち来い」
「なんだ?」
リュウはこびりついた砂を叩き落としながら、テーブルに近付く。
「もし、敵が来たならどうするか」
「罠を張ればいい」
「ほう! なるほど!」
素頓狂な叫びをリュウは嫌がるように、老人から二、三歩離れた。
「地雷やIEDならそこらで調達できる」
IEDか…
軍隊時代の嫌な記憶を封じて、リュウの提案をじっと聞く。
「山か、そっちに破壊力のあるIEDだな。 東はある区域を決めて地雷原を作るべきだ」
「さっすが工兵様は言う事が違うね!」
「へっ…」
嫌味ったらしく言ったのに気付いたらしい。
「地雷原の隙間を守るってことね」
「そうだ。 女にゃできない仕事か?」
「黄色には難しいだろうね」
おいおい、とカールが呟いた。
「北、南も山岳だ。 少数を伏せて罠を使うべきだ」
リュウはジョナサンに向き直り、もちろん、反対がありなら別だが。 と言う。
「ジャクソン、何かあるか?」
「賛成です。 西の防衛に多めにして、東の丘陵は薄くしてもいいでしょう」
「ロビン、カール、ディアナ。 お前達は?」
「全く問題無いな」
「俺も」
そんな何も考えてませんみたいな答えしちゃってさぁ…
「どうだと思う?」
「最高だろ?」
馬鹿にするようなニヤついた顔で問われた。
最高に自信を持った言い方だ。
「最高だね。 イエロー」
にやにやしてるリュウに握手を求めて右手を差し出す。
「だろ」
骨張った手があたしの手を掴み、互い強く握った。
「お前らはなんだ?」
「うるさい」
パンパンに物が詰まった袋を載せた軽トラが、プレハブの隣りにブレーキを掛けて停まる。
「うっわー、実際見てみると嫌なもんだね」
「確かにそうだな…」
軽トラからサムが降りてきて、その袋を地面に降ろし始めた。
「オラ、お前らも手伝え。 特にカール」
「え? 何で俺?」
「何となく」
「カール頑張れー」
「棒読みやめろ!」
袋の口を開けると、恐らく一般人なら一生見ないであろう四角い箱や、円い箱がある。
「何個あんの?」
「一つの袋に百個くらいだな。 埋める奴多めで、クレイモアが少なめだ」
砂汚れた跳躍地雷を一つ出して、金属の外殻を撫でた。
「ブラックマーケットってのはなんでも売ってるね」
「奴等の商売の特徴だからな」
袋を引き摺り下ろし、プレハブまでそれを引っ張る。
「敷設した量、位置はしっかりと記録しないといけない。 バディで行動して片方が敷設、片方が記録だ」
ジョナサンが窓から現れて指示し、そして窓を閉じた。
「あんたはやらないんかい…」
「司令官様は忙しいんだろ」
カールが明らかに重そう袋を背負い、西に歩き出す。
「サムー、ノートと鉛筆頂戴」
「あいよ行ってらー」
その二つをポーチに突っ込み、M14を引っ提げてカールの後を追う。
「待ちなさーい」
「俺銃持ってねぇんだけど」
「仕方ない仕方ない」
ネックウォーマーを被り、それで鼻まで隠した。
風強いし、砂埃が…
「しっかし地雷とは、本格的に軍隊みてぇだな」
「そういや昔の部下に足吹っ飛ばされた奴いたわ」
「ってかお前、どこ出身だっけ?」
「アメリカ海兵隊、フォースリーコン出身! 最終階級は准尉であります! サー!」
「俺はサーじゃなくてサージだぜ?」
そんな事を言ってる内に地雷原となるべき地点に着く。
「じゃ適当に埋めて、埋めた奴を言って」
「あいよ。 まずはクレイモアだ」
To Be Continued…




