表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Dead or Alive  作者: 煤路山楽天
バミューダ近海
12/38

死の島

2013年

6月13日

09:31

公海 無人島


「ジジイの話じゃ、ファッキンジャップどもはこんな感じのとこに居たらしいな」


 暗い渓谷状の洞窟で、島全体の地下に広がっているのだろう。


「ジャップ? 日本陸軍か」


 カールがMP7を構えて周囲を見渡す。


「そうだよ。 ジジイは元海兵隊で、奴等に右足を持ってかれたらしいよ」


「おーう、壮絶」


 全員が揃うと、持参した懐中電灯をもって前を照らし、それが道であると確認し進んだ。


 岩盤の間から海水が漏れているらしく、地面が濡れている。


「なーんかジメジメしてる…」


「おい、これ足跡じゃないか?」


「ああ?」


 サムの目の前の地面に不自然な土が付いていて、それがほぼ等間隔に鍾乳洞を進んでいた。


「そっちに行くよ。 チクショー生き残りがいたか…」


 道を折れて足跡を追い、それが新しくなって行く。


 まだ人がいるのは間違ない。


「しっかし綺麗な場所ね」


 進んでいる鍾乳洞は、水が滴って煌めいている。


 こんなのが公海なんかにあるとはね。


「滑りやすいけどな」


「カール、ロマンもクソッタレも無いことは言わないの」


「クソッタレって平気でいう女に言われたくねぇ」


 しばらく鍾乳洞の道を行くと、向こうから光が見えた。


「人がいるぞ! 構えて!」


 狭い道に六人が展開し、こちらに近付く光の元を捉える。


「おぉ! ついに助けが来たのか!」


「民間人か…」


 壮年の男性と、その妻らしき女性が心許無げに懐中電灯にしがみついていた。


「助けて下さい! ハイジャック犯から逃げているんです!」


 まるで今にもそいつらが現れるかも、といった感じで助けを求める。


「ジョナサン…」


「申し訳ないが、この島から我々以外が出てはならんのだ」


 なんて無情だ…


「ハイジャック犯は?」


「不時着する時に一人死にました! でも他はまだいます!」


 溜め息をひとつ吐き、サインを出す。


 撃てと。


「そんなことはできない!」


 レイモンドの拒否が聞こえたが、訝しむ夫婦に降り注いだ鉄の嵐にかき消された。




「なんで殺す必要が!? 聞いてるなジョナサン!?」


「そう依頼されたからだ。 イギリス当局による隠蔽が行われるから社のイメージにも関わらない」


「だからって殺すのか? お前は人間か!?」


「俺とてやりたくない! だが本社からの命令だ!」


 レイモンドが荒々しく無線を切り、几帳面にポーチに仕舞う。


「神よ、こんな事が許されていいのか?」


「許されてるからまだ天罰を受けてないんだろうね。 先に行くよ」


「何も知らなかったんだろ! あの人達は! また市民を殺すのか!」


「あんたとて関与してんだからね。 あの二人が死んだからお前は飯が食える」


 釈然としていないが、付いてくるみたいなので先に進む。


 あいつは新兵みたいな事を言うな…


 で、何故かカールが先頭で、あたしが一番後ろになっていた。


「おかしくない?」


「お前足遅いんだもん」


「あんたが早いんだよ。 ちょっとは女の子を気遣いなさい…」


 先頭に駆けていって、サムを最後尾にと指示する。


「なんで俺じゃねえんだ?」


「あんた馬鹿だしサムより弱いじゃん」


「それは言い過ぎだ! 馬鹿じゃないぞ俺は!」


「残念、あんたの姉ちゃん公認の馬鹿です」


「ぬぐっ… いや公認の馬鹿って何だよ!」


「ふむ、なかなかのツッコミだ」


 特に回りに気配も無いので、のんびり雑談する。


「ルベルー、あんたフランスでしょ?」


「そうです。 空挺部隊出身で」


「空挺ねぇ。 奴等は飛び降りる事と撃つ事しかわからないからな」


「偏見酷いっすよ」


「そうだよ」


「カールあんた便乗しなくていいから」




 十分くらい歩いていたが、死体の他にはあまり何もなかった。


 それでもひとつひとつ確認し、ジョナサンの話だと二十個の死体(殺したのも含む)を見つけたらしい。


「でもハイジャック犯どもはいないんでしょ?」


「そうだ。旅客機の中の水死体に一つ確認したが、他は島内で死んでいるか生きているかだ」


「民間人を殺すのは抵抗を感じるけど、ハイジャック犯は全く問題ないね」


 普通の少女だった頃、ハイジャックに遭った事があった。


 奴等はあたしの親に手を掛け、そして… あたしに殺された。


「おい、出口だ!」


「ん?」


 ぼんやりしてる間に洞窟の末端に着いていた。


「ジョナサン、洞窟を出るよ」


「了解した。 島の反対に出たようだ」




 光の中に入ると、再びロケットの破片、機関銃弾の散らかる死の光景がある。


「ジョナサン、ハイジャック犯四人の死体だ」


 覚えさせられたガタイの良いスラヴ人の人相をした、血塗れの死体が転がっていた。


「了解した。 写真を撮って送れ」


「わかったよ」


 軍用のデジカメをポーチから出し、死体に向けて構えシャッターを切る。


「ディアナさん! 草むらに何かいます!」


「なに?」


 カメラをサムに投げM14を構え直し、ルベルの元に飛んで行く。


「子どもですかね?」


 胸を締め付けられたような、大変な息苦しさを感じた。


「どうしたディアナ?」


 喘ぎ、見る。


 その少女は異様に見覚えがあった。


 青い目、ブロンドの髪、そして、それをかき消すような血。


 十二歳にして親を殺され、そして復讐した者。


 草むらにうずくまって、こっちを見下ろすように見上げる少女がいた。


 見覚えも何も、まるで自分だ。




「みんなマイク切って」


「は?」


 この子がこの島にいなかったことにすれば、死ぬ必要は無い。


 この子は、死ぬべきじゃない。


「マイクを切ったらジョナサンと連絡できないぞ?」


 レイモンドが反対する。


「いいから切れ。 後から繋げば良い」


「どうした? 何か有ったのか?」


「ジョナサン、問題発生した。 すぐに通信を切る」


「なんだと? 状況知らせろ! ディア」


「みんな切って早く!」


 怒りの表情をしてみせて、命令する。


「わ、わかった」


 間も無く連絡が切れて、ジョナサンの声が聞こえなくなった。


「いい? この子は今回の事件について無関係。 だからこの島からあたしと一緒に帰る」


「なんだと?」


 サムが叫ぶ。


「どういうことだ?」


「あー良い子だ… 名前は?」


 血に汚れた少女の頬を撫で、その目を見つめて問う。


「私はマリア!」


 高い声で答えた。


「あんたマリー? あたしはディアナ、母さんは?」


「…」


「…何でもない」


 小さい手を握り、おんぶしてやる。


「後はゴリラとかに任せとけば良い。 帰るよ」


 唖然と棒立ちしている同僚達を促して、来た道を引き返す。


 ヘリのいない空はマリーの目のように青かった。

To Be Continued…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ