カウントしろ審判
2013年
6月12日
10:05
USA アイオワ州
「さて、諸君。 このオファーがまだ非公式に捜査している、イギリス当局からのものであることを考えてくれ」
相変わらずエアコンが無いブリーフィングルームで、ジョナサンはかく語る。
「イギリス当局は、ロシア語を操るスラヴ人によるハイジャック事件について、情報を公開したくない。 管制塔は旅客機を追跡し、大西洋上の無人島に不時着したことを突き止めた」
モニターに中部大西洋の公海、名前も無いであろう無人島の衛星写真が映った。
「イギリスはロシアと秘密に会談し、事を内々で処理することを取り決めた。 しかしこの処理にイギリスの警察及び軍が動けば、事が露見する恐れがあるとして、処理を外注することに決定」
「さすがイギリス人はあくどいねぇ」
「言ってやんなよ…」
後ろの席で話をのんびり聴き、ジャクソンにちょっかいをする。
「その注文を口が固いことで有名らしい我々にしてきた。 事が闇に揉み消される以上、この無人島に生存者が居てはならないことになる」
「それは乗客達も殺せということですか?」
話に横槍が入った。
「そうだよレイモンド! 何もかも殺せということだ!」
ラリーが楽しそうに、レイモンドに絡む。
「ラリー! よくもそんなことが」
「レイモンドお前はそんなに正義漢アピールしてどうしたいんだ?」
長身のレイモンド、小柄のラリー、双方席を立ち上がって互いのリーチのギリギリまで近付いた。
「お前はキレイ事が大好きだが、俺はキレイ事が大好きな奴が大好きだぜ。 見てるとイラつくしそれを解消させてくれるからな!」
ラリーが進路上の同僚を無視し、それを弾きながら突進する。
それを予測できなかったレイモンドは、為す術もなく腹へのパンチを受けた。
「ふざけるなよラリー!」
ニヤついているラリーの頬にレイモンドの殴りが突き刺さり、よろける。
衝撃でバランスを崩しかけたラリーだが、立て直して右手を振りかぶった。
しかしレイモンドはすかさずそれを受け止め、捻り背負い投げる。
やれやれと野次馬が騒ぐ声が部屋を満たした。
「良いねぇ! こんくらい歯ごたえがないとな!」
ラリーが立ち上がりながら喚き、首をゴキゴキ鳴らす。
「お前らうるせぇ」
ジョナサンが二人の間に突然現れ、それぞれの後頭部を掴み地面に叩き付けた。
地震と見紛う衝撃が発生し、一瞬の事に対応できず、二人は虚しく失神する。
「話を戻すぞ。 全員前向いて座れ」
プロレスリングを作るように輪になっていた観衆は、そそくさと自分の席に戻っていった。
「恐い…」
「カール、あんたは一度も盾突くこと無いだろうから大丈夫よ」
「さて、レイモンドの言う通りこの島、仮称として「メーデー島」としよう」
「メーデー島? 非常事態島ってこと?」
「そうだな…」
なかなかイカれてるね。
「この「メーデー島」にいる人間は一人残らず殺害、つまり真相を揉み消す必要がある」
島の写真が消え、ハイジャックされた旅客機のデータが表示される。
「乗客は49人、乗員は20人だった。 この内ハイジャック犯を除くと64人になる」
小学生でも分かる内容だが、さっきのが恐いのか誰も突っ込まない。
「この作戦への荷担は社外には絶対漏れない。 諸君次第だが、君達にも良心はあるだろう。 この作戦への参加の拒否権を、君達は持っている」
誰も声を上げず、誰も席を立とうとはしなかった。
「良心ってなんだっけ?」
いやー本当になんだっけ?
「説明を続行する」
「クレイジーな連中だよ…」
微動だにせず、カールがジャクソンに囁いた。
To Be Continued…




