第百四十四話
<大工のあんちゃん最終章 そして、それから。。。 完結編!!>
あんちゃんが葬られている洞窟に、ようやく辿り着いたマグダラのマリヤ。扉が開いてるのに気が付き、早速中を確認しました。
「えええ?!うそ?!」
亜麻布で全身ミイラ状態のあんちゃんの遺体が、忽然と消えていたのです。マグダラのマリヤは辺りを探しましたが、何処にも遺体はありませんでした。すると、自分を呼ぶ声が聞こえました。
「マリヤ、マリヤよ」
「?!」
咄嗟に蹴りのスタイルで身構えたマグダラのマリヤですが、なんと!そこには神々しいローブを着たあんちゃん(本当はユダ)が立っていました。
「あああ!どうして?!」
ビックリこきまろのマグダラのマリヤ。しかし、神々しいあんちゃん(実はユダ)は、両手の掌にある傷口を見せながら、落ち着いて語りかけます。
「弟子のみんなを集めてくれ、伝えたい事があるんだ」
そして神々しいあんちゃん(実際にはユダ)は、そういうと姿を晦ましました。マグダラのマリヤは目の前で起きてる事が信じられませんでした。
一週間後……。
弟子達みんなは、あんちゃんのお気に入りだったオリーブ園に集まっています。至る所で、神々しいあんちゃん(つまりユダ)目撃情報が、各地で報告されています。
「俺も見たよ!あの神々しい元大工の姿をよ!」
「ああ、先生はまるでガリフェスで全ての泥をよけたときのように、神々しかったよ!」
しかし、疑い深いトマスだけは、そんな目撃情報を一蹴しました。
「そんなのは嘘っぱちだ!大方、元ヤンに便乗した、ユダのクソ野郎が演ってるに違いねー!」
確かにトマスの言う通りです。でも、実際に神々しいあんちゃん(だからユダ)を見たマグダラのマリヤがトマスに話しかけます。
「あたしも本当に目を疑ったの。でも、磔にされた時にできた傷があったのよ」
「それだって、誰かが細工すれば」
「これでもか?トマス」
なんと!神々しいあんちゃん(ユダでやんす)が突然登場し、両手両足の傷口をトマスに見せて、立っていたのです。弟子達はビビって跪きますが、疑い深いトマスだけは悪態をついてます。
「おい!元ヤンが死んだ今、この際だからハッキリしておくぜ!どうせお前はユダなんだろ?!」
すると神々しいあんちゃん(ユダだよ、本当は)は、トマスの右人差し指を握り、自分の左腹部にある傷口へ差し込ませました。
「?!」
それはロンギヌスの槍でできた、紛れもない傷口。トマスは驚きを隠せませんでした!そして神々しいあんちゃん(ユダが演じてます)は、トマスを外に連れ出しました。
「やっぱり元ヤン、お前は死んでから復活したのかよ?!」
「いいや、トマス。お前の言う通りだ」
「?!」
その声はまさしく、ユダでした。
「やっぱり!ユダか!てんめーー!」
「最後まで話を聞け、トマス。ブラザーを裏切った俺は、生きる事も死ぬ事も許さず、永遠にこの姿で彷徨うよう、冥府の神ハデスに呪いを掛けられたんだ」
「何だって?!」
「だから俺は覚悟を決めたんだ。俺は生涯ブラザーの格好で、救いを求める人々の為に生きていく事を」
「ユダ。。。」
「これが俺の本当の贖罪だ」
ユダから事実を聞かされたトマスは、何も答えられませんでした。確かにユダは許されない罪人ですが、そのユダが改悛して、生涯永遠に人のために生きていく覚悟をしたのです。磔刑されているあんちゃんから逃げたトマスにも、ユダを責める資格は無かったのです。
「トマス、ブラザーの意志は何だった?」
「元ヤンの意志?」
「青臭ぇ『愛と希望』さ。でも、この残酷な現実世界には、やっぱり必要なんだ。そして、如何なる状況下においても、そしてどんな立場の奴に対しても、ブラザーは寛大な心で接し、愛と希望の灯火を決して絶やさない事を教えてくれた」
「そうだな、ユダ。元ヤンはそう奴だった」
「今度はよ、俺達がブラザーの熱いロックなメッセージを、世界中に届ける番じゃねーか?」
そこには、卑劣でずる賢くて、嫉妬心に駆られていたユダはいません。例え冥福の神に呪われ、永遠に彷徨い続けようとも、あんちゃんのロック魂を胸に抱いた、熱き血潮の男が立っているのです。
「お前も協力してくれるだろう?トマス」
「ああ、当然じゃねぇか!お前の嘘に付き合ってやるぜ!」
「"奇跡"と呼べ!」
「ケッ、ハデスに呪いを掛けられたくせに!」
「それじゃ、トマス。俺はもう行くぜ」
「おい、もう行っちまうのかよ?」
「俺の魂は"呪い"が掛かってるからな」
すると神々しい光を放ちながら、あんちゃんの姿をしたユダは消えてしまいました。こうして疑い深いトマスは、誰にも知られてはいけない秘密を抱えたまま、弟子達みんながいる場所へ戻ります。
「トマス、どうだった?」
「ああ。先生は本物だったよ」
そこには、あんちゃんを元ヤンと呼ぶトマスはもういません。
「トマス、元大工、いや先生は何処に行ったんだ?」
するとトマスは晴れ渡る青空を見上げ、微笑みます。
「ペテロ。分かるだろう?この世に愛と奇跡と救いを求める人々がいる限り、その魂は永遠に彷徨い続けるのさ」
「そうだな、トマス。俺達は磔刑されていた先生から、情けないほど逃げた身だ。だから今度は追いかける番なのかもしれない」
こうして、あんちゃんの熱いロック魂を伝えるべく、12人の使徒とマグダラのマリヤ、サロメちゃんの長い殉教の旅が始まったのでした。
続く




