第百四十話
<大工のあんちゃん最終章 成就!ゴルゴタ丘での最期のライブ編!!>
するとあんちゃんが微笑みながら、ロンギヌスにあることを頼みます。
「ロンギヌスの旦那。その槍で思いっきり俺をぶっ刺してくれ!」
「?!」
流石に下戸なロンギヌスでも、突拍子もないあんちゃんの提案に酔いが覚めてしまいました。
「な、何言ってるんだ?ナザレの大工。お前は自ら命を絶とうとしているんだぞ!」
「分かってる。だけどよ、ローマ式の磔刑は三日三晩苦しまなければいけないし、それにカラスの餌になるのはゴメンだぜ。それに」
「それに?」
「それに始まりがあれば、終わりは必ずやって来る。だから、最後は俺なりの決着で、終わらせたいんだ」
するとあんちゃんは、自分のマリア母ちゃんに目を向けました。死を覚悟した息子の姿に、マリア母ちゃんも涙が滝のように溢れてきました。
「ああ、私の可愛い坊や。なんだってそんな覚悟をしたんだい」
「へへへ、マリア母ちゃん。俺の仲間を宜しく。こんな親不孝な俺だったけど、産んでくれた事には感謝しているぜ」
するとマリア母ちゃんは、あんちゃんにこんな言葉を返します。
「女性はね、子供の為にお腹を痛めて初めて親になり、息子の為に心を痛めて母親になるのよ」
「母ちゃん」
「先に逝って待ってるんだよ。あたし達もそのうち追いかけるからさ!」
マリア母ちゃんは、最大級の笑顔をあんちゃんに見せて、そして磔にされたあんちゃんの足元に口付けをします。続いてマグダラのマリヤも。
「きゃっははは!マリヤ、お前の口付けくすぐったいって」
「ちょ、ちょっと!そんな言い方しなくたっていいじゃない!」
「わりー、わりー」
それでもマグダラのマリヤは、涙が止まりません。あんちゃんに二度も救われた時が忘れられないからです。
「あ、あたし!」
「うん?どうした」
「ううん。何でもない」
「そっか」
マグダラのマリヤは、喉元まで込み上げる自分の思いを、なかなか口にする事ができなかったのです。そんなマリヤを察したマリア母ちゃんは、後ろから優しく彼女の肩に手を添えました。
「見届けましょう、この人の最後を」
あんちゃんは優しい眼差しで自分の母親に感謝し、そしてマグダラのマリヤへ、何も語らず自分の想いを告げたのです。その優しい想いに、マグダラのマリヤは涙を流しながら、何度も何度もあんちゃんの足元に口付けをしました。
「さぁ、ロンギヌスの旦那。こんな祭りは終わりにしようぜ」
「ナザレの大工。。。」
「お前の槍で、やっちまってくれ!」
槍を両手で握りしめるロンギヌスは、何度も深呼吸しながら、あんちゃんを見つめました。その眼差しは真剣そのもので、あの洗礼者ヨハネであるアニキが、自ら斬首した時のような迫力でした。そしてロンギヌスは遂に槍を突き上げたのです!
「うがああああああああああ!」
あんちゃんの断絶魔が辺りを轟き、そしてそのシャウトがそこにいた全ての人間の心を揺さぶったのです。槍で突かれたあんちゃんは、一連を物陰で隠れて見ていたユダも、その壮絶なあんちゃんの死に様に、心が揺さぶられたのでした。
「ブ、ブラザー。あんたって人は、俺の為に!」
リベカと一緒にいたバラバも、遠くから聞こえてくるあんちゃんのシャウトを耳にします。
「あんちゃんさん、オラの為に、ありがとう。。。」
ロンギヌスは左下腹部を突き刺した槍を、ゆっくりと抜きました。するとその傷口から、雨のように大量の血が噴き出してきました。ロンギヌスは自分の顔に、返り血をいっぱい浴びます。
「これで、いいんだな?ナザレの大工よ」
するとあんちゃんはコクリと頷き、そして最後の力を振り絞って、あんちゃんは天を見上げます。雲一つない、爽快な青空が広がっています。
「ああ、成就したん。。。だ」
トクン、トクン、トクン。
そして、あんちゃんは目を見開いたまま、自分の心臓の鼓動がゆっくりと止まっていくのを感じます。
トクン、トクン......。
やがて糸を切られたマリオネットのように、あんちゃんは事切れました。
「やったザマス!遂にナザレの大工が死んだザマス!」
静寂さを破壊する第一声を発したのは、サドカイ派の大司祭カヤパでした。しかし、それは多くの人の反感を買う事になります。
「どうしたザマスか?!お前達だって、さっきまでナザレの大工を磔刑しろ!と吠えてたじゃないザマスか!」
「……」
「なんなんザマスか?!生きてる間は罵倒しても、死んだら敬えっていうザマスか?!」
みんなあんちゃんが死んでから、死者を冒涜したくなかったのです。しかし、カヤパだけは自分の気持ちを止める事はできません。
「よいザマスか?!このナザレの大工が死んでくれたから、ミー達の国はローマ帝国から罰を下されることもなく、今まで通りの生活ができるザマス!この大工がミー達を危険に晒したのは、死んでも曲げられない事実ザマス!」
カヤパは地面から素早く石を取り、十字架で磔にされたあんちゃんへ石を投げつけようとしました。
「な?!あれは一体、何ザマスか?!!」
続く




