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北へ

 幼い兄弟が

 互いの肩を抱いて震えている。

 二人を背に庇い

 姫と魔女が厳しく正面を見据えた。

 無数の魔物が

 耳障りな金切り声を上げる。

 紅炎をまとう剣を手に

 王子は魔物の群れに斬り込んだ。


 一刀に切り捨てた魔物が炎に包まれ

 灰となって散る。

 右から伸びる魔物の爪が腕をかすめ、

 浅い裂傷を作った。

 王子の横薙ぎの斬撃が三体の魔物を屠る。

 鋭く尖った牙をむき出しにした魔物が迫り、

 王子の左腕を穿とうとした瞬間、

 魔物は瞬時に石となり

 砕け散った。

 杖を構えた魔女を

 魔物が一斉に振り返る。

 大きく口を開け

 魔物が吐き出した紫炎を

 姫の放つ蒼い光が弾いた。


 限りなく湧くかのような

 魔物の群れを滅ぼし、

 王子は剣を納める。

 姫は悼むように祈り、

 魔女は幼い兄弟に声を掛けた。


「もう大丈夫」


 兄弟は目に涙を浮かべる。


「……ごめんなさい。

 ケガを――」


 王子の身体には無数の傷があり、

 その服のあちこちが赤く滲む。

 姫の顔は青白く、

 魔女もまた疲労が濃い。

 王子は幼い兄弟に微笑む。


「大事ない。

 無事でよかった」


 姫はそっと

 幼い兄弟を抱き寄せる。

 ようやく生きていると実感し、

 二人は大きな声で泣いた。




 大地を分かつ大河を渡り、

 山脈を越え、

 三人は進む。

 王子の剣のひと振りは魔物を滅ぼし

 姫の祈りは人々の悲嘆を癒し

 魔女の言の葉は絶望を焼き尽くす。

 やがて人々の口の端に

 救世の英雄の名が上り始めるころ、

 三人は悪魔の支配する

 北の国へと足を踏み入れた。


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