晧の光
闇の中に
二つの魂が自ずから光を放ち
浮かんでいる。
娘は両者の前に立ち
軽く手を振るった。
一方の魂から
清冽な蒼の光が溢れ、
紅炎を宿す魂を包む。
蒼と紅が溶け合い、
やがて晧と輝き始めた。
娘は憐れみの眼で
二つの魂を見る。
人ならざりし力を得て、
王子は悪魔を討つだろう。
数多の騎士が敵わなかった
悪魔を王子は討つだろう。
娘は目を閉じ
うつむく。
悼むように沈黙し、
娘は再び手を振るった。
遥か天上から
無数の星明りが降り注ぎ、
集まって一つの門の形を成す。
娘は二つの魂をそっと抱え、
星の光の門をくぐった。
小さくうめき声を上げ、
王子は目覚める。
傍らには姫が横たわり、
かすかに胸を上下させていた。
安堵を顔に浮かべ
王子は身を起こす。
精緻な細工の施された椅子に座り、
娘が二人を見ていた。
ハーブの香りに包まれたこの部屋は
魔女の居室なのだろう。
「封印は解かれ
貴方に宿りし太陽は
真の光輝を取り戻した。
その力を以て
悪魔を滅ぼすがよい」
感情のない声で
娘――魔女は言った。
王子は立ち上がり
魔女に問う。
「月の姫は
役割を終えたのですか?」
魔女は首を横に振った。
「陽光のみで
全ての闇を払うことは叶わぬ。
夜を照らすは
月の光なれば」
王子がわずかに目を伏せる。
「私を気遣う必要はございません」
姫は身を起こし
王子を見つめた。
「もとより
世界に身を捧げる覚悟」
曇りのない眼が
偽りない本心を伝える。
魔女は苦笑し、
小さく首を振った。
「ひとりで気負わないで。
悪魔を滅ぼし
世界を救って
故郷へ帰る。
それだけのことよ。
何を捧げる必要もない」
どこか意外そうに
姫は魔女を見る。
机に立てかけていた
奇妙にねじくれた杖を手に取り
魔女は立ち上がった。
「目覚めたなら
行きましょうか。
私は星の魔女。
月と太陽を導くのが
私の役目だから」
かくして星の導きを得た月と太陽は
厚く雲に覆われた北の地を目指す。
悪魔がまき散らす闇を
己が光で打ち払うために。




