星の魔女
王子は姫の国の王に謁見し、
北の悪魔を滅ぼすために
月の姫の力が必要だと
願い出た。
姫もまた
王子と共に北へ向かうことを望む。
王は感動の涙をこらえ
ふたりの献身を称える。
「悪魔の軍勢は
世界を侵食している。
もはや我らも見ないふりはできぬ。
大切な我が娘を
苦難に向かわせるのは苦しいが、
王族として世界に負う義務を果たす
お前を心より誇りに思うぞ」
姫の手を取る王に
姫は微笑みを返す。
国中が姫を称え
どうかご無事でと
声を揃える。
皆の祈りを背に受け
二人は国を後にした。
姿が見えなくなったのを
確かめた王は
小さくつぶやく。
「あの娘は
物事が見えすぎる。
いっそ
帰ってこぬほうが良い」
王子と姫は
険しい山岳を北に進み、
樹海に庵を結ぶ
魔女を訪ねる。
予言が告げる
太陽と月を導く星を
二人は捜していた。
庵で二人を出迎えたのは
姫とそう変わらぬ年頃の娘。
娘はすべてを見通しているかのように
先んじて口を開いた。
「太陽の光を宿す王子よ。
貴方はまだ奇跡の力を
その身に封じている。
月の姫は
力を解き放つ鍵。
試練に打ち勝ち
真の力を得たとき、
お前たちは悪魔を滅ぼすだろう」
奇妙にねじくれた
左右対称の楡の木の奥に
ぽっかりと闇が口を開ける。
娘は二人に
闇へと飛び込むよう促した。
「この闇の中に
外の光は届かぬ。
自ずから光らねば
飲まれて消えることになろう。
心せよ」
王子と姫は
互いに顔を見合わせ、
決意したようにうなずくと
揃って闇へと足を踏み入れる。
娘の瞳に憐れみが浮かんだ。




