表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/29

取引

 縄を打たれ

 罪人のような姿で

 王子は立ち上がった。

 姫は兵に歩くよう促される。

 姫は王子を振り返った。

 王子は安心させるようにうなずく。

 姫もうなずきを返し、

 熱のある素振りも見せず

 背を伸ばし

 連れられて行った。

 宮廷魔術師が王子に近付き

 苦笑いを浮かべる。


「最初から

 おとなしくしていただきたかったですな」


 庵の内外に

 十を超える兵の死体が

 転がっている。

 兵たちが淡々と

 死体を運んで行った。


「これでも王国の

 最精鋭です。

 奇跡の力も宿さぬ身で

 大したものだ」


 王子は無表情に宮廷魔術師を見る。


「私は何の罪で

 処刑されるのか?」


 宮廷魔術師は表情を改めた。


「国家に叛逆を企てた罪」


 王子は目を閉じ、

 天を仰ぐ。


「役者には

 なれぬか」

「いいえ」


 宮廷魔術師は

 わずかな憐憫を浮かべた。


「完璧に演じたからこそ

 観客はあなたを舞台に呼び戻した」


 王子は大きく息を吐く。

 目を開き、

 王子は言った。


「取引をせぬか?

 応じてくれるなら

 いかなる要求にも従おう」


 宮廷魔術師が顔をしかめる。


「取引をもちかけられる

 立場だとでも?」

「応じぬと言うなら、

 今ここで、

 命尽きるまで暴れてみせよう」


 宮廷魔術師は王子を

 鋭く見据えた。

 王子はその瞳を

 揺らがぬ目で見つめ返す。


「私を『処刑』せねば

 都合が悪かろう?」


 宮廷魔術師は小さく息を吐いた。


「まずは

 お聞きしましょう」


 王子はうなずき

 口を開く。


「月の姫と星の魔女の

 命を保証せよ。

 さすれば私は

 私の足で処刑台に

 上るだろう」


 宮廷魔術師はわずかに目を見開く。

 真意を探るように見つめ、

 つぶやくように

 宮廷魔術師は言った。


「姫と魔女は

 怒るでしょうな」


 王子は小さく笑った。


「私の罪状が一つ二つ増えても

 変わりはあるまい」


 宮廷魔術師は

 遠くを見るように視線を上げる。


「次の王に相応しきは

 あなただと思っておりましたのに」


 王子は首を横に振る。


「私にその意志はないよ」


 残念です、と独り言ち、

 宮廷魔術師は配下に合図を送った。

 王子を拘束していた縄が解かれる。


「参りましょう」


 恭しく頭を下げる宮廷魔術師にうなずき、

 王子は自らの足で

 王都への道を踏み出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ