自由と代償
早朝、
王子は王に旅立ちを告げる。
「安らぎを求める魂は
今も彷徨い続けております。
一刻も早く
彼らを鎮めねばなりません」
王は驚きながら
拒むことはない。
内心で安堵する王子に
ただ、と
王は言葉を継いだ。
「悪魔を滅ぼした太陽の力を
どうするつもりか?」
王子はわずかに視線を動かし、
即座に答える。
「悪魔なき世には不要な力なれば、
二度と振るうことはございませぬ」
「ならば封じてはどうか?
人の身に過ぎた力は
災いを呼ぶと言う」
王の横に控える宮廷魔術師が
恭しく頭を下げる。
王子は当然のように答えた。
「封じてくださるなら
有難き事」
「ならば私の宿す月の光も
封じてくださいますか?
祈りの日々には
役に立たぬものにございます」
姫の申し出に驚きながら
王は了承を伝える。
次に魔女に目を向けた王に、
魔女は頭を下げた。
「もとより魔女を生業としておりますれば
ご容赦を」
さして興味もなさそうに
王は魔女の言葉を認める。
王にとって魔女は
救世の英雄の主役たりえないのだろう。
王はあらためて
王子と姫を見る。
「二人が力さえ求めぬ
真の高潔と献身に満ちた
英雄であることが証明された。
我らは『救世の英雄』を
人のあるべき姿として
永遠に伝えるだろう」
宮廷魔術師が杖を掲げ、
王子と姫の身体から
光が立ち上る。
光は宮廷魔術師の弟子が持つ
水晶の小瓶に吸い込まれた。
蓋が閉じられ、
封印が施される。
軽い虚脱感に耐えながら
王子たちは息を吐いた。
太陽が高く上るころ、
王子たちは都の大通りを
歩いていた。
白馬に乗った騎士が先導し
儀礼用の剣を掲げた騎士が
沿道に並んだ。
都の民は
英雄を一目見ようと詰めかけ
その清廉な魂を讃える。
空虚な英雄の名に耐えながら
王子たちは穏やかに微笑み
手を振り続けた。
やがて正門が
重々しい音を立てて開き、
先導する騎士が脇へ退いて、
外への道が開ける。
大勢の人々の見送りを受けて、
三人は王都を出た。
背を伸ばし
まっすぐに歩き続け
やがて歓声が聞こえなくなったとき、
三人は互いに顔を見合わせ、
心から笑った。




