戦いは終わり
王子が少年を振り向く。
若い娘の身体が
糸が切れたように崩れ落ち、
美しい少年の瞳に
昏い光が灯った。
身を包む炎を振り払い
悪魔が立ち上がる。
王子は水平に炎剣を構え、
悪魔の心臓に狙いを定めた。
悪魔の輪郭が歪み、
王子そっくりの姿に
形を変える。
悪魔がにやりと口の端を上げ――
王子はためらいなく、
自らの姿をした悪魔の心臓を
貫いた。
「ためらいも
しないじゃないか」
恨めしげに
悪魔は王子を見る。
炎剣の放つ紅炎が
悪魔の身体を
じりじりと焦がしていく。
「姫や魔女の姿だったなら
ためらったかもしれないな」
王子の言葉に
悪魔は自嘲を浮かべる。
「僕の読み違いか。
極めて不快だよ、
太陽の王子。
お前のエゴは
どこまでも他者のためか」
王子は剣を引き抜く。
悪魔は膝をついた。
炎に包まれながら
悪魔は嗤う。
「でも、
無駄なことだ。
絶望が無限に湧き出ると言ったのは
本当だよ。
世に溢れた絶望は
依り代を求めて
新たな装置を生み出すだろう。
お前たちのこの勝利は
ほんのわずかな延命に過ぎない」
王子は剣を納め
悪魔を見下ろした。
「新たな悪魔が現れたなら
その時代の誰かが
それを討つだろう。
私は私たちが生きる間の
安寧があればそれでよい」
心臓を中心に
悪魔の身体が燃え朽ちていく。
「……本当に、
むかつく」
小さくつぶやき
悪魔は灰となって崩れ落ちた。
王子は天を仰ぎ
大きく息を吐いた。




