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廃教会
「……どうして、
怒らないの?」
打ち捨てられて久しい廃教会で
雨から逃れ
三人は身を寄せる。
魔女は鼻をすすり
二人をにらむ。
王子は姫と顔を見合わせ、
少し困ったように答えた。
「貴女が怒ってくれたから
怒る必要がなくなってしまった」
むっとした顔で
王子に詰め寄ろうとする魔女を
制するように姫が微笑む。
「貴女が泣いてくれたから
それで充分」
激しい雨音が
世界から雑音を消し去る。
二人の顔を交互に見て、
魔女はため息を吐いた。
「……バカね」
「そうかもしれない」
姫は神妙な顔で答える。
魔女は思わず吹き出した。
「なにそれ」
姫が釣られたように笑う。
王子は気負いなく言った。
「悪魔を滅ぼし、
故郷に帰る。
私たちのすることは
それだけです」
王子の言葉に
姫がうなずく。
魔女は二人の手を取り
強く握った。
雨は止むことなく降り続いている。
今、
この朽ちかけた廃教会が
三人の世界の全てだった。




