お風呂がある職場って最高
疲れたのでしゃがんで柱にもたれかかる。しばらくするとシンプルなメイド服に身を包んだキリッとした女性がやってきた。長い黒髪をお団子にしていて20代前半くらいに見える。仕草に無駄がなく、使用人の中でも身分が高そうだ。
「貴方が新人ですか。とりあえず部屋まで案内するので着いてきてください」
彼女の後ろを歩きながら、この屋敷のことを教えてもらった。私が今から行くのは使用人の住居らしい。急遽用意したので少し部屋が狭いそうだが、私にとってなんの支障も無い。そして、明日からこの屋敷で下女として働くらしい。
「ここが貴方の部屋です」
そこは質素な部屋で、家具はベットと机とクローゼットのみだった。机の上には食事が置いてある。
「本来食事は食堂で食べますが、今日行っても馴染めないと思い部屋に運んでおきました。それでは身体を休ませてください」
そう言って部屋を出て行った。仕事の出来る上司だ。
私は机に向かうと、食事に手をつける。温かな食事に身体が休まる。あっという間に完食してしまった。
(暇だし部屋でも探索するかな)
と言っても目ぼしいものはあまり無い。まずは机の引き出しを開ける。一つ目は空で、もう一つにはハンカチなどの生活雑貨が入っていた。次にベットを見る。簡易ベットのようで硬くも柔らかくもない。ベットの下には何も無かった。最後に、一番期待の持てるクローゼットを開いた。中にはお仕着せのメイド服と何着かの私服、寝巻きなどが掛けられていた。下には靴が置いてある。
やっぱりこれと言って面白いものはなかった。暇だしもう寝ようかなとベットに腰掛けた時、扉からノックの音がした。
はいと返事してしぶしぶ身を起こす。扉の前には、さっき案内をしてくれた女性が立っていた。
「よかった、まだ起きていましたか。タオルと服を持ってついてきてください。」
連いていくとそこは風呂場だった。夜遅くだからか私達以外誰もいない。
服を脱いで、女性について行く。すると、椅子に座らされて身体を洗われた。
「自分で洗えます」
「大丈夫ですよ。お嬢様のお世話で慣れているので」
手際よく全身を洗ってもらった後、湯船に浸かる。心地よい温かさに息がもれる。隣に並ぶようにして彼女も湯船に入ってきた。
「今更ですがお名前を伺ってもよろしいですか?」
「伝えて忘れていましたか。私の名はソフィアと言います。ソフィーと呼んでもらって構いません」
ついでに赤髪の護衛の名前も聞いた。アシェルというらしい。
「貴方をここに連れてきたのは、リリアンお嬢様が貴方に会いたがっているからです。貴方が清潔とは言えない格好のままお会いさせるわけにはいかないので」
そう言うと、彼女はため息をつきながら、額に手を当てる。ソフィーはリリアンの我儘に振り回されているようだ。確かに作法もなっていない平民と会うのは、かなり無茶振りだろう。私はソフィーにちょっと同情した。あと、すでに小汚い格好で会ったから今更だと思う。
風呂から上がった後、最低限の作法を教えてもらい、リリアンの部屋へと向かった。




