家族の屋敷は無駄にでかい
今私は、公爵家に向かう馬車に同行している。正確には、護衛の人と2人で馬に乗って公爵家に向かっていた。
時は少し前に遡る。リリーは私を誕生日プレゼントに欲しいと言ったが、父親である公爵はいい顔をしなかった。私は平民で、薄汚い上に今にも倒れそうだ。そんな人間を雇うのはあまり気が進まないのは当然だろう。プレゼントを他のもので代替する案もでたが、リリーが駄々をこねまくった。そして、当人である私が反対どころか非常に乗り気だったこともあり、最終的には娘に甘い公爵が折れた。
そして私をどうやって公爵家に連れていくかという話になった。リリーは一緒に馬車に乗りたいとごねたが、家臣でもない平民が馬車に乗るのは外聞的にもどうかという話になり、御者か護衛に任されることになった。御者の上は目立つので護衛の方に乗るという形に収まったが、すでにかなり目立っていたと思う。
体に疲労感を感じながら、すっかり暗くなってしまった空を見上げた。後ろで私を支えてくれている護衛に寄りかかる形になり、彼の顔がよく見える。橙色に近い赤髪の利発そうな青年だ。この人は、誰が私を馬に乗せるか話していた時に、一番最初に立候補してくれた人だった。私の視線に気がついたのか、彼が覗き込むように私を見る。
「どうしたの?」
「どうして私を乗せてくれたのですか?」
護衛たちの内何人かは私を乗せるのを嫌がっていそうな人がいた。彼はああと納得したように頷く。
「実は、僕も平民出身なんだ。それに弟もいてね。君より少し大きいくらいなんだ。だから君のことを見過ごせなかったんだよ。」
話を聞き進めると、公爵家には他にも何人か平民出身で雇用されている人がいるらしい。私はその人たちと行動するのだろうか。
(それにしても実力次第で平民出身がお嬢様付きの護衛になれるなんて、さすが公爵家だな。
我ながら、この職場を選んで正解だった)
そんなことを考えていると、目の前に大きな門が見えてきた。それが大きく開き、馬車に続いて中に入る。本邸までの距離が遠いのがいかにも貴族の家らしい。馬車は本邸に向かったようだが、私の乗った馬は少し脇にそれた場所に入った。ここは馬小屋のようだ。中に入ると、赤髪の護衛が私を下ろしてくれた。
お礼を伝えようとして、私は彼の名前さえ知らないことに気がつく。
「今日はありがとうございました、綺麗な赤髪の騎士さん。」
「ありがとう。君の髪も、洗ったらきっと僕より綺麗な赤色になるよ」
お揃いだね、と彼は爽やかに笑った。
この人は天然タラシの才があるな。それにしても、私の髪は赤いのか。まあ夢だもんな。髪が短いから気が付かなかった。
「それじゃあ僕は本邸の人たちに事情を話してくるよ。ここでいい子で待っててね。」
「わかりました。」
彼は私の頭を撫でると、馬小屋から出て行った。




