出会い2
目の前で起こっていることに思考が停止する。一瞬で空腹が吹っ飛ぶ。彼女が生きて立っていてこっちを見てて陽の光が当たって髪が光っていて…え、尊い。心臓の鼓動が早くなり、息もできないほどの興奮が沸き起こる。もう、全てがどうでもいい。神様ありがとう。公式から幼少期の供給がなく、ファンアートを粗探ししていた努力が認められた瞬間だ。
そんなことを考えている私を不思議そうな顔で見つめるリリアンが口を開く。
「あなた、なぜ私の名前を知ってるの?」
その質問に答える前に、私のお腹が盛大に鳴った。リリアンはくすっと笑うと、彼女の鞄に入っていた果実を取り出した。
「はい。これあげるわ」
私はそれをひったくるように取り、齧り付いた。果実の水分が、身体に染み渡るようだった。
それにしても、夢で推しに会えるとか最高すぎる。私の想像力に感謝。見れば見るほどリアルなリリアンだ。忘れないように目に焼き付けとこ。
その間、リリアンは私のことをニコニコしながら眺めている。まじかわいい。
私はリリアンに会ったらやりたいことがあった。
「果物を分けてくださりありがとうございました」
「いいえ、大したことはしていないわ」
「そんな事はありません。貴方がいなければ私はじきに死んでいたでしょう。」
私は胸の高鳴りを抑えながら言葉を続ける。
「代わりと言ってはなんですが、私を貴方の元で働かせてください!お願いします!!」
そう、やりたい事とはリリアンの元で働くということだ。もし私が働いたら、絶対にリリアンを裏切らないし、ミーアのことだって止めて見せる。夢の中でもいいから叶えたかった。
それに、私は彼女の側にいたい、隣までは行けなくとも近くで彼女を見守りたい。リリアンのことを思う気持ちだけは誰にも負けない。そう思いながらまっすぐ彼女の瞳を見つめた。
リリアンは黙って私を見つめ返してくる。そして、輝くような笑顔になると
「うん!」
と言って私に手を差し出してきた。私がその手を握ると、リリーは私の手を引いて走り出した。少し迷っていたようだが、あるものを見つけるとそこに一直線に走っていく。推しと手を繋いでいるという衝撃で躓きそうになりながらついていくと、そこには良い身なりの聡明そうな中年の男性が立っている。どうやら若い護衛を叱りつけているようだ。
「お父様!」
「リリー!一体どこに行っていたんだ!」
リリーが呼びかけるとすごい速度でこっちを向いた。リリアンが私の手を離して駆け寄ると、男性は彼女を抱き上げる。彼はリリーの父親のようだ。どうやらリリアンに甘いようで、護衛や私を放置して娘にデレデレとした表情を向けている。
「お父さま、私誕生日プレゼントに欲しいものを見つけました!」
「おお、なんだね?」
そこまできてようやく私の存在に気がついたようだ。リリーの父とその護衛は、まさかという表情で私を見た。
リリーは私を指さし目を輝かせて言う。
「私、この子が欲しいわ!」
これが、私とお嬢様の出会いだった。




