出会い1
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とうとう断罪の瞬間がやってきた。
目の前には2人の少女が立っている。
1人は、コーラルピンクの髪にエメラルドグリーンの瞳を持つ美少女だ。しかし、瞳は物憂げに伏せられており、その憂いに満ちた表情は彼女の、リリアンの儚げな雰囲気を強調するかのようだ。
それとは対照的に、もう1人の少女は勝気な表情をしている。名前はミーアといい、いつも着ているメイド服とは違って、真っ赤なドレスに身を包んでいる。赤の癖毛のショートヘアで、深い緑の瞳はこちらを見下すように見つめている。これから何が起こるのかも知らずに。
私は彼女たちの罪を一つずつ明らかにしていく。リリアンの顔面はより蒼白に、ミーアの少女の顔面はより険悪なものになっていく。
そして、リリアンが青い唇を震わせて呟く。
「わたし、そんなの、知らない」
ミーアは一瞬バツが悪そうに目を背けたが、顔を上げた時には瞳から涙を流していた。
「私は、リリアン様に脅されていて…仕方がなかったんです!信じて下さい!」
その言葉を聞いたリリアンの表情は絶望に包まれる。しかし、それでも彼女が次に顔を上げた時には真っ直ぐ前を向いていた。様々な覚悟を背負って。
こうして悪役令嬢の最後はあっけなく終わった。
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「いやリリアンに罪を背負わせてんじゃねーよ!!!!」
私は思わず手に持っていたスマホをベットに投げつける。スマホに映るリリアンとミーアのスチルと壮大なBGMが、私が投げた衝撃で途切れた。
「光の巫女は運命を恋う」
このゲームは女性向けのゲーム、所謂乙女ゲームとして大手企業から販売されたタイトルだ。大々的に公開されてから注目を浴びていた作品だったが、評価としては中の上程度に止まってしまった。理由は明白だ。
このゲームはゲームバランスや主人公サイドのキャラクターは素晴らしいものの、悪役側のキャラクターが不憫すぎたからだ。
その全ての元凶となったキャラクターがミーアである。
まず、主人公が希少な光魔法が使えることを理由に特待生として魔法学校に入学した後、同学年のミーアという少女にいじめられる。彼女は公爵家のお嬢様に仕えているメイドで、平民である主人公は黙って泣き寝入りをするしかない。
ミーア曰く、「全てはリリアン様のため!」の理念を基に行動していたため、彼女の主人は一体どれほどの性悪かと思いきや、断罪の場に現れたのは儚げ系超絶美少女!しかもミーアの独断で行われていたことが発覚した上に、それがバレた時のミーアはなんと、保身に走るのだ。あれほどリリアンのことを信奉していたのにも関わらず。そうしてミーアは処刑、リリアンは修道院送り、主人公は光の巫女として認められてハッピーエンドとなる。そこでミーアの落ちていた株が更に暴落し、リリアンに同情する声が多く上がることとなった。
かくいう私もリリアン推しである。リリアンのグッズを大量に購入し、リリアンの出番が少ないためグッズの種類も少ないことに涙し、どのルートを通っても絶対にリリアンが幸せになれないことに憤り、リリアンの美しさを友と語り合い、ミーア擁護派とレスバを繰り広げてきた。厄介オタクでは?と言う意見は聞こえない。今日も今日とてオタ活を満喫した私は、穏やかな眠りについた。
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目が覚めるとそこは、路地裏だった。
頭の中が疑問符でいっぱいになるが、その前に身体がとてつもない不調を訴えてくる。
ーお腹が空いた。喉が渇いた。
途切れそうになる意識をなんとか保ちながら、自分の置かれた状況を確認する。どうやら、私の身体は小学生程の大きさに縮んでしまったようだ。ボロ切れのような服に身を包んでいて、身体はひどく汚れている。何より、今まで感じたことがないほどの空腹が常に私を襲ってきて、立ち上がることもままならない。
(ああ、これはきっと夢だ)
それが分かっていても、自分の今の状況が恐ろしい。沢山の疑問よりも前に、自分の命が削られていく恐怖に駆られる。
(いやだ、こわいよ…おかあさん…)
死ぬのが怖い。でも動けない今、もうどうすることも出来ない。
どんなに感情で訴えても、体が言うことを聞かない。朦朧とながら意識を手放す瞬間、
1人の少女と、目が、合った。
薄桃色のサラサラとした髪
宝石のように輝くエメラルドグリーン色の瞳
白く折れそうな程細い腕
賢さとあどけなさを包容したかわいらしい顔
何度もゲームで見てきた少女を、ずっと幼くしたような女の子が、こちらを覗き込んでいた。
「リリアン…?」
その日、私の世界は一変した。




