クイーンスタ―
「なにこれ?」
「『鑑定』。なになに?『人手鬼の卵(真珠化)』だって?」
「ありえない。人手鬼が襲ってきたのは400年も前のはず。卵が残っているわけがないの」
それを見たアヤコが首を振る。
「とにかく、これが原因かもな。エリザベス」
真珠の玉を袋にいれて、エリザベスに指示する。
「うん。ヒール!」
エリザベスが再び治癒魔法をかけると、壁は輝きを取り戻す。しばらく待ってみても、紫色には変色しなかった。
「この調子で、全部除去しよう」
それからサクセスの『鑑定』で異物がある場所を特定し、全員で除去するのだった。
数時間後
「これで大体終わったかな?」
パンパンに膨れあがったリュックを背負いながら、サクセスがつぶやく。玉を大量に回収して治療魔法をかけたおかげで、紫色をしていた最深部エリアも、ほとんど元の輝きをとりもどしていた。
「よし。それじゃとっとと帰って……」
「きゃーーーー!」
「いやーなのー」
サクセスが帰ろうとしたとき、エリサベスとアヤコの悲鳴が響き渡る。
いつのまにか壁から生えてきた触手に絡めとられていた。
「お嬢ちゃん!」
「エリザベス様!」
慌てて駆け寄ったガラハットとエレルが、もっていた短剣で触手をを切断する。
「くそっ!なんだこれは!」
しかし、新たに生えてきた触手によって拘束されてしまった。
「みんな!」
サクセスは、慌ててリュックを下ろして駆け寄ろうとするが、床から這い出た触手に絡めとられてしまった。
触手の先端が裂け、鋭い牙が生えた口が無数にできる。その口はサクセスたちに噛り付き、貪り食おうとした。
「シェルシールド!」
可愛らしい声と共に、全員の体表に透明なシールドが張られる。
「アヤコ、助かったぞ」
「どうもなの。でも、このまま動けなかったら困るの。異物とみなされて、お爺ちゃんの石化魔法が……」
アヤコがそういったとき、不気味な声が響いてきた。
「ふふふ……聖女を捕らえるとは。これで我らが魔族の勝利は決まったようなもの」
壁の一部がもりあがり、人型のヒトデになる。その中央からは、色っぽい女の顔が突き出ていた。
「きゃーー!」
あまりに不気味な姿を見て、エリサベスたちは悲鳴をあげる。
「お、お前はなんだ!」
「我は、やがて六魔鬼の一人となる人手鬼の女王。クイーンスター。海を統べる者なり」
クイーンスターと名乗ったモンスターは、嬉々として話し始めた。
「ただの人手鬼として海を漂っていたわれは、50年前のある日、魔王様の強い意志を感じた。やがて現れる勇者に協力する忌々しき貝殻人たちを滅ぼせ。さすれば人手鬼の女王として六魔鬼の地位をさずけるとな」
クイーンスターは邪悪に笑った。
「……それで、その女王とやらが、ここで何をしているんだ?」
触手にしめつけられながらも、サクセスは聞き返す。
「ふふ。まだ我は六魔鬼のレベルに達しておらぬ。そんな我にできることは、ゴッドシェルの体内に卵を産みつけ、孵った子供と協力して貪りつくすことじゃ。だが……」
クイーンスターの顔が、忌々しそうに歪む。
「さすがは貝柱神といったところか。我がいくら卵を産んでも、石化の魔法がかかった霧で包み込み、封印してしまう。結局、弱らせるのに50年もかかったのじゃ」
「なるほどね。ゴッドシェルが『石化霧』を出したのは、そういうわけか。仮にも神と名がついている生物が、人に迷惑かけるのっておかしいと思っていたよ」
サクセスは納得する。
「ふふふ……やがて遠くない先、ゴッドシェルは死に、我が海を支配する。そして勇者パーティも捕らえることができた。魔王様復活前に、勇者たちを全滅させていたとなれば、我は六魔鬼の筆頭になるであろう」
クイーンスターはそう言うと、甞めるような目つきでアヤコを見つめた。




