↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
借金聖女と腹黒御用商人  作者: 大沢 雅紀
PR
37/42

犠牲

「ふふふ。美味そうな女子じゃ」

「い、いやなの!」

アヤコは生理的な恐怖を感じて、泣き叫んだ。

「……俺たちをどうするつもりだ?」

「決まっておる。一人ずつ溶かして食べるのじゃ。何せ50年もゴッドシェルの肉しか食べておらなんだからのう。人間とはどんな味がするものやら」

口から涎をたらしながら。一行を見つめる。

その時、サクセスが疑問に思ったことを口にした。

「まてよ。なんでお前は50年もゴッドシェルの体内にいたのに、石化してないんだ?」

「愚かな小僧め。石化されるとわかっていてじっとしているわけがあるまい。我は一箇所にとどまらず、常に動き回って魔法をさけていたのじゃ」

クイーンスターはそういって、サクセスをあざ笑った。

「……なるほど。だから動けない卵だけが石化していたわけだな。なら、ここに止まっていたら、お前も俺たちも石化されるんじゃないのか」

「ちっ。気づいたか」

忌々しそうにつぶやくと、クイーンスターは嫌らしく呼びかける。

「貝殻人の女子よ。そなたの可愛らしさに免じて、命を助けてやろう。ただし、勇者パーティの一人を我への生贄にささげよ」

「ひっ。そ、そんなの嫌なの!」

アヤコは泣きながら首を振るが、クイーンはねちねちと言い募った。

「よいのか?このままでは全滅するだけじゃぞ。一人の犠牲で皆が助かるのじゃ。早く選ばぬと、石化が始まるぞ」

クイーンはサクセスたちを包んでいるシールドを指し示す。うっすらと白い色の膜ができ始めていた。

悩むアヤコに冷静な声が掛けられる。

「選ぶ必要はない。俺のシールドを解け」

そう声をあげたのは、サクセスだった。

「サクセス!」

「何を言うのですか!」

「お坊ちゃん!」

仲間たちが呼びかけるが、サクセスは虚しく笑う。

「考えるまでもだろう。このままじゃ全滅だ。それに、この中で一番身分が低いのは、平民で商人の俺だ」

「今更なにいっているのよ!いつも遠慮なく私を叩いているくせに。身分を言うなら、男爵の私が真っ先に犠牲になるべきでしょ!」

エリサベスが悲鳴をあげる。

「……あなたみたいな威張っている平民なんていませんよ。それに、弟や妹が姉より先に犠牲になるべきではありません。私のシールドをときなさい」

エレルも声をあげる。

「俺は片足の半傷病人だ。お坊ちゃんやお嬢ちゃんに拾ってもらわなければ、餓死か魔物の餌になっていたかもしれねえ。俺を食え。まずくて腹をこわすかもしれんがな」

ガラハットはそういって笑う。サクセスは苦笑すると、アヤコに呼びかけた。

「こういう時に迷うと取り返しがつかなくなるんだ。だから早いもの勝ちだ。俺のシールドを解け」

「……わかったの」

涙を流しながら、アヤコはサクセスのシールドをとく。あっというまにサクセスの体はヒトデに埋もれていった。


「きゃっ!」

触手から解放され、パーティが投げ出される。

「サクセス!」

慌ててエリサベスが駆け寄ろうとするが、サクセスの体は触手に取り込まれて引きずり込まれて行った。

壁の中から、ガジガジと何かをかじるような音が聞こえてくる。

「ふむ。これが人間の味か。なんとも複雑な味じゃ」

壁の中から、クイーンのつぶやきが聞こえてきた。

「いやぁ!」

エリザベスが我を忘れて飛び込もうとするが、エレルにとめられる。

「いけません!」

「で、でも、サクセスが!」

「……彼はみんなの犠牲になったのです。その心を無駄にしてはいけません」

錯乱するエリザベスを抱きしめながら、エレルも涙を流していた。

「……お坊ちゃん。あんたって男は……」

「私は勘違いしていたの。彼こそが勇者だったの」

ガラハットとアヤコも、サクセスをおもって泣いていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=569357356&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。