↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
借金聖女と腹黒御用商人  作者: 大沢 雅紀
PR
21/42

手紙

帰りの馬車の中で、エリサベスが作ってくれたクッキーを食べながら、シャルロットはずっと考え込んでいた。

(ガス灯といい石炭ストーブといい、この世界の人間が考え付いたにしては不自然よね。もしかして、彼もそうなのかしら)

仮にそうだとしたら、これからの計画に思わぬ齟齬が出るかもしれない。

(というか、なんか嫌になってきたなぁ。主人公って可愛くていい子だし、あの執事とお似合いだし、二人を別れさせるのもね……)

自分の知っているとおりに進むと、あの二人の間に何人ものお邪魔虫を割り込ませないといけない。物語としてみていた頃と違い、実際に二人を知ってしまった今は、それがとんでもなく余計なお世話に思えてきた。

シャルロットは、隣にいるお邪魔虫の一人に声をかける。

「王子様。王位をあきらめては?正直、勇者になるのは無理かと」

「だったらどうするんだ。姉に王位を譲れとでも?」

レオン-レオンハルト王子は不機嫌に返してくる。

「リリアンヌ王女殿下は、優しくて魔力も強くてみんなから慕われていますけど」

「うるさい。あんなパンも食べられない乱暴な果物女なんかに、次の王は任せられないんだ」

レオンハルトは、光の剣を引き抜きながらつぶやいた。

「光の剣は手に入れた。だが、俺が勇者になって王位につくには、武力の他にも必要なものがあるな。あのエリサベスとかいう女、聖女といわれているだけにすごい魔力だった」

エリサベスを認める王子に、シャルロットは迷ってしまう。

(ここはどうすべきなのかしら。ゲームでは、主人公を褒める王子に私が嫉妬するという場面なんだけど……)

考えた末に、シナリオどおりの反応をしてみた。

「ふ、ふん。あんな女なんか必要ありませんわ。身分も低いし、王子にはふさわしくありません」

そういってぷいっと顔を背けると、王子はニヤニヤした。

「なんだ。嫉妬しているのか。可愛い奴だな。心配するなよ。あんな端女なんて、僕の正妻にはふさわしくないさ。でも、顔だけはいいから、妾にしてやろうかな。あの光魔法は役に立ちそうだし」

そう言いながら頭をなでてくるので、シャルロットは鳥肌が立ってしまった。

(うそでしょ!ゲームでは純粋な愛を主人公に注ぐって設定なのに。どういうことなの?どこで間違ったのかしら。何が原因なの)

頭を抱えるシャルロットは、サクセスと自分自身が原因であることに気がついていなかった。



徴税の季節を終えて平穏な日々が続く中、ヴァルハラ領は冬を迎えようとしていた。

リビングの端にはストーブが設置され、その中では石炭が赤々と燃えて部屋を暖めている。

「ああ、幸せ」

エリザベスは暖かそうなふっくらとした綿入りのドテラを着て、サクセスが作った特別な座卓に入っていた。

「この『豆炭コタツ』ってあったかいね」

「エドワルド村でつくらせた新商品だ。石炭の粉末を固めたものを使って暖めてる。テーブルには、におい消しと一酸化炭素中毒防止のためエレルさんの風の浄化魔法を『付与』しているから安全だ」

同じコタツにはサクセスが入り、お茶を飲んでいる。

「にゃおーん」

その時、鳴きながらチャコがやってきて、コタツに入り込もうとする。

「チャコもコタツがすきなの?でもその前に綺麗にしようね。『クリーニング』」

「にゃっ!」

エリサベスに光の浄化魔法をかけられて、綺麗にされてしまう。真っ白になったチャコは、一目散にコタツにもぐりこんだ。

「量産体制が整ったら王都に向けて売り出したいが、今年は

無理だな」

「まったく……どうしてこんなにお金にがめつくなってしまったんだか……ふにゃ」

エレルも同じこたつに入っているが、その顔は赤い。いつも厳しい顔をしている凛とした彼女だったが、今の表情を緩みきっていた。

彼女の前には酒が入ったコップがある。どうやら酒を飲まされたようだった。

「いいじゃねえか。坊ちゃんが金を稼いでくれるおかげで、酒ものめるし飯もうまい」

こたつに入っている四人目が、よっぱらった声をあげる。最近正式なヴァルハラ家の家臣となったガラハットだった。

まるで家族のように同じコタツに入ってまったりする彼らだったが、その時ヴァルハラ領に激震をもたらす知らせがやってきた。

「アーカス子爵による視察ですって?なんでうちに?」

伝書鳩からの手紙には、『息子と共に挨拶にいく。歓待の用意をしておけ』と書かれていた。

それを見て、サクセスは厳しい顔になる。

「とうとうきたか。麦が地主から横流しされなくなると、何か言ってくるとおもっていたけど。もう少しは時間を稼ぎたかったんだがな」

「どういうこと?」

首をかしげるエリザベスを見て、サクセスは考え込む。

(こいつ個人や、ヴァルハラ領の民にとっては悪いことばかりではないかもしれないんだよな。まあいいか。判断は子爵とその息子とやらを見て決めよう)

そう決心すると、サクセスは勤めて明るい声を出す。

「わが領に初めて来てくれたお客様だ。失礼のないようにもてなそう」

こうして、アーカス子爵を迎える準備が整えられるのだった。

読んでありがとうございます。評価していただけると更新スピードが速くなります


また、よろしければ感想をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=569357356&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。