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借金聖女と腹黒御用商人  作者: 大沢 雅紀
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光の剣

ダンジョンの最深部には、石でできた棺があり、それに白色に輝く剣が突き刺さっている。

その底には穴が開いていて、そこから零れ落ちたダイヤが輝いていた。

「もしかして、あれが『光の剣』なのか?」

駆け寄ろうとしたレオンを、シャルロットが止めようとする。

「お待ちください。棺はアレが守っていて……きゃっ!」

シャルロットがそういったとたんに、奥から氷でできたゴーレムがやってきた。

その内側には黒い石炭が核として蠢いている。

「予定通りね。『銀氷矢』」

シャルロットが氷の矢を放つが、ゴーレムは平然としている。そのうち魔力が尽きてしまった。

(えっと……ここで王子を見捨てて逃げることで、失望されてしまうんだったわね。よし)

「きゃーーーっ。魔力が尽きてしまったわ。逃げなきゃ!ふぎゃっ!」

くるりと後ろを向いて走り出そうとしたが、足元の石に躓いて、またも転んでしまった。

そんなシャルロットを、サクセスがかばう。

「お嬢様。お逃げください。あなたは充分に戦ってくださいました。ここから先は、私たちにお任せください」

「そうですよ。『ヒール』」

エリサベスが近づいてきて、治療魔法をかけてくれる。

「ふぇぇん。ありがとう」

涙目で鼻を押さえながら、シャルロットは立ち上がった。

「よし。地面に『付与魔法』をかける。エリサベスは光魔法を注入しろ」

「任せて!」

サクセスが地面に手をつけて呪文を唱えると、巨大な魔方陣が描かれた。

「いきます。『ホーリーライト』」

ここまで魔力を温存していて万全の状態だったエリサベスは、すべての力を解放する。その背中から光でできた羽が生え、魔方陣に吸い込まれていった。

「あなた、やっぱり……」

シャルロットが何かつぶやきながらエリサベスを見ている間に、魔方陣が光に満ちていく。

そして、アイスゴーレムの足元にまで広がった。

「グワッ」

アイスゴーレムの体が溶けていき、中央の核が地面に落ちる。同時に魔方陣も消えていった。


サクセスたちが戦っている間、レオンは棺にたどり着いていた。

「ふっ。待っていろ。この『光の剣』でそいつを倒してやる」

自信満々に剣を抜こうとしたが、硬く締まっていてなかなか抜けない。

夢中になって奮闘していると、周囲に人の気配が感じられた。

「あの……レオン様。アイスゴーレムはエリサベスさんが倒しちゃいましたけど」

微妙な顔をしてシャルロットが告げると、レオンは真っ赤になった。

「う、うるさいな。いいから手伝え」

「仕方ないですねぇ」

全員が協力して力をこめると、ようやく剣は抜けた。

「やった。これは俺のものだ」

喜ぶレオンを放っておいて、サクセスは棺の下に落ちているダイヤを拾い集めていた。

「ぐふふ……これは値打ちものだぞ」

自分たちを放っておいて宝物に執着する男たちに、シャルロットとエリサベスは同時にため息をつく。

「あなたも苦労しているみたいね」

「シャルロット様こそ」

二人の間に、妙な連帯感が生まれるのだった。

「よし。用は済んだ。さっさと帰るぞ」

そういって帰ろうとするレオンを、サクセスは押しとどめた。

「お待ちください。その剣を持って帰っても大丈夫か、確認しないと」

そういいながら、棺を開ける。中には巨大な白い虎の死体が入っていた。

「……うごきませんね。封印がとけたのに」

「そうだろう。だから大丈夫だ。心配しすぎなんだよ」

レオンはいらただしげに言う

「一応、処置をしておきましょう」

サクセスはそういうと、持ってきた荷物から油を取り出し、棺の中の死体に撒いていく。

「何しているの?」

「念のため、焼き尽くしておこうと思いまして」

「え?放っておいたほうがいいと思うけど。完全に焼き尽くされたら、六魔鬼の一匹ダークタイガーの復活イベントが起こらないかも」

なぜかシャルロットが反対してくるので、サクセスは首をかしげた。

「え?」

「な、なんでもないわ。うん。燃やしたほうがいいわよね。徹底的にやっちゃって」

こうして油が撒かれ、火がつけられる。虎の死体は勢いよくもえがった。

「ねえ、なんか動いているみたいなんだけど」

見物していたエリサベスがそう指摘する。

「気にするな。筋肉の収斂だ」

「叫び声もあげてるよ」

「肺にたまった空気がもれているだけだ」

サクセスはまったく躊躇することなく、淡々と作業を続ける。

こうして、ダークタイガーの死体は焼き尽くされてしまうのだった。


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