エルドリン村
エルドリン村
何回か魔物の襲撃があったが、訓練された兵士の連努によって追い払うことができた。
隊商は無事に村に到着し、笑顔を浮かべた村民たちに迎えられる。
「ゴールドマン様!ようこそいらっしゃいました」
筋肉ムキムキのドワーフ村長が、サクセスに恭しく礼をする。
しかし、サクセスは片手を挙げて制した。
「待て。私より先に挨拶すべき相手がいらっしゃる」
サクセスは馬車を降りて、うやうやしくドアをあける。
「お嬢様。お気をつけてご降車ください」
「う、うん。なんか調子狂っちゃうな。こほん。大儀でした」
サクセスが差し出した手をとり、ゆっくりと降りてきた可憐な美少女を見て、村民たちはざわめいた。
「だ、誰だ?きれいな子……」
「高貴な雰囲気が漂っている。も、もしかして!」
期待をこめて見つめる村民の前で、サクセスは高らかに宣言する。
「皆のもの。今回は畏れ多くもご領主様であらせられる、エリザベス・ヴァルハラ閣下がご来訪くださった。彼女は慈悲ぶかき領主様であり、傷ついた人を癒す聖女としても名高い方である。頭が高い!控えおろう」
「は、ははっ」
村長をはじめとする村民たちは、堂々としたサクセスの迫力に押されて平伏した。
(ち、ちょっと!土下座させるなんてやりすぎよ!どうしちゃったの?)
(問題ない。領主の威を借りて傲慢に振舞う俺を諌めて、頭をあげさせろ)
エリサベスのささやきに、サクセスはそう返した。
「わ、わかったわ。ええと……こほん!ゴールドマン!そこまでにしなさい。家臣としての分を弁えよ!」
「ははっ。出すぎた真似をいたしました」
サクセスは一礼して下がり、エリサベスが前に出てくる。
「皆さん。頭を上げてください。あなた方は私の大切な領民です。もし何かあったら、いつでも私に訴えてください」
その言葉を聴くと、村民たちは喜びの表情を浮かべて起き上がった。
「エリサベス様!万歳!」
「俺たちを大切な領民だと言ってくれるなんて。一生ついていきます」
エリサベスが可憐な美少女であることも相まって、領民たちは彼女に忠誠を誓うのだった。
「エリサベス様。こちらにいらしてください。村の広場で歓迎パーティの準備が整いました」
背の小さいドワーフの女性たちに囲まれて、エリサベスが困惑している。
「あ、あの、えっと……」
助けを求めるようにサクセスを見るが、いい笑顔を浮かべられた。
「お嬢様。村の者たちとの交流をお楽しみください。私たちは仕事が残っておりますので」
「ち、ちょっと!」
何かわめいていたエリサベス、女性たちに連れて行かれた。
それを見送ったサクセスは、厳しい顔で村長に向き直る。
「それで、ヴァルハラ家に納める租税は用意してあるだろうな」
「は、はい。こちらに」
倉庫に向かうと、事前に要求された物が大量に積み上げられている。それは石炭や鉄製の武器・農具などの他に、いくつか変なものも混じっていた。
「これは何なのですか?鉄の鉢や筒なのはわかりますが、どうやって使うのかわかりません」
事前に伝書鳩で設計図を渡されそのとおりに作ったのだが、ドワーフたちも使い方がわからなかった。
「これは『石炭ストーブ』だ」
サクセスはダルマのようにずんぐりしている鉄の鉢の蓋を開け、中央に石炭を入れて火をつける。たちまち火がついて周りは暖かくなったが、同時に煙が噴出してきた。
「けほっ。煙たいですな」
「わかっている。だから、蓋に鉄の筒をつけて、煙を外に逃がすんだ」
サクセスが鉄の筒を接続すると、煙は筒を通って外に逃げていった。
「なるほど。暖炉の一種なのですな」
「ああ。石炭を使うので暖炉よりストーブのほうが火力が強く、すぐに暖まることができる」
村長は、サクセスの発明に感心する。
「ありがとうございます。この村でも採用させていただこうと思います」
「それは好きにするがいい」
サクセスはそう告げると、租税の品物をチェックした。
「よし。決められた量をちゃんと納めたようだな」
「ありがとうございます。それで……ええと」
「わかっている。ここからはゴールドマン商会とエドワルド村の交易だ」
そういうと、村の外で待機させていた隊商を招き入れた。
何台もの馬車が村に入ってきたので、男たちが歓声をあげる。
「やった!食べ物が来た!」
「これで母ちゃんと子供に服を買ってやれるぞ」
持ってきた鉄製品や石炭を振りまわし、早く交換してくれと催促する。
「あわてるな。今回は充分に品物を持ってきたからな。いくらでも交換してやれるぞ」
馬車の荷物を降ろすと、大量の麦や塩、砂糖や果物、干し肉や干し魚、服や木製品が現れる。
こうして交換市が始まるのだった。
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