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少年王と最強騎士団~王様だけど、先頭切って剣と魔法で戦います~  作者: 青柳 漠(アオアヲさん)
第二章 ミンツブルク解放戦

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女騎士登場!

 アステルは陣地に着くや否や、休む間もなく軍議を開いた。


「すぐに状況説明を」


 アステルの言葉に、作戦参謀であるエルザが素早く反応し地図を広げた。

 そして、大陸の最北端、トリスデンを指差した。


「我々は大陸の北、ここトリスデンにいます。『王の道』を使い陸側から攻め、最小限の被害で守備隊を破りました。これで王の道と港の確保は大丈夫です。次はどこに向かうかです」


「私はしばらくここにとどまり、様子を見るべきかと思います。我々はよそ者ですから、まずは十分な補給ルートを確保するのが先決です」

 慎重派のフロドが言った。


「私もフロドの意見に賛成です。ここは時間を取り、どの諸侯が敵か味方か、見極めるべきだと考えます」

 エルザが静かに言った。


「オレは美味いものが食べられれば、それでいいよ」

 相変わらずマリンがふざけた口調で言った。


「マリン!」

 エルザが厳しい口調でマリンをとがめた。首をすくめるマリン。


「兵の士気も高いので、このまま進撃しても問題ないとは思いますが、諸侯の態度は気になりますね」

 イブンは進むのか待つのか、どちらともつかないような曖昧(あいまい)な提案をしてくる。


 軍議はしばらくこの地で待機……という流れになってきていた。


 ……皆の意見に静かに耳を傾けていたアステルが、おもむろに口を開いた。

「我が軍の最終目標は帝都占領だ。本日直ちに出発する」


「陛下、それは無茶です」

 エルザが思わず言った。


 だがアステルの決意は固かった。

「私には最強の騎兵隊がある。私は力を与えられた者として、為すべき事を行いたい」

 アステルの言葉に、軍議の場が沈黙に包まれた。



「あの~」

 沈黙を破ったのはマリンであった。


「今、知らせが入りました。ミンツブルク城が皇帝の大軍に襲われています」

「敵の大将は?」

と、アステル。


「ティリー公爵です」

 マリンの言葉に、「オオー」と、どよめきが起こる。


「ティリー公爵……帝国の総司令官であり、皇帝の弟です」

 エルザが目を伏せながら言った。続けて、

「アステル様、ティリー公爵はかなりの魔法力の持ち主と聞いております。ここは慎重に行くべきです」


「よし、馬を引け。ミンツブルク城を助ける」

「陛下!」

 エルザが止めるのも聞かず、アステルはその場を飛び出した。

 馬にまたがり、ミンツブルク城に向けて駆け出すアステル。


 慌ててフロド以下親衛隊が、アステルの後に続く。


 アステルは急いでいた。

 ミンツブルク候は反皇帝軍の有力者だが、気弱な性格だと聞いている。大軍に囲まれて戦意をなくすということは、十分考えられる。ここはスピードを上げなければいけない。


「こんな強行軍では、戦う前に兵たちが参ってしまいます」

 フロドは心配したが、アステルは意に介さなかった。


「休憩だ」

 アステルは軍を止めた。


 ミンツブルクに向かう街道で、大軍を養える都市はここハンザで終わりだ。後はミンツブルクまで都市はない。


 偵察隊を率いていたマリンが帰ってきた。


「アステル様、エライ事です」

「なんだ、エライ事と言うのは」

「とにかく大変なんです」

「なんだ、その要領を得ない報告は。何のための偵察だ」

「とにかくアステル様、一緒に来てください!」

 アステルはマリンに引きずられるように、ミンツブルク城へ向かった。




「こ、これは……」

 アステルは、城から離れた小高い丘からその驚くべき情景を見た。


 ミンツブルク城を巨大な壁が囲んでいる。


 ミンツブルク城を囲む壁、それは氷の壁であった。壁は二重三重に張り巡らされており、城を囲む壁と、外からの攻撃に備える壁があり、その間のスペースには皇帝軍が陣取っている。


 壁の高さは、ミンツブルク城の城壁に届かんばかりの高さであった。


 イブンが驚いて、

「もしや、我々に対しての……」

と、つぶやいた。


「ああ、我軍に対しての備えだ。ティリーは我らを待ち構えて、打ち倒そうとしている」

 アステルは氷の壁から、強大な魔法力をひしひしと感じていた。




 一旦ハンザまで引き上げたアステルは、皆を集めて軍議を始めた。


 エルザたち本隊も合流している。


「ミンツブルク城を囲むティリーの布陣はこうだ」

 アステルは即席の地図を取り出し、そこに描かれた城のマークを指差した。


「城の南にはエルン川が流れている」

 アステルはペンを取ると城の真下に線を一本引いた。


「そして、ティリーは城の周りに氷の壁を築いた」

 城のマークを囲むように、少し大きな丸を書いた。


 そして、さらに大きな丸を書いた。


「この大きな丸は城からの攻撃に対してではなく、外からの攻撃に備えるものだ。さらに氷の壁と壁の間にティリー軍はいる。完全防御態勢だ」


 ここで、アステルはペンを置いた。


「土地の者の話によると、この氷の壁は一夜にて出来上がったそうです」

 フロドが皆に説明した。


「恐ろしい魔法力です。ミンツブルク城は為(な)す術がない」

 イブンが言うと、

「ホント、凄い魔法力。アステル様といい勝負」

と、マリン。


「いや、アステル様よりすごいんじゃ……」

と、場がざわつきだした。


「静かに!何を恐れている。私がもう一度行き、敵の弱点を探ってこよう」

 アステルはまたも部屋を飛び出した。




 アステル以下親衛隊に、エルザも加えた部隊は――彼女はお目付け役を自負していた――威力偵察を目的に、前回よりも氷の壁に近づいていた。


 すると、前方でめったやたらに剣を振り回している騎士がいる。


「何かに襲われている?」

 アステルが疑問に思いながらさらに馬を走らせると、空中がキラキラと輝きだした。

「ダイヤモンドダストだ!」


 北国出身のアステルたちには見覚えのある光景だ。

 しかしここはミンツブルク。しかもまだ冬ではない。


 前方の騎士がよろけて馬から転げ落ちた。


 その時、アステルたちは見た。


 大きさは手のひらほどで、姿形は少女のよう。肌は驚くほど白く、透き通って見えることもある。背中には、こちらも透き通った羽根を持ち、ユラユラと宙を舞っている。


「あれは、雪の精では?」

 こういう事には詳しいイブンが、あれあれ、と指し示した。


 雪の精はこちらに気づかないのか、遠くに飛んでいってしまった。


 倒れた騎士の様子を見に行ったフロドが戻って来た。

「駄目でした……凍死です」


 皆驚いていると、向こうで甲高い叫び声がした。


 一同顔を見合わせて、声の方――明らかに少女の声だった――に駆け出した。




 案の定、騎士や馬が倒れている脇で、ただ一人戦っている騎士がいる。

 体を守る鎧は最小限に抑え、防御よりもスピード重視のその出で立ち。

 その背格好から、女騎士に違いない。


 女騎士が剣を振るうと風が舞い上がり、雪の精は木の葉のごとく吹き飛ばされる。だが雪の精は多い。


 アステルは魔反射の盾を構えると、雪の精めがけて投げつけた。

 盾はものすごいスピードで、雪の精を薙(な)ぎ払っていった。


 そのさまを、女騎士はただ呆然(ぼうぜん)と見ていた。


「早い……魔法?風の魔法なの?」

 そうブツブツと言いながら、女騎士はアステルに近づいてくる。


「もしかしてアステル?やっぱりアステルだぁ」

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