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少年王と最強騎士団~王様だけど、先頭切って剣と魔法で戦います~  作者: 青柳 漠(アオアヲさん)
第一章 フィンデガルドの風

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奇襲攻撃

 明くる日の早朝、海岸で見張りをしている守備兵は、遠く沖に浮かぶ軍船を見つけた。剣に二匹の狼、フィンデガルド王家の旗だ。


「敵襲、海岸から敵襲だー」


 知らせを聞いて、トリスデンの守備隊が海岸に集まる。


「さあ来い、上陸する奴の足止めをしろ」

 兵たちは防塁(ぼうるい)に陣取り声を上げる。


 城壁の上では、魔導士が魔法力増幅装置の前で、敵が魔法の射程に入るのを、今か今かと待っている。


「さあ、敵の船が燃え上がるのを一緒に見ていましょう」


 コモデはシュタインボルトと一緒に、城壁の上から敵船を眺めた。


「来るわよ、来るわよ、もう少しで射程よ」


 コモデは子供のようにはしゃぎ、シュタインボルトはつまらなそうに船を見つめている。


 その時、


「敵襲だー」

 またもや見張りの声が響き渡る。


「そんなこと言われなくてもわかっている。敵は目の前よ!」

 コモデは怒鳴り声をあげた。


「待て、怒鳴る前に報告をよく聞くのだ」

 シュタインボルトがコモデを諭した。


「陸側より、敵兵による攻撃です」


「なっ、何ですと!」

 想定外の事態に、コモデはうろたえた。


「陸からも海からも……これでは挟み撃ちだわ」


 だが、シュタインボルトは冷静だった。


「おそらく敵の攻撃は陸側がメインだ。海上の船からは、攻撃を仕掛けてくる気配はない」


「そ、そうですね。私はこれから陸上の敵を迎え撃ちます」


 コモデは魔導士部隊と歩兵部隊を連れて出て行った。


「フィンデガルド軍は陸側にどうやって渡ったのだ?周りは高い崖、港はここのみ。他に上陸できる地点はない。だとすると、もしや『王の道』か?……これは面白くなってきた」


 シュタインボルトもまた、敵の姿を求めて出て行った。



 一方トリスデンの町では、どこからともなく現れた騎兵によって大混乱に陥っていた。


 陸側から敵は来ないと油断していたため、城門の見張りが気づいた時には、敵騎兵がすぐそこに迫っていた。


 守備隊は慌てて城門を閉じようとするも、騎兵が放った矢に貫かれ、見張り台から転落する者多数。異変に気づいて、他の見張り兵がすぐさま城門を閉めた。


「ふうー、助かったー」


 城門を閉めてほっと胸をなでおろす守備兵であったが、背後に気配を感じた。


 ブルル……


 気配どころか、馬のいななきが聞こえる。


「な、何で」


 おそるおそる兵が後ろを振り向くと、そこには馬がいた。ただの馬ではない。全身に銀色のプレートメイルを装着している。


「あ、あ……」


 視線を上に移すと、これも白銀のプレートメイルに身を包んだ騎士がこちらを見下ろしていた。


 兜にはフェイスガードがついているため、表情はうかがい知れない。


「城門を開けろ。今すぐだ」


「えっ、子供の声?」

 兵は驚いた。


 馬上の騎士から発せられた声は歳若い少年のもの。鎧を着ているとはいえ、体つきも小ぶりに見える。


「早く門を開けろ!」

「……」


 騎士に催促されるも兵士は動かない。


 いや、わざと時間稼ぎをしているのだ。


 グレイブ(鈎(かぎ)のついた長刀)を持った兵士が、騎士を馬から引きずり降ろそうと、後ろから近づいて

来る。


 異変に気付いた騎士は、背後からのグレイブの一撃を剣で受け止める。しかし、グレイブの鈎(かぎ)の部分に剣を絡め取られてしまう。


 キーン、という音とともに、空中に投げ出される剣。


 続いてのグレイブの第二撃は、騎士の兜を弾き飛ばした。


 ……兜が取れ、あらわになったその顔は、まだあどけなさの残る少年のものであった。


 瞬間、猛烈(もうれつ)な突風が吹き、二人の守備兵は十数メートルも吹き飛ばされてしまった。


 突風を巻き起こしたのは、馬上の騎士だった。


 フィンデガルド軍には、魔法を使える者は一人しかいない。


 彼こそはフィンデガルド国王アステル。


 別名――少年王――


 少年王は風の刃で、城門の閂(かんぬき)を切断した。


 城門の扉は勢いよく開き、フィンデガルド騎兵が次々とトリスデンの町に侵入した。



 ……フィンデガルド騎兵が、なぜ突然陸側から現れたのか。



 時をさかのぼること数刻前、トリスデンの南の遺跡……一千年前、巨大な貿易都市が存在した、今は何もないその場所。


 その忘れられた遺物から光の渦が発生した。渦が収まると、どこからか騎兵の一団が現れた。その数、五十騎。


「あのレンスキーっていう、ヒゲおやじの言ったことは本当だったね」


 遠足に来たみたいにはしゃぐこの少年、名前はマリン、十六歳。親衛隊の一員。


「ええ……無事到着して何より。ま、魔法技術は昔の方がむしろ進んでいましたから、大丈夫とは思っていましたが」


 知ったかぶりのこの少年、名前はイブン、十五歳。こちらも親衛隊員。


「オレは気分が悪いよ。魔法の瞬間移動なんて、やるものじゃないね」


 親衛隊で一番年長なこの少年、名前はフロド、十八歳。もちろん親衛隊長。


「無駄口を叩くな。……気分が良くなったら行くぞ」


 そして、この御方、名前はアステル。十六歳にしてフィンデガルドの国王。そう、少年王だ。



 トリスデンの陸側を守る砦から、守備隊が出撃してきた。フィンデガルドの騎士たちは馬から降り、遺跡の柱や壁の陰に隠れる。


「あれ?何でバレちゃったのかな」

 マリンが軽口をたたくと、


「あれだけピカッと光りましたからね。不審に思ってもしかたないでしょう」

と、イブン。


 守備隊は歩兵で構成され、集団で行動しているが、皆バラバラに走って来る。


「敵は小規模。おそらく偵察隊ではないかと。本格的な兵は繰り出していないようです」

 フロドがアステルに報告した。


「よし、フォーメーションZだ」


 アステルが命令すると、騎士たちは馬に乗り、兜のフェイスガードをおろし、縦一列の縦隊(じゅうたい)になった。


 先頭はアステルが務める。


 アステルは敵に向かって一直線に駆け出した。


「き、騎兵隊だ~」

 トリスデンの偵察隊は騎兵隊に気づき、慌てて隊列を整える。


 だが、騎兵たちのスピードは想像以上だった。あっという間に距離を詰められる。


 アステルは守備隊を取り囲むように、騎兵隊を左に旋回させた。


 そして、折りたたまれた弓を取り出し、その弦を引っ張った。たちまち弓は、折りたたまれた状態から、矢を発射できる状態になった。


 フィンデガルド騎兵は、敵歩兵を囲みながら矢を次々と放つ。


 敵歩兵からも反撃の矢が放たれるが、騎兵には届かない。


「何であんな距離から矢が届くんだ」

 敵守備隊から、悲鳴にも似た声が上がる。


 たまらず敵歩兵は隊列を崩し、散り散りになってしまう。


 アステルはその機を逃さず、さっと手を振り、風を使ってアステルの意思を皆に伝えた。それは「突撃」の命令であった。


 騎兵たちは剣を抜くと、敵歩兵に向かって突撃を開始した。圧倒的スピードの一糸乱れぬ連続攻撃に、隊列を乱していた敵歩兵は次々に打ち取られ、幸運にも攻撃を受けなかった兵士は、町とは反対の方向に逃げ出した。


 アステルはフェイスガードを上げ、皆に号令する。


「逃げる敵は放っておけ。このままトリスデンにいる守備隊を倒し、この『王の道』の安全を確保する」


 アステルの命令に、フロドが待ったをかけた。


「アステル様、我らはたった五十騎。あまりにも数が少なすぎます。ここはフィンデガルド本軍が来るのを待った方が……」


「いや、ここは即、攻撃で行く。敵の不意を突けば我らの有利。戦っているうちに本軍も来るだろう。今、風通信で本軍に連絡する」


 アステルが右手をさっと北の方角に振ると、風が吹き抜けていった。


「この風、便利なんだけど一方通行なんだよね。もし本軍にトラブルがあったら、どーするの」

 マリンがぽつりと言った。


 それを聞いてアステルは、

「大丈夫だ、例え五十騎でも負けはしない」

と、自信に満ちた表情で言い切った。


「と、いうことでございます、親衛隊長殿」

 マリンがおどけて言った。


「わかった。我らは命がけでアステル様を守る。いいな、マリン」

「もとより承知!さあ、行きましょう」

 フロドとマリンが駆け出そうとする。


「待て、フロド、マリン。私が行く、お前たちはここで待機。私が行って、敵をここにおびき寄せる。イブン、行くぞ」


 アステルはイブン他数名を率いて、トリスデンの町に向かった。

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