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少年王と最強騎士団~王様だけど、先頭切って剣と魔法で戦います~  作者: 青柳 漠(アオアヲさん)
第二章 ミンツブルク解放戦

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落ちてきた少年王

「フロド隊長!あれを!」

 イブンが前方を指さした。


 フロドとイブンが、アステルと別れた地点まで戻ろうと馬を走らせる。


 氷の壁の大部分が崩れ去り、その間隙から諸侯軍が攻め込み、壁の中にいたティリー軍と戦いを繰り広げていた。


 さらにイブンが興奮して叫んだ。

「あれはフィンデガルドの旗です!」


 その旗を掲げて戦っているのはマリンだ。


「あいつ、無事だったんだな」

 フロドとイブンは敵を蹴散らしながら、マリンの元に駆け寄る。


「マリン!大丈夫か」

「フロド隊長!それにイブンも。不肖このマリン!元気いっぱいでございます!」

「戦況はどうなっている」

 フロドが聞くと、

「氷の壁が崩れ落ちたことで、ティリー軍の戦意はかなり落ちちゃってます。それに、あれを見てださい」

と、マリンは崩れ落ちた壁を指差した。


 そこには、砕け散って何基にも折り重なった壺があった。フロドとイブンを追いかけ、また必死に戻っていったあの壺だ。


「さすがに間に合わなかったのですね」

 イブンは胸に手を当て、しばしの祈りを捧げた。


「もういいだろ、敵のために祈ったってしょうがないぞ。俺たちはアステル様を探さなきゃいけない」

 マリンが文句を言った。


「よし、ここの戦いは皆に任せて、オレたちはアステル様の元に向かうぞ」

 フロドの号令のもと、マリンとイブンはアステルと別れた地点まで戻り、さらに中心部へ向かった。




 そこには、一人空を見上げているリコが立っていた。


「リコ様!無事でなにより」

 フロドが呼びかけるも、リコは振り向きもしない。


「どうしたのだリコ様は。マリン、イブン、様子を見てこい。オレは周囲を警戒する」

 マリンとイブンはリコの元に駆け寄る。


「リコ様、どうかしましたか」

 マリンが呼びかけるも、リコは相変わらず空を見つめたままだ。

 マリンは首を傾(かし)げ、イブンも首を横に振った。


「もしもーし、リコ様!聞いていますかー」

 マリンが声をかけ続けると、それまで空を見ていたリコが、二人に向き直った。


 明らかな怒りの顔だ。


「うるさいわね、アンタたち!こっちが集中してアステルを探しているんだから、邪魔しないでよね!」

 そう言うと、リコは再び空を見上げた。


「陛下が空の上に?」「お空を飛んでいるとか?」

 イブンとマリンも空を見上げる。


「アステル様が空の上だって?」

 周囲を警戒していたフロドも、リコの元へ駆け寄ってくる。


「アステルは空の上にいるわ」

 リコが言った。


「それは……アステル様が死んでしまった、ということですか?」

 フロドが確かめるように聞くと、

「勘違いしないで。アステルは死んでいないわ。私には分かるの。かすかだけど、アステルの気配がする。今、私の風魔法でアステルの居場所を探しているの。アステルほど魔法力が強くないから上手くいかないけど、でも、だんだんと近づいてくるのを感じる」


「陛下はこちらに向かって落下している、ということでしょうか」

 イブンがリコの発言を引き取った。


「それが本当なら、いかにアステル様でも地面に突っ込んでぺちゃんこだぞ!」

 マリンが言うと、

「落ちてくる陛下を我々が受け止めるなんてことは無理ですし、そうすると……」

と、イブンはリコを見た。

 フロドとマリンもリコを見つめる。


「そうね、私が魔法でアステルを受け止めるしかないわ。まず落下地点がどこかだけど……ダメね、全く分からないわ。近づいてきているのは、感じているのだけど……」

 リコが悔しそうに言った。


「ヤバいぜ、どーするんだよ」

 マリンが言うも、フロドは思案顔。リコは悔しそうに空を見ている。


「……陛下のことは正直分かりませんが、ティリーも一緒だとすれば、そこにヒントがあるかもしれません」

「どういうこと?」

 リコがイブンに質問する。


「もし陛下とティリーがこの空の上で戦っていたとして、このまま地面に落下すれば無事ではすみません。ですので、何らかの対策を取るのではないか、と」

 イブンは続けて、

「ティリーの魔法力は強力です。リコ様、陛下の気配を探るのではなくて、ティリーの魔法力を探すことはできませんか?」

と、リコに言った。


「それは……ちょっと嫌かも」

 リコは瞬間、嫌そうな顔をした。

「でも手掛かりはないし、分かったわ。あなたの助言に従います」


 リコは改めて集中した。


「氷の魔法を感じたわ。こっちよ」

 リコが駆け出した。続いて三人も後を追う。


 そこは、先ほどの場所からさほど離れていない場所だった。


「あれを見て」

 リコが言う方向を見ると、空中を氷の塊が浮いている。


「あの氷で受けとめようっていうのか。それは無茶だろう」

 マリンが言うと、それを聞いていたかのように空中に浮かんでいた氷が、サーッと雪のように細かくなった。そして幾重にも積み重なり、厚みを帯びていく。


「確かにあの雪みたいな状態なら、受け止められるかもしれないな」

 マリンはびっくりしながら言った。


「ティリーがここに落ちてくるとして、果たしてアステル様が一緒なのか……」

 フロドが心配そうに言う。



 リコたちはアステルが落ちてくるのを待った。それはひどく長い時間のように感じられた。



 フロドは、

「アステル様ー。ここですよー」

と、さかんに空に呼びかけ続けた。


 マリンはフィンデガルドの旗を振り続ける。


 イブンは黙って空を見つめる。


 リコは……その時に備え集中している。




「来ました!」

 イブンが叫んだ。


 猛スピードで何かが落ちてくる!


「あれは三下ね」

 リコが言った。その言葉に三人はリコを見る。


「ティリーのことよ!でも、いけない!アステルが下で、ティリーが上だわ。このままじゃ、アステルが下敷きになっちゃう」

「リコ様、陛下に力を!」

 イブンの言葉に、リコはハッとした。急いで風の力をアステルに送る。


 組み合ったアステルとティリーは、空中に浮かぶ雪のシールドを突き破り地面に激突した!


 土砂が噴き上げ、土煙が舞い、その場にいた四人は衝撃で吹き飛ばされる。


 何とか立ち上がりアステルの元に駆け寄った四人は見た。


 落下した二人を中心に地面がえぐれ、そして円型に凹んでいた。

 四人はすぐに駆け寄れなかった。


 アステルがティリーの下敷きになり、押しつぶされていたからだ。


 アステルもティリーも立ち上がってこなかった。リコは意を決してアステルに駆け寄った。

 と、リコの足が止まった。


 二人の体の下から血が流れてきたのだ。


 二人は重なって倒れていた。上がティリーだ。


 リコはティリーの体をアステルの上から退(の)かそうと、力を入れた。だが、ティリーは重くてリコの力では動かない。


 フィンデガルドの三人が、何とかティリーの体をアステルから引き離した。


 ティリーはすでに息をしていなかった。

 アステルの鎧は血で染まっていた。


「アステル、アステル」

 リコがアステルの体をいくら揺すっても、アステルは目を開けない。返事もない。


「死んじゃ嫌、アステル。せっかく会えたっていうのに、死んじゃイヤだよ」


 その時、リコの涙で霞んだ目に、アステルの手がかすかに動くのが見えた。


「あ……まだ生きてる」

 リコがアステルの手を握りしめると、アステルのまぶたが、かすかに開けられた。


「リコ……頼みがある……」

「なにっ、なんて言っているの?」

 か細い声を聞き逃さないように、リコはアステルの口元に耳をよせた。


「オレが死んだら……フィンデガルドに行って……国を治めて欲しい……民のために……頼む」

「何を……言っているの?アステルはまだ死なない!」

 リコはアステルの手を思いっきり握りしめた。


「……ハンカチ……大事にしてくれ……」

 それだけ言うと、アステルは喋らなくなった。

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