↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少年王と最強騎士団~王様だけど、先頭切って剣と魔法で戦います~  作者: 青柳 漠(アオアヲさん)
第二章 ミンツブルク解放戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/26

イブン、大いに焦る

「ここです」

 イブンが壁の前で止まった。フロドが辺りを見回す。そこは何の変哲もない、ありきたりの普通の氷の壁であった。


「詳しい話は後です。今は時間がありません」

「よし!分かった。やるぞ!」

 イブンとフロドはかけ声と共に、氷の壁に向かって槍を繰り出した。


 ガキッという音とともに、長槍が氷の壁に突き刺さる。


 二人が攻撃した場所が青く輝くと、目も開けられないほど光り輝いた。

 思わず目をつむるフロドとイブン。


 光が収まり、なんとか目を開ける二人。攻撃した氷の壁は、そこだけ何もなく、ガランとした空洞がそこにあった。


「これは……確かに手応えはあったはず」

 フロドがイブンの方を向くと、

「ええ確かに。しかし何もいませんね」

と、イブンも困惑顔だ。


 その瞬間、ガラガラ!と氷の壁に亀裂が入ったかと思うと、二人の立っている場所から氷の壁が崩れだした。


 ウワ~、という悲鳴にも似た叫びが頭上から聞こえてきたので、二人は上を向いた。

 五基の壺がこちらに向かってきているも、壁の崩落の前に急いでブレーキをかけているようだった。ガチャガチャと、お互いがぶつかりながら止まる壺。そして、慌てたように元の方向へ猛スピードで帰っていく。その壺を追うように、壁が崩落していった。


 その様子をフロドとイブンはただただ見ていた。


「あれは時間の問題だな」

 フロドがポツリと言うと、

「このままほっとけばいい」

と、イブンもポツリと言った……と思ったら、言ったのはイブンではなかった。


「えっ、誰?」

 イブンがキョロキョロと辺りを見る。


 しかしそこには、イブンとフロドしかいない。


「ああっ!」

と、フロドが叫んだ。


「フロド隊長、どうしましたか?」

 イブンが聞くと、フロドはイブンの方を指さす。


「どうかしましたか?」

 イブンが訪ねてもフロドはただ指さすばかりだ。


 イブンが自分の体を触っても、特におかしなところはない。


「肩だよ。お前の右肩だ」

 やっと言葉を発したフロド。


「肩ですか?」

 イブンが己の右肩を見ると、先ほど触った時には何も感じなかったのに、今は右肩に、ちょこんと女の子の人形が乗っていた。


 人形は可愛らしい青い頭巾をかぶった、青い目をした人形だった。


 その人形が喋りだした。

「私は雪の女王よ」

「雪の女王?」「雪の女王!」

 フロドとイブンは同時に声を上げた。より驚いていたのはイブンの方だった。


「雪の女王様、私なんぞの肩にお座りにならなくてもよいのです。ああ、どこかにお座りになられる腰掛けがないものか……そうだ、この上にお座りください」

 イブンは己の兜を取り外すと、地面に置き、その上に座るように雪の女王にうながした。


「そう?この肩もなかなか座り心地が良かったのよ。だけど、せっかくだから座らせてもらうね」

 雪の女王はピョン!とイブンの肩から飛び降りると、地面に置かれた兜に向かってスタスタと歩き出した。そしてまた、ちょこんと兜の上に座った。


「雪の女王様、先ほどは攻撃をしてしまいご無礼をいたしました」

 イブンはハハーと、地面に頭をこすりつけて平伏する。


「た、隊長も早く謝りなさい!」

  ポカンと突っ立っているフロドに向かってイブンが怒鳴る。


「え、ああ、申し訳ございません、雪の女王様」

 イブンの勢いに押されてフロドも膝をつき、地面に頭をつけない程度に頭を下げた。


「コラッ、フロド!頭が高い!」

 イブンはフロドの頭を地面に押し付けた!


「痛!クソッ、イブンの奴……」

 不服そうな顔をしたフロドだったが、イブンの尋常ならざる態度にそのまま平伏し続けた。


「無礼ってことはないよ。おかげであの三下から逃れることができたんだから」

 雪の女王は不快そうに言った。


「あの~、三下から逃れた……と言われますと?」

 イブンが聞くと、

「うん、三下とは、敵に見つかるまでは私の魔法力を分け与える、という契約を取り交わしたの。だから、あなた達に攻撃された、それを持って三下との契約は終わったの」

「そうだったのですか。三下とは、もしかしてティリー公爵のことでしょうか」

「あんな奴が公爵ですって?笑っちゃうわね。あんな奴、どこまでいっても三下よ」

 そこまで言うと、雪の女王は兜からピョン!と地面に飛び降りた。


「さて、私も行かなくちゃ。しばらく壁の中にいたから、退屈でしょうがなかったよ」

 歩き出した雪の女王だったが、ピタッと足を止めると、二人の方を振り向いた。


「言っておくけど、私の力がなくても、あの三下は強いわよ。あのルドラの加護を受けている王様は大丈夫かな?」

 そう意地悪そうに笑うと、またスタスタと歩いて、そして消えてしまった。


 雪の女王が見えなくなったのを確認すると、イブンはその場に崩れ落ちた。

「た、助かった……」


 その様子を見てフロドは思わず吹き出した。

「イブン、さっきから何を焦っているんだ。あんなちっちゃい妖精?相手にさ」


 イブンは冷ややかな目でフロドを見た。

「もう、これだから無知は嫌ですね。いいですか、だいたい我々みたいな魔法力のない人間が、あれ程までにハッキリとその姿形が見られて、なおかつ意思疎通もできるってことは、あの氷の女王の魔法力はとんでもないものです。ちょっとでも怒らそうものなら、我々は凍らされて氷漬けにされてましたよ。よかった~無事で」


「そ、そうか。馬鹿らしいとは思いつつも、お前の真似をしてかしこまっていて正解だったよ。ではこれからアステル様を助けに行こう」

「我々が行ってどれだけ手助けになるか分かりませんが、行きましょう」

 フロドとイブンは馬を走らせた。





「さて、立派な氷の彫像が出来上がったわ。題名は……さしずめ『少年王と王女の悲しき別れ』といったところね」

 ティリーは氷の塊の前でご満悦(まんえつ)だ。


「お城のどこに置きましょうか。玄関に置いて客を驚かせるのも良いし、寝室に置いてこの像を独り占めするのも良いわね。ああ、楽しみは広がるわー」


(客をもてなすのに使うのだったら、大広間に置いてくれ。そうすればあなたの城に訪れた方々に、皇帝の非道を訴えることができる)


「何!この声はまさか!少年王?」

 ティリーはハッとして氷の像から後ずさった。


「まさか、頭に直接響くこの声は……」

(そうだ、そのまさかさ)


 ティリーの目の前で、氷の像にヒビが入り始める。


「そんな……まさか雪の女王を?」

 溶け始めた氷の像から大量の水蒸気が立ち昇り、辺りは何も見えない。


 水蒸気が消えたその場には、リコを両手に抱えたアステルの姿があった。


「そんな馬鹿な。まさか雪の女王の力を打ち破ったとでもいうのですか」

「ああ、そうさ」

 アステルはリコを安全な場所にそっと横たえた。


「信頼する親衛隊が、雪の女王とお前の繋がりを断った!もうあなたは雪の女王から魔法力をもらうことはできない」


 アステルは剣を抜くと、ティリーに向けた。


「さあ、ティリー!決闘だ!」

この作品を面白いと思われた方、応援したいと思われた方は、


「ブックマーク」と、「評価」をぜひぜひお願いいたします。


アオアヲさんのモチベーション維持のために、必要な栄養分になりますので。



あなたにとって、この作品が日々の活力になれば幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。