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少年王と最強騎士団~王様だけど、先頭切って剣と魔法で戦います~  作者: 青柳 漠(アオアヲさん)
第二章 ミンツブルク解放戦

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アステルVS.ティリー 圧倒的な魔法力の差

「リコ、すまない。お前を巻き込んでしまった」

 馬を走らせながら、アステルがリコに謝った。


「いいのよ、巻き込まれた感はあるけど、アステルが私を頼ってくれたんだもの。女は度胸、やるっきゃないわ」

「ありがとう……しかしティリー公爵はうまく誘いにのってくれるだろうか」

「そこは大丈夫じゃないかな。こうやって私たちだけ……まあ、私はオマケだけど、壁の中に入れたんだから、現れるわ」


 さらに進むと、何もない空間から雪の精が現れた。


「ルドラ神の名において雪の精に命ずる。去れ!」

 アステルの言葉に雪の精は姿を消していく。


「これは……なんで?」

「ルドラ神は暴風の神でもあるが、同時に雪嵐(ブリザード)の神でもある。雪の精よりも上位の存在なのさ。昨日は気づかなかったが、私なら雪の精を押さえ込める」

 不思議がっているリコに、アステルは説明した。


「やった、さすがアステル。これで後はティリー公爵だけね」

「ああ、そして……来た!」


 アステルは巨大な魔法力が近づいてくるのを感じ、あたりを見渡した。


 巨大な壺が……来た。壺が氷の壁の上をスーと滑ってきて、アステルとリコの上でピタリと止まった。


 そして、ティリー公爵が壺の中から姿を現した。


「で、でかい!」

 アステルは思わずうめいた。


 脇に二人の盾兵士を従えて登場したティリー公爵は、明らかに圧倒的な存在感を発していた。隣の盾兵士は通常の大人の兵士だが、この兵士が子どもに見えるほど背が高く、しかも横幅も大人二人分かと思うくらいだ。身につけられる鎧がないのか、その服装は豪華な刺繍が施された宮廷礼服を着ている。


「なんてスケールの大きい奴だ」

 アステルがそう声を絞り出す。それを聞いて、

「ちょっとアステル!なに圧倒されちゃってるわけ?あんな見てくれに騙されちゃダメよ」

と、リコがアステルを励ます。


「中身はきっと木偶(でく)の坊(ぼう)に決まってるわ」

「確かにそうだな……よし!」

 アステルは弓を引き絞ると、ティリーに向けて矢を放った。矢はティリーに向かって勢い良く飛んで行く。


 しかし、カキーン!と、ティリーの両脇にいる盾兵士によって弾かれてしまった。


「もう一度!」

 アステルは矢を放つ。

 先ほどと同じように矢はまっすぐティリーに向かって飛んでいく。……が、同じように盾兵士に防がれる。


 アステルの放つ矢を警戒して、盾兵士がティリーの前を囲んでいるのだ。


「あーもう!盾兵士が邪魔ね!」

 リコは悔しがっているが、アステルはどこか余裕顔だ。


「リコ、私の矢に風の力を追加してくれ。私がいいと言ったらやるんだ。いいね」

「分かったわ!」


 アステルはティリーに向かって矢を放ったが、今回は的を大きく逸れて、ティリーのいる壺の上を超えてしまった。


「ここだ!」

 アステルが矢に風の魔法を送ると、矢はグーッ、と方向を変え真上からティリーに向かって飛んで行く。


「今だ、リコ!」

「分かったわ!」

 リコも矢に向かって風の力を送る。矢はスピードを増し、ティリーを射抜こうとする。ティリーは気づく気配がない。


「よしっ、これで!」

 アステルはティリーに突き刺さる矢を思い浮かべた。しかしその場の空気が一瞬で凍るのを、アステルは感じた。


(ホホホ、無駄なことを)

 アステルの頭の中に声が響いてくる。

「誰だ!」

(小娘、アタシに対して木偶(でく)の坊(ぼう)なんて、えらい言われようね。アタシは悲しいわ)

 アステルの頭の中に何者かの言葉が響いてくる。


「リコも聞こえたか?」

「うん、アステルも?」

「と、いうことは……」

 二人は壁の上を見上げた。


(アンタたちとは離れているから、少年王の風魔法による通信、それを使わせてもらったわ)

(あなたはティリー公なのか?しかも、私の風魔法を真似したって?)

(その通りよ、アタシがティリー。しかもアンタの風通信は一方通行。アタシの通信はお互いが話すことができる優れもの。分かった?この圧倒的な魔法力の差!)


「納得がいかないわ!」

 リコが叫んだ。


「いかにもヤラレ役みたいな格好をして、アステルを上回る魔法力ですって!そんなの100%ありえないわ」

「おい、リコ。ティリー公は十分貫禄があるぞ」

 隣で聞いていたアステルが、なぜかティリーをフォローするように言った。


「もう!少年王がそんな弱気でどうするの。これから王道ストーリーを歩むっていう時に、こんな雑魚キャラに倒されちゃうわけ!それじゃあ、ヒロインとしての私の立場はどうなるの!」

「おい、リコ。お前、変な本でも読みすぎたんじゃないか」

「そんなことないわよ!いい、魔法で攻撃よ!」

「わかった、風の魔法を出すぞ!リコ、いいか」

「オッケーよ」


「ビッグストーム!」「ビッグストーム!」


 アステルは右から、リコは左からティリーのいる壺めがけて、風魔法による竜巻を浴びせた。二人の竜巻攻撃によって、氷の壁から壺を浮かせて地面に落下させる予定だったのだが……


「おい、リコ。もっと竜巻を大きくしろ」

「アステルの方が魔法力が大きいんだから、私に合わせてよ」

 二つの竜巻の大きさは左右バラバラ。しかも回転方向も逆という、ちぐはぐさ。心配した通り、壺はビクとも動かない。


「クソ!こうなったらやけだ。リコ、とにかくありったけの魔法力を風に込めろ」

「やってるわよ!」

 左右バラバラだが、二人は風に魔法力を送る。すると……


「あれは!」とアステルとリコ。


 アステルとリコが作ったものではない、第三の竜巻が発生!見事、壺を氷の壁から叩き落とした。


 壺はアステルたちがいる側に転げ落ち、氷の壁に当たりながらどんどん割れていく。


 最後は地面に激突すると粉々に砕け散った。

 辺り一面に土煙が上がる。どうやら壺は落下の衝撃で完全に壊れたようだ。


「何も見えないな……」

 アステルは土煙が収まるのを待った。

 すると……何事も無かったかのように、ティリーがその姿を現した。


 やはりデカイ!身近で見ると、そのデカさが分かる。

 アステルは改めてティリーの巨体に驚愕(きょうがく)した。


 出っ張っているお腹は異様に膨れ上がり、その顔もデカイ!なぜか兜はかぶっておらず、その頭には毛が一本もなく光り輝いている。


「ホホホ、今の攻撃にはビックリしたわ。まさか竜巻がもう一個できるとはね。あれも、アンタたちの魔法かい?」


 アステルは何と答えようか一瞬戸惑ったが、

「あーそーだ。私たちの魔法だ!」

と、言い切った。


 それを聞いてティリーは吹き出した。またもやアステルの頭に直に語りかけてくる。


(少年王、嘘を言ってもらっては困りますわ。あの竜巻は、偶然?たまたま?まぐれで出来たものでしょ。違いますか?なぜなら、アンタ自身がそう思っているからよ)

「何、こちらの考えがわかるのか?」

(そうよ。先ほどの続きだけど、アタシの魔法はお互いが意思疎通するだけではなく、その気になれば相手の考えを読むこともできるのよ。どう!この圧倒的な魔法力の差!)


 今度はリコに向かって、

「先程はアタシを三下扱いにしていたけど、これでも皇帝陛下の弟なのよ。見てくれで判断してるんじゃないわよ!アンタなんかより、アタシの方が高貴な身分であーる。当然、魔法力もケタ違いであーる。さあ、アンタたちを氷漬けにしてあげましょう」


 ティリーが身につけている指輪が青く光り輝くと、辺りに氷の結晶が浮かび上がりアステルを包みこんだ。


 アステルは巨大な氷の中に閉じ込められた!


 いや、アステルだけじゃない。いつの間に飛び込んだのか、リコも一緒に氷の中に閉じ込められた!


「ホホホ、どうですこの魔法力!さすがは雪の女王!」

 ティリーは得意顔だ。


(なんて魔法力だ!この力は、ルドラと戦ったあの感じに似ている……)

 アステルは魔法力を振り絞って、氷が自分たちを完全に包み込むのを防いでいた。


「おいリコ、大丈夫か!」

 リコは今にも意識を失いそうだ。


「フフッ、こうやって二人一緒に氷漬けにされて、全ておしまいっていうのも、刺激的でいいかもね。若い二人は永遠に氷の中に閉じ込められましたとさ。おしまい」

 リコがうわ言のようにつぶやいた。

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