↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少年王と最強騎士団~王様だけど、先頭切って剣と魔法で戦います~  作者: 青柳 漠(アオアヲさん)
第二章 ミンツブルク解放戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
14/23

オレたちの実力、見た!?

 味方だけに知らせる場合は、言葉にならない風の音を送る。


 だがそれには一定のリズムがあり、訓練されたフィンデガルド騎士ならその意味が分かる。


 アステル軍は一斉に敗走しだした。

 もちろん偽装敗走である。


「敵は退却しているぞ!」

 ティリー軍から歓声が上がる。


 追い打ちをかけようとティリー軍は前進を始めた。アステルの風通信により、アステル軍の退却は一斉ではなく、間隔を空けて退却している。そのため敵の進行も場所によりバラバラだ。


「今だ!」

 アステルが全軍に風を送る。


 今まで敗走していたアステル軍はクルッと反転し、バラバラに攻め上がってくるティリー軍に反撃を開始する。浮き足立ち隊形を乱しているティリー軍は各個撃破され、またもや氷の壁に向かって逃走を始めた。


 今度は戦場全体に、アステルは風通信を送った。


 "フィンデガルドの少年王アステル、ここにあり。手柄が欲しい者はかかってこい"


「アステル様、何を?」

「おいおい、ちょっと自分をアピールしすぎじゃない?」

 フロドとマリンは風通信に驚きを隠せない。


 二人はアステルの元に駆けつけようとするが、乱戦の中アステルに近づけない。


 その時、氷の壁の一角が音もなく溶けて、そこにぽっかりと穴が開いた。穴の向こうにはミンツブルク城の城壁が見える。


 アステルとリコの乗った馬は、その穴に向かって突き進む。


「アステル様危ない!これは罠です!」

 フロドが叫ぶもアステルたちには届かない。


 アステルとリコが壁の向こうに消えた後、氷の壁の穴はガタガタッ、という音とともに塞(ふさ)がった。


「アステル様!」

 フロドは氷の壁に到達すると馬から降り、氷の壁に触った。


 とても分厚い氷の壁だ。手で叩いてみても、相当な厚さだ。とても人の力で打ち破れるとは思えない。


「くそ!早くアステル様をお救いしなければ」

 フロドは馬に飛び乗ると、辺りを見渡した。


 ティリー軍はあらかた掃討(そうとう)され、あちこちで捕縛(ほばく)されている。


 向こうからマリンが馬に乗って駆けてくる。


「フロド隊長!敵は戦意をなくし、降伏する者、逃げる者多数。この場にはもはや戦う者はいません!」

「分かった。降伏した者は武器を取り上げて一箇所に集めろ。オレはアステル様を助けに行く」

「助けるってフロド隊長、この壁を通り抜けるのはさすがに無理ですよ」

「確かにそうだが……どうしたらいい」

 フロドとマリンはその場で考え込んでしまった。


「ウーン」

「ウーム」


 考え込むが何も浮かばない。


「ウーン。……何か冷えてきましたね。ハッ、これはもしかして雪の精が出現する前兆!」

 マリンがあたりを警戒する。しかし雪の精は出てこない。出てこない代わりに氷の壁の上を滑るように進んでくる一基(いっき)の巨大な壺。


「何だ、あのデカい壺は?」

 巨大な壺の底は、氷の壁をまたぐように真ん中が凹んでいて、ちょうど氷の壁を挟んで移動してくる。そして壺はフロドたちの真上で止まった。


 その壺から顔を出したのはティリー軍の兵士。その格好からおそらく魔導士!


 魔導士たちはフロドたちに向かって氷の魔法を放った。巨大な氷柱(つらら)が空中に出現し、フロドたちに降り注ぐ。


「マリン、散開だ!」

 フロドとマリンはそれぞれ別方向に向かって馬を走らせた。フロドたちは華麗に氷柱(つらら)を避ける。


「くそっ!この距離なら……届くか!」

 マリンは馬に乗りながら手綱から両手を離し、矢をつがえると壺に向かって放った。


 見事命中!壺から身を乗り出していた魔導士の一人は、地面に転げ落ちた。


「高いところにいるから、矢が届かないと思ったのか?風の魔法がなくても、これくらいはへっちゃらさ」

 マリンは二の矢を放ち、もう一人の魔導士も射抜く。

「それに盾兵士を配備し忘れるなんて、オレたちを低く見過ぎなんだよ!」


 しかし、敵も反撃を開始する。体を乗り出さず、両手だけを壺の上から出して滅多矢鱈(めったやたら)に氷の粒を放つ。


「こっちを見ない攻撃なんて当たらないぜ」

 マリンは巧みな手綱さばきで氷の粒を避ける。


「マリン!大丈夫か」

 フロドが馬に乗って駆け寄ってくる。


「フロド隊長、全然平気ですよ」

「そうか、良かった。しかしこの地面、えらいことだな」

 フロドに言われ、マリンが改めて地面を見ると、氷によって地面はデコボコし、いたるところに氷の柱が立ち、いまや全くの悪路と化している。


「この悪路だと、止まって矢を放つならまだしも、走りながらだと馬が揺れて狙いが定まらんな」

 そんなフロドの声を聞いていたかのように、壺の中から魔導士たちが四人現れた。


「敵さんも、こちらの矢が当たらないと思っているな。……ここは日頃の鍛錬(たんれん)の成果を見せる時だ」

 フロドはマリンに言った。


「お任せを!」

 マリンは威勢の良い返事をして駆け出した。フロドもそれに続く。


 壺の上から氷魔法の攻撃!

 地面は氷による悪路!


 しかし二人は馬を巧みに操り、弓の射程まで近づく。


「今だ!」

 馬の四本足が地面を離れる、そのわずかな瞬間をとらえ、マリンは弓を引き絞り矢を放った。矢は身を乗り出した魔導士に突き刺さり、魔導士は叫び声を上げて後ろにひっくり返る。


 隣の魔導士は驚きの表情を浮かべた。そして威力よりも数だ、とばかりに小さな氷柱(つらら)を大量に放つ。二人は巧みな手綱さばきで氷柱(つらら)を避けながら、今度はフロドが馬の跳躍するタイミングに合わせ矢を放つ。


 叫び声を上げて、魔導士は壁の外側に落下した。


「敵は確か四人いたはずだが……」

 フロドは下から壺を見上げるが、魔導士の姿はない。おそらく怯えて壺の中から出て来られないのだろう。


 勝負は……有った。




「フロド隊長〜マリンさ~ん」

 イブンと複数のフィンデガルド騎兵が帰ってきた。


「おお、イブン。無事だったか」

 体力を消耗し、苦しそうに息を吐くイブンに向かって、フロドは声をかけた。


「氷の壁を調査中に、アステル様の風通信を受けたのです。あんな己の居場所を晒すような風を送って、何があったのですか?敵に自分の居場所を教えるようなものです」

「確かに……そのことなんだが……」

 フロドが腕組みをして考える。


「今日のアステル様は、普段より悲壮感が漂っているように思える。もしかして己の居場所を敵にさらして、敵の司令官ティリー公爵をおびき出そうとしているのではないか?」

 フロドが言うと、

「確かにアステル様ならやりかねないな。自分の責任だと思っちゃうんだよな~あの人は」

と、マリンが言った。


「でも、ティリー公爵の実力が分からない以上、これは危険な賭けです!」

と、イブン。


「そうか、だからリコ様を伴って行ったのか。普段のアステル様なら、リコ様と一緒になって行動するなんてありえない。我々はここで待つしかないかもな……」

「フロド隊長、そんな悠長(ゆうちょう)なことは言ってられませんよ」

 マリンが氷の壁の上を指さした。


 ちょうどイブンが走ってきた方角から、大量の壺が氷の壁の上を滑ってやってくる。そして、ガチャガチャ!と音をたてぶつかりながら、フロドたちの真上に止まった。


「これは……こっちはこっちで大ピンチだ」

 フロドたちは急いで散開した。

この作品を面白いと思われた方、応援したいと思われた方は、


「ブックマーク」と、「評価」をぜひぜひお願いいたします。


アオアヲさんのモチベーション維持のために、必要な栄養分になりますので。



あなたにとって、この作品が日々の活力になれば幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。