番外編(ルーカス編)④「同じ道を選んだ理由」
本編では語られなかった、
ルーカスが“同じ道を選んだ理由”の話になります。
すべてが始まる前の、
当たり前だった距離の話です。
昔から、当たり前だった。
隣にいることが。
同じ道を歩くことが。
特別だなんて、思ったことはない。
フェルナー家とグレイフォード家は古くからの付き合いで。
僕たちは、物心ついた頃からずっと一緒だった。
だから。
選ぶまでもなかった。
同じ場所にいるのが、普通だったから。
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エリアスの母親は、優しい人だった。
いつも穏やかに笑っていて。
少しだけ儚くて。
それでも、芯が強かった。
「あなたは優しい子だから」
よく、そう言っていた。
「きっと、誰かを守れる人になるわ」
その言葉を、
エリアスは、疑いもなく受け取っていた。
曲げることもなく。
「ぼく、きちになる」
何度も繰り返していた。
そのたびに、
あの人は、嬉しそうに笑っていた。
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僕は、違った。
魔力量が多い。
それだけで。
進む道は、ほとんど決まっていた。
「魔導士の方がいい」
「騎士では持て余す」
何度も言われた。
間違ってはいない。
でも。
どうでもよかった。
「……騎士になる」
そう言った時。
父は少しだけ驚いた顔をした。
「理由は」
聞かれて。
少し考えて。
答えた。
「一緒にいるため」
それだけだった。
それで、十分だった。
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あの日のことは、よく覚えている。
空気が、変だった。
張り詰めていて。
嫌な感じがしていた。
制御が外れた。
分かっていた。
止められないことも。
危険なことも。
全部。
それでも。
どうにもならなかった。
魔力が膨れ上がる。
視界が歪む。
音が遠くなる。
その中で。
一つだけ、はっきりしていた。
エリアスの姿。
何か言っていた気がする。
聞こえなかった。
次の瞬間。
衝撃。
体が揺れる。
視界が戻る。
遅れて。
痛み。
血の匂い。
倒れる感覚。
「……ああ」
その時、思った。
止めてくれたんだな、って。
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本当は、分かってる。
あの時。
僕が騎士なんて選ばなければ。
あんなことにはならなかった。
魔導士として別の場所にいれば。
隣にいようなんて思わなければ。
あの事故は、起きなかった。
でも。
それでも。
後悔は、していない。
選んだのは、自分だから。
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エリアスは、ずっと抱えていた。
あの日のことを。
自分が壊したと。
間違えたと。
そう思い続けていた。
違うのに。
それでも。
言えなかった。
言う資格がないと思っていた。
原因の一部は、自分にもあるから。
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最近のエリアスは、少しだけ変わった。
前よりも、近くにいる。
誰かの隣に。
自然に。
迷いなく。
その相手が誰かなんて。
考えるまでもない。
分かっている。
最初から。
「……そっちか」
小さく呟く。
悔しくないわけじゃない。
何も思わないわけでもない。
それでも。
分かっている。
あいつが選んだのなら。
それが正しい。
昔から。
そういうやつだから。
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あの時と同じだ。
守るために、選ぶ。
迷わずに。
真っ直ぐに。
だから。
今度も、間違っていない。
きっと。
あいつは。
ちゃんと守れる場所を見つけたんだ。
もう。
自分じゃないだけで。
⸻
それでいい。
本当に。
それでいい。
⸻
その日。
ルーカス・フェルナーは。
初めて、自分が選ばれなかったことを受け入れた。
選んだのは、自分です。
だからこそ——その結果も、受け入れています。
それでも。
変わらなかったものが、確かにありました。




