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『距離を測るのをやめた日、騎士団長の恋人になりました』 ― 距離と契約の境界線 ―(彼氏×彼氏の事情)  作者: つるぎまる


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番外編(アルベルト編)③「選び続けた結果」

本編では語られていない、

アルベルトが“選び続けた結果”の話になります。


ここで、彼の行動がどのように繋がっていたのかが明確になります。


 合理で考えれば。

 切り捨てるべきだった。


 グレイフォード家。

 次男。

 事故。

 魔力回路の損傷。

 騎士としての将来。


 不確定要素が多すぎる。

 価値は下がる。

 評価も落ちる。


 ——普通なら。

 選ばない。


(……関係ない)


 結論は、最初から変わらない。


 ***


「魔力回路の損傷についてだが」


 静かな部屋。

 向かいに座るのは、宮廷付きの魔導士。


「完全な修復は不可能です」


 即答だった。

 迷いがない。


「だが」


「安定させることは可能です」


「……方法は」


「外部からの干渉です」


 短く、

 はっきりと。


「同調できる魔力があれば、乱れを抑えられる」


 理解は早い。


 理屈は単純だ。


 壊れたものを直すのではなく。

 外から支える。


「……条件は」


「相性です」


 それだけ。


 しかし、

 最も難しい。


「一致する魔力特性は稀です」


 当然だ。

 同じものは存在しない。


 だから価値がある。


「……だが、存在はする」


 アルベルトは言う。

 確認ではない。


 断定。


「ええ」


 魔導士は頷く。


「可能性はあります」


 それで十分だった。


(……成立する)


 必要なのは、確率ではない。


 手段だ。


 ***


 騎士団。


 鍛錬。

 昇進。

 実績。


 すべてを積み上げる。


 最短で。

 最速で。

 無駄なく。


 評価を上げる。

 発言権を持つ。

 選択権を得る。


(……位置が必要だ)


 届かないなら。

 届く場所に行けばいい。


 それだけの話だ。


 ***


「また断るのか」


 父の声。

 呆れはない。

 確認だけ。


「はい」


 即答。


「皇女殿下からの打診だぞ」


「理解しています」


 それでも。


「必要ありません」


 迷いはない。


「……まだか」


 低く問われる。

 探るように。


「関係ありません」


 即答する。


 否定にはなっていない。


「そうか」


 父はそれ以上言わない。

 分かっているからだ。


(……変わらない)


 あの日。

 選んだものは。


 今も。

 変わっていない。


 ***


 書類を閉じる。

 視線を上げる。


 目の前にいるのは——


 エリアス・グレイフォード。


 変わらない。


 だが、

 壊れている。


 表面は整っている。


 中身は、揺れている。


 それが分かる。


(……届く)


 今なら。

 位置もある。

 手段もある。

 理由もある。


 すべて、揃っている。


「恋人のフリをしてほしい」


 言葉にする。

 迷いなく。

 躊躇なく。


 これが最適解だと分かっているから。


 拒否されることも。

 織り込み済み。


 それでも。


「必要にする」


 距離を詰める。


 逃げ道を塞ぐ。


 選択肢を消す。


 残すのは。

 一つだけ。


(……選ばせる)


 自分が選ぶのではない。

 選ばせる。


 その形に持っていく。


 それが——

 最短だ。



 その日。


 アルベルト・フォン・シュヴァルツは。


 “選び続けた結果として、


 選択そのものを成立させた”。

選び続けたことに、理由はありました。

ですが——それだけでは足りません。


最初から変わらなかったものが、

すべてをここまで導いています。

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