表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『距離を測るのをやめた日、騎士団長の恋人になりました』 ― 距離と契約の境界線 ―(彼氏×彼氏の事情)  作者: つるぎまる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/39

第27話「決断」

過去との整理が入ります。

ずっと引きずっていたものに、はっきりと向き合う回です。


 静かだった。


 執務室。

 紙の音だけが、一定のリズムで響く。


 いつもと同じ。

 何も変わらない。


 そのはずなのに。


(……違う)


 思考の奥が、揺れている。

 整理しきれていない。


 あの言葉。


 繰り返される。


『お前は正しかった』


 否定できない。

 反論もできない。


 それなのに。

 受け入れきれない。


 今までの前提が、崩れている。


 自分の判断。

 自分の過去。


 全部。

 意味が変わる。


(……なら)


 問いが残る。


 その先。


 どうするのか。


 考えないわけにはいかない。


 今までは。

 逃げていた。


 距離を取って。

 触れないようにして。


 関わらないようにして。


 それで、保っていた。


 だが。


 もう、それはできない。


 したくない。


(……選んだ)


 はっきりしている。


 あの距離を。

 あの関係を。


 自分で選んだ。


 なら——

 逃げる理由はない。


「……」


 ペンを置く。


 小さな音。


 それだけで、決まる。


 立ち上がる。

 迷いはない。


 考えすぎると、崩れる。


 だから。

 動く。



 廊下。


 視線がある。

 噂もある。


 全部、分かっている。

 それでも。


 止まらない。

 止めない。


 歩く。


 一直線に。


 騎士団区画へ。

 扉の前で止まる。


 躊躇はない。


 開ける。



 中。


 アルベルトがいる。


 いつも通り。

 変わらない。


 それでも——

 今は違う。


「……どうした」


 低い声。


「……話があります」


 迷いなく。


「聞こう」


 短く。

 逃げ場はない。


 だからこそ——

 意味がある。


「……俺は」


 一瞬だけ詰まる。

 だが、止めない。


「逃げていました」


 はっきりと。


「過去からも」


「関係からも」


 一つずつ。

 言葉にする。


 整理ではない。

 認めるために。


「……」


 何も言わない。


 ただ、聞いている。


 それでいい。


「……でも」


 息を整える。

 ここで決まる。


「もう、逃げません」


 断言。


 その瞬間。

 迷いが消える。


 全部、繋がる。


 過去も。


 今も。


 選択も。


 全部。


「……そうか」


 短い返事。

 それだけ。


 それで十分だった。



「……だから」


 足が動く。

 距離を詰める。


 迷いなく。

 触れる。


 当たり前のように。


「この距離でいます」


 言い切る。


 曖昧さはない。

 言い訳もない。


 ただ——

 自分の意思。



 沈黙。


 短い。


 だが。


 重い。


 そして——

 手が、引かれる。


「——」


 ほんの僅かに。


 だが、確実に。


 逃げ場を消すように。

 距離が、さらに詰まる。


「……エリアス」


 低く。


 近くで。


「それでいい」




「逃げるな」


 短く。


 だが、明確に。

 命令ではない。

 選択の固定。


「……はい」


 今度は、迷わない。


 即答。


 そのまま。

 離れない。


 距離も。

 手も。

 意思も。



 その日。


 エリアス・グレイフォードは。


 初めて、自分の選択を言葉にし、


 そして——


 その選択を、相手に固定された。

間違いではなかった。

その一言で、過去の意味が変わります。

それだけで——十分でした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ