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RUIRIN涙鱗 ライト  作者: 花殿ナイ
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第19話 キノコが取り持つ縁もある

「お嬢さんよ~。オレぁ、女子供に手を上げたくねぇ~んだわ。だからよ、返そうぜ?」


「うん?手を上げる?上等!勝負すっか?女だけど、ふふっ・・・多分お前より強いぞ?怪我すんのはお前じゃないかな?」


 そう言うと、女は羽織っていたマントを纏わりついていた岩キツネに脱いで渡した。マントの下はピチピチのボディースーツか・・・。恐らくゴム質で出来ていて生半可な斬撃などは通らねぇだろう。

 筋肉の付き方や低重心な所から格闘系なのは直ぐに分かったが、いやはや、これは・・・良いお尻だ。じゃない。ミチミチのバネの塊みたいな恐ろしげなボディだ。

 なんてゆーか、このお嬢ちゃんの物の言い方が少しカチンとくるんだよな~。腕の方も痺れが消えたみたいだし、ちょーっと痛い目見さしてやっかな?オジサン、その辺のハンターよりかは手練れだぜ?女なんてのはアレよ、チョチョっと相手してやりゃぁ直ぐに”ヒ~ン。ゴメンナサイ”なんて言ってくるもんなんだ。


「お嬢ちゃん、負けたらちゃんと、素直に謝るんだぞ?女ってえのは、直ぐに言い訳すっからな。・・・こっちはいつでもいいぜぇ?かかってきなさい」


「ははっ♪別に何でもいいよ?負けるわけないからさ。ん!そんじゃ、お言葉に甘えて!!」


 女が高く飛び上がる。全体重を右手の武器に乗せ、パンチ力に変えて殴りかかってくるつもりだな??

 だが!飛び掛かって来たのが運のツキだぜ!ハッハッハ~!オマエと喋ってる間に軟化の護符を地面に仕込ませてもらった!オマエはそのまま泥の中にドボンして哀れにもがいて、オレの勝ちだ!!

 オレは勝ちを確信しその場をすました顔で、ひょいとどいた。


「そりゃ~~~!!」


   ドッッパーーーン!!!


 凄まじい音と共に尋常じゃない量の泥が、まるで間欠泉の様に立ち昇る。


「うん?ありゃりゃ?・・お前、なんかしただろ?あああ!!オイデが!!泥だらけだ!・・・くそぅ、お前!よくもやったな!?」


 あのね、多分オレが一番泥だらけになってるんじゃないかな?五センチ位は積もってるんですけど・・・そんでもって、リンの奴が後ろの方で「ルイ、背中だけきれい~~!!」とか言って笑い転げてるし・・・。

 それにしても、おっかね~~嬢ちゃんだな!埋まるどころか全部弾き飛ばしちまいやがったよ・・・。当たってたらオレはスイカみたいになっていたとこだ。こりゃ、マジにならねぇと死ぬな。


「お?・・・うん??あれ?あれれ?何か、身体がピリピリすっぞ?くっそ!他にもなんかしたな?ずっるい奴だなぁ!」


 フフフ、ダブルトラップなのだよ!お嬢ちゃんと喋ってる間に痺れ蛾の鱗粉も撒いていたのだ!!風下に立ってのがウヌがツキよのぅ・・・。岩キツネの野郎は流石に動物の勘か、上手く躱しやがったな・・・しっかし、ピリピリ程度かよ。結構撒いたんだぜ?泥の沼にハマって痺れて終わりの予定だったんだが・・・面倒だな。


「くおっ?!」


 泥の塊がドリルのように飛んできた。咄嗟に身を翻したが左腕に少しかすり血が滲む。泥が再び襲ってきたが、これは剣を盾代わりにして防いだ。間髪入れず三度目が飛んでくる!剣と泥がぶつかり合うと“ジャリリン!!”と火花が散った。

 三度目の攻撃を防がれた泥は飛び退いて女の傍に降りた。すぐさまリンが焔の球を吐き出し攻撃するが、焔の玉をステップして避けるとブルブルっと身震いで泥を払い、正体を現した。岩キツネか!まさか岩をくり抜くっていうあの爪で攻撃してきてたのかよ!

 まてまて!こいつ等、飯の取り合いごときでオレを殺す気か??怪我させたくねぇとか思ってる場合じゃないかもな・・・。

 いや、どうしたもんかな。向こうもなかなかいい連携しかけて来やがるもんだから、小細工の時間もとれやしねぇ。ならばここはひとつ・・・。


「おい!!やるなぁ!お嬢ちゃん呼ばわりして済まなかった!名を聞いておこう!オレは、ルイだ!ルイ=なんていうのかは知らねぇ!昔の記憶がねぇんだ。こっちの銀色のが連れのリン!オレたちは竜飼いだ!!」


「うん?!名乗りか!いいね!!私はセリセリ!セリセリ=エルドランド=ガランドだ!この子は岩キツネのオイデ!!お前こそいい動きすんなぁ!ってか、竜飼いだったんだ?!・・・「竜飼いに悪い奴はいない」って聞いたことあるけど?」


「えっと、セリセリ?さん??その言い方だとオレ、悪い奴扱いかい?ちょいとひどかないかい?」


 そう他愛のないごく普通の名乗りの合間に、痺れ蛾よりも上位の麻痺系の粉を撒き続けていた。誰だ?姑息なんて言いやがった奴は!?はん!違うね!戦略ですよ!!

 それにしても・・・エルドランド・・・どこかで・・・。


「お前は、オイデを泥だらけにした!それだけで充分悪い奴だ!!」


 セリセリと名乗った女は先程と同じように飛び掛かりからのワンパンチを繰り出してきた。まだ動けるのかよ!!並の魔獣なら泡吹いて痙攣してるっつーの!!

 今度は地面を軟化させてないからこちらも飛び上がって躱すことにしたが・・・悪手であった。えぐれた地面から巻き上がる噴煙の中からキラ、キラっと二本の矢が飛んできた!空中で躱せるはずもなくそのうちの一本が腰のベルトに命中した。

 運の悪いことにその個所はベルトに括り付けてある護符入れの中の”風”だった。破壊された護符は見事に発動!!

 まるでよくある悪者の”おぼえてろ~~~”とか”やなかんじ~”みたいにオレは螺旋を描きながら湖へと吹き飛んでいく・・・。

 実にみっともない話だが、変な態勢で吹き飛ばされたために水面に打ち付けられ腰を痛め、湖面でもがいているところをリンが咥えて救出してくれた。

 岸へ戻されると、セリセリと名乗った女が右腕を突き出し矢の発射姿勢のまま痺れて固まり、傍らでは主人を心配して岩キツネがグルグルと回っていた。


「・・・なぁ、セリセリ・・・だっけか。動けねぇだろ?もう戦いたくねぇから痛み分け、ってことにしねぇか?」


「セッちゃんはまだ負けて無いんだナァ!オイラが相手ナァ!!」


 うおぅ!岩キツネってマジで喋るんだ!てか、揃いも揃ってなんて好戦的な奴らなんだ。オジサン、もう見栄で立ってるだけで精一杯なのよ、勘弁して。


「オイデ。下がってて。・・・さぁ!好きにすればいい!悔しいけど身体が動かない。でも負けたなんて思ってないからな!お前がずるいだけだ!!こんなの勝負じゃない!」


 しかも負けず嫌いと来たもんだ・・・フゥン、好きに、ねぇ・・まぁ、よく見りゃ全てがデカいがイイ女なのは間違いねぇ。そんじゃ、ま、好きにさせてもらいますかね。

 オレは壊れかけた腰ベルトの背中側から注射器を取りだし、突き出されたままの右腕に差し込んだ。


「、、、っ!」


 女が短く呻く。傍で岩キツネが歯をむき出しうなり声をあげて威嚇していやがる。さて、これで薬が効いてくれば・・・


「暫らくすりゃあ、動けるようになるぜ。その量がセリセリに・・・長ぇな、セッちゃんでいいか?セッちゃんにどの程度で効いてくるかは解らねえが、まぁ、いずれ動けるようになるぜ」


「・・・ホントなんだナァ?オマエ。変な薬じゃないだろうナァ!そうなら、オイラが許さないナァ!オマエずっこい奴だから信用できないんだナァ!」


「ちょっと!キツネ!!ルイの悪口ヤメてくれる?ルイはその女に怪我させたくないからこういう戦い方したの!二人とも脳筋なの?それにルイは剣で戦ったって強いんだからね!!」


 リン・・・ありがとう・・・でもね、無理。勝てない。


「まあそういうわけだ。リン、焚火を頼むわ。オレは魚捌いてくる。なあ!昼飯にしようぜ!お二人さんも食うだろ?オジサン、腕ぇ振るっちゃうよ?味にゃそこそこ自信あんだぜ!それとよ、オイデっつたか。セッちゃんの顔拭いてやんな。せっかくの美人さんが泥で台無しだ」


 実際は悔し泣きしていたがそこは触れちゃ野暮ってもんよ。


 さ、て、と。この魚を丸焼きってのも芸がねぇし、腰が痛くて持ち上げれねぇから切り分けて香草焼きにしようかね。丁度昨日の香草が付け合わせにもなるしな。

 「リン、皿」二枚しかねぇからアイツら用だな。ん?動けるようになったみてぇだが・・・襲っちゃ来ねぇだろ。

 皿に盛り付け香草を添えてスープと共に差し出す。


「ほれ、大丈夫か?昼飯出来たぜ。食え」


 膝を抱えチョットしょげているセリセリに皿を差し出す。チラっとオレを見てしずしずと受け取ろうとした、その瞬間


「ブチッ、ズルッッ」


 壊れかけたベルトが限界を迎え下着と共にズボンが落ちる。・・・終わった!半泣き女の眼前に毛無しのキノコをご提供。


「違うんだ!これは!これを喰えじゃなくて、そのつもりでも無くて、昼飯はこっちで・・・とにかく皿を!!ズボンが上げらんねぇ!!」


 いやぁああ~~!!何でそんなにガン見なんだぁぁ!オジサンだって恥ずかしいって思うこともあるんだぜ~~!?


「お前、それ!お前もエルドラの神に仕えてるのか?!・・・うん??でも村でオマエ見たこと無いし、竜飼いが居るって聞いたこともないし・・・何なんだ、お前?・・・ま、いっか!!私と一緒だな!!うん、決めた!お前、私に子を授けろ!私と”同じ”くらい強いからな。そんで、私の村に連れて行く!!伝承の通りだ♪」


一同「はぁあああ??」だ。


”やっぱりなんだナァ!絵本の・・・お約束通りの流れってヤツなんだナァ!”


「ねぇ!この女ちょっとおかしいよ?!ナニ急に子供とか言ってんの??村とか意味わかんない!ルイは心に大事な人がいるの!!その為に旅すんの。だから無理!!!ね!キツネ?!」


「そ、そうなんだナァ!セッちゃん、よ~く考えるんだナァ!このオッサン、下品なんだナァ!オイラに「このキノコは食いもんじゃねえ」とか言って森ん中でブラブラ見してくる様な奴なんだナァ!」


「・・・え?ルイ?どういう事?」


 あ”あ”あ”、余計なことまで・・・こじれてる、こじれて来てるっつーの!リンちゃん、白い目ヤメテ・・・泣きそうだ。


 昼飯を食いながら、オレは相当しどろもどろに何とか毛無しキノコの誤解を解いた。ただ、その説明だけではセリセリは引き下がらず村に連れて行くの一点張りだ。

 気は進まないが、食後に果実をかじりながらオレ達の旅の目的を・・・リッチェの事も含めて・・・すべて話した。だから、無理だと。

 皆、黙って聞いてくれた。時折セリセリが鼻をすする。・・・ありがとう、ホントはいい娘なんだな。


「わかったよ。うん。わかった!連れて行くのは諦めるよ・・・。女神の涙か・・・ゴメン、私も結構色んなトコいったけど、聞いたときないな。あ、お昼ご馳走様でした。お前、じゃない、ルイは飯作るの上手だな!とっても美味かったよ・・・取り敢えず、隣の街だろ?私たちもそっちなんだ。そこまで一緒に行こう。うん!決めた。それがいい!!」


 こうして俺たちは取り敢えず隣りの街まで一緒に向かうことになった。・・・まぁ、なんだ、リンにも友達?が出来たみてぇだし、とっとと出発ってもんだ。

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