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RUIRIN涙鱗 ライト  作者: 花殿ナイ
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第12話 美味いエールが飲みてぇんだ

「リン、オレを咥えて飛んだとして何処まで行けそうだ?」


「う~ん・・・けっこう高いね。半分くらい?かな」


 リン引っ張り上げ作戦はダメか・・・。ならいっそ、ぶっ壊しちまうか!手頃な岩の割れ目が有ることだし、そこに爆破の呪符を埋め込んで矢で射抜けばドカン!はい、通れます、という寸法だ。


「少し下がってろ。工事用の呪符だが結構な威力があるからよ。岩の破片なんかも飛んでくんゼ?・・・って、当たるのはオレだけか」


 弓の扱いにはほんの少し自信があるが、ブリックの弓は強弓で弾くのに結構な力が必要だ。うまく当てられるか自信がねえが、ま、なんとかなるでしょ。


「はい、ドカ~ン!!」


弦を引き絞り狙いを定めて矢を放つ。


 コーーーン


 矢は数センチずれて岩肌に傷をつけて上方へと吹っ飛んでいった。


「もうっ!ちゃんと狙ってよね!耳塞いで損しちゃったよ!!・・・あれ?この岩、今揺れた・・・?」


「ははっ!オレ様の強弓アタックは岩をも揺るが・・・す・・・リン!!離れろ!そいつはただの岩じゃねぇ!!魔獣だ!!」


 なんてこった!ただの岩山だと思っていたがコイツはロックイーターと呼ばれている魔獣だ!なんでこんなところに?ここにはお前の喰いもんの岩なんかねえぞ?!・・・あれか!大戦時にどこかの国が兵器として送り込んでいたと聞いた事があるが、コイツは、それか?大戦も終わり用がなくなってここに座り込んでそのまま眠ってたのか?


「チックショウ!やっちまった!!」


「ゴメン!ボクも気配がないから気がつかなかったや!!」


 ソイツは背中に体積した砂利や泥をまき散らしながらゆっくりと立ち上がり此方に振り向いた。今は明らかな敵意を感じる。そりゃそうだ。寝てるところを起こされたのだからな。

 ・・・デカい!!20メートル位だろうか?そのデカいのが今まさに左腕を振りかぶり、オレたちをぶん殴ろうと襲い掛かって来た。


「リン!アイツの股下の方へ飛べ!急げっ!!」


 オレとリンの頭の上を物凄い質量の岩の腕が通り過ぎて行った。刹那、暴風に飛ばされヤツの股下をくぐり背後に回された。振り向くとヤツの振るった拳とその風圧で、森と地面がえぐり飛ばされている。もしヤツに背を向け逃げていたら、と思うと背筋が凍る思いだ。一息つく間もなく、片足が上がってオレ達を踏みつぶしにかかって来た。図体のわりに反応が早いな!


「ズウ~~~ン!!」


 物凄い地響きと踏みつぶされた樹々の根の破片がオレ達を襲う!!「ルイ!!」飛ばされてきた破片がオレの額をかすめ出血する「大丈夫だ!」流れ出る血を拭いながらヤツの対処法を考える。


 ・・・あれだ!さっき呪符を埋め込んだ場所はヤツの頭部だ!あれを発動させることが出来れば何とかなる!


 弓を構えるとリンが一番狙いやすい高台にオレを咥えて運ぶ。この辺の連携はそこいらの冒険者やハンターには真似できねぇだろうな。


 集中して呪符を埋め込んだ辺りに狙いを定める。この強弓なら目一杯引き絞れば岩ごと呪符を破壊できるだろう。ただし、大きく外さなければ、の話だが。


「スゥー、ハァ~~・・」


 一つ深呼吸して精神を整る。周りの音もヤツの立てる地鳴りも全てが消え、ただ、ヤツの動きのみに集中した。

 ・・・右肩が上がり次の一撃を加えるべく、ヤツは腕を大きく後ろへ引いた。その時を逃さず矢を放つ!

 限界まで引き絞られた弓幹と弦がビシッ!とうなりを上げる。矢は稲妻のような勢いでヤツの頭部の一部を破壊して、そのまま彼方へと消えて行った。

 瞬間、ヤツの頭部の七割ほどが凄まじい勢いで吹き飛び、そのまま巨木をへし倒しながら倒れ込み、大きな地鳴りを残して動かなくなった。


「っ・・!ハァハァ・・あ、危なかったな!いや~~~っ!両腕がビリビリするぜ~!ブリックの野郎、こんなの使ってたのかよ!お陰様で通れるようにはなったが、握力がゼロックスで剣も握れやしねえ・・・。また何か来たら、そんときゃ、ムリだ!何もねぇことを女神さんに祈ろーぜ!カアァーーッ!喉乾いた!エールが飲みてぇ!」


「うん!ボクも飲みたーい!ダイアンさんとこの地エール、すっごいおいしかったよね♪・・あ!・・・ごめんなさい・・・」


「ははは、気にするな。確かに、美味かったなぁ・・・。次の街でも美味い店があるといいな・・・」


 正直、あの時から食事は何の味もしねぇし、酒も酔えるが美味くはない。心の一部を殺していることはきっと、リンにも察せられてるんだろうなと思う。が、それはお互い様だ。アイツも、どこかぎこちねぇしな。

 あの時の怒りや絶望は、今、オレが生きている意味なのだ。オレの腕の中で衰弱していく中、リッチェが語った夢。オレは彼女を生き返らせて必ず叶えてみせる。

 記憶も消してくれ、なんて都合に良いことは出来ねぇと思うがそれでも、みんな揃ってテーブルを囲みてぇ。そんな、ささやかな夢位いいだろ?女神さんよ・・・。

 そんときはみんなで、ホントに美味いエールと食事で”乾杯”って言いてぇんだ。


「おお、見ろよリン!さっきのでっけえ音で魚共が脳震盪起こして浮いてきちまってるぜ?今なら簡単に捕まえられるな!でも昼までまだ時間があるし・・・勿体ないがほうっておこう。に、しても、ひどく水を濁らせちまった・・・!先を急ごう。湖に流れ込んで広がる前に着きてえ」


「そだね!暑くなってきたから、ボクも水浴びしたいし!いこ!」


 ロックイーターがどいてなだらかな斜面となった沢は簡単に渡りきる事が出来、倒れたヤツの足の裏を眺めながら進むと、ほどなく森の樹々の隙間から湖面が見え始めた。

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