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もふもふとスローライフ、たまに世界を救うくらいで 〜ちょっとおかしなもふもふと暮らしています〜  作者: はかんどぅ


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3.迷子のもふもふを探して

朝の空気は少しだけ暖かくなっていた。

季節が変わり始めているのかもしれない。


外に出ると、ユラはすでにそこにいた。


「……また先に出ていたのか」


声をかけると、しっぽがゆっくり揺れる。


「いつからいたんだよ」


当然、返事はない。

でも少しだけ得意そうに見えるのは気のせいじゃないと思う。


「まあいいか。水、汲みに行くぞ」


歩き出すと、少し遅れてついてくる。

この距離感も、だいぶ慣れてきた。



村の中を歩いていると、前から声が飛んできた。


「カナタ!」

「ん?」


振り向くと、女の子が手を振りながら駆けてくる。


「シュリか」

「うん!ねえ、ちょっといい?」

「いいけど、どうした」


シュリは少し息を整えてから、慌てた様子で言った。


「もふもふがいなくなっちゃったの!」

「……もふもふ?」

「うちの子!小さくて白くて、丸くて、えーっと小さくて、すごく可愛いの!」

「だいたい分かった」


なんとなく想像はつく。


「いつからいない?」

「朝起きたらいなくて……家の周りは探したんだけど、いなくて……」

「森は?」

「入口だけちょっと見た。でも奥は怖くて……」

「まあ、そりゃな」


少し考えてから、肩をすくめる。


「じゃあ、見てくる」

「ほんと!?いいの!?」

「近くにいるなら、そのうち見つかるだろ」


そう言うと、シュリはぱっと顔を明るくした。


「ありがとうカナタ!お願い!」

「見つかったら連れてくる」

「うん!」


手を振るシュリを背に、森の方へ向かう。

横を見ると、ユラがこちらを見ていた。


「……行くぞ」


しっぽが一度、ゆらりと揺れる。

それで十分だった。



森に入ると、空気が少し変わる。


「……静かだな」


ぽつりと呟く。

ユラは少し前を歩いている。


……けど。

「ん?」


動きが少し違う。

いつもよりゆっくりで、何度か立ち止まる。


「どうした」


声をかけると、一度だけ振り返る。

それからまた前へ。


しっぽが、落ち着かない動きをしていた。

揺れて、止まって、また揺れる。


「……なんかあるのか?」


試しにそう言うと、ユラはそのまま進む。迷いがない。


「そっちでいいんだな?」


小さく笑って、その後をついていく。




しばらく歩くと、かすかな音が聞こえた。


「……鳴いてる?」


耳を澄ませる。小さくて弱い声。


ユラがぴたりと止まる。

視線の先は――茂みの中。


「ここか?」


近づいて、葉をかき分ける。

すると。


「……いたな」


小さな白いもふもふが、丸くなって震えていた。


「お前か」


そっと手を伸ばす。


「大丈夫か?」


少しだけ逃げようとして、すぐに止まる。

弱ってるな、これ。


「シュリが探してたぞ」


抱き上げると、驚くほど軽い。


「怪我は……なさそうか」


軽く確認する。問題はなさそうだ。

横を見ると、ユラがじっと見ていた。

さっきまでの落ち着かない動きが、少し収まっている。


「見つかったから、もういいのか?」


そう言うと、しっぽが一度だけ揺れた。


「……分かりやすいな」




村に戻ると、すぐにシュリが気づいた。


「カナタ!」


駆け寄ってくる。


「見つけた!?」

「ああ、森の少し奥にいた……コイツだろ?」


差し出すと、シュリは大事そうに抱きしめた。


「よかったぁ……!」

「そんな遠くじゃなかったぞ」

「ほんとに!?よかった……」


安心した顔で何度も頷く。


「ありがとうカナタ!ほんとに助かった!」

「別に、大したことじゃない」

「でも私じゃ無理だったもん!」

「まあ、奥は危ないからな」

「うん……今度から気をつける」


少し反省した様子で言う。

それから、ユラに気づいた。


「あ、この子……カナタの?」

「まあ、そんなとこだ」

「キツネだよね?」

「たぶんな」

「しっぽ、白いね」

「ああ、そこだけな」


シュリは少しだけ近づいて、しゃがむ。


「触ってもいい?」


ユラは動かない。

ただ、じっと見ている。


「……やめとけ」

「え、なんで?」

「今はたぶん、その気分じゃない」


シュリは少しだけ不満そうにしながらも、手を引っ込めた。


「そっか……」

「そのうちな」

「うん」


納得したのか、笑顔に戻る。


「じゃあ、ほんとにありがとう!」

「気をつけろよ」

「うん!」


手を振りながら帰っていく。



「……行くか」


小さく呟く。

ユラはすぐ隣にいた。


「お前、最初から分かってたのか?」


軽く撫でる。

しっぽがゆっくり揺れる。


「まあ、そういう顔してたな」


もう一度撫でると、今度は少し大きく揺れた。

満足らしい。


「助かったよ」


そう言うと、しっぽが軽く当たる。

たぶん、気にするなってことなんだろう。


そのまま家に向かって歩く。

特別なことは何もない。

ただ、少しだけ誰かの役に立った。

それだけのこと。


「……まあ、悪くない」


呟くと、ユラが少しだけ体を寄せてきた。

しっぽが、軽く触れる。


それだけで、なんとなく満たされる。

静かな生活は、今日も変わらない。


でも、少しだけ広がった気がした。

たぶん、それも悪くない。

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