表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
網目模様の途中  作者: 河野 与一
網目模様の解
98/99

好きじゃなきゃ

 「先生、私、あのお守りを無くしてしまったの。先生が合格祈願してくれた⋯あの、湯島天神の⋯ごめんなさい。」車の中で陽菜はお守りを無くした事を正直に侘びた。

「あぁ。そんな事気にしなくていいのに。もう合格したのだからお守りのほうが御役御免、って離れていったのかな?」

大輝は陽菜へ優しい口調で答えた。この柔らかく陽菜を包み込むような、この大輝の空気に陽菜は東京に、いや大輝に戻って来たことを悟り感じた。長野でもずっと恋しかったこの大輝の雰囲気。今直ぐに、側に、手の届く所にあることが信じられないような、これがきっと幸せっていうのだろう。大輝は気にしなくていい、そんな事で怒らないからと繰り返した。

「長野はどう?大変?高校の女子達はみんな噂してるよ、あのりんごバームのモデルが卒業生でお母さんは社長だって⋯。すごい話題になっているみたいだね。」

高校生に今何が流行っているのかを肌で感じられる職業に就いていることでそういったことには敏感になる。そんなに「有名人」になってしまった陽菜を遠く別の世界にも大輝には感じられた。

「でもね、ママはいずれ飽きられるから、バームは続けながらもまた次に何かやってみたいって言ってるの。」

陽菜は少し躊躇いつつも答える。

「すごいバイタリティだね。さすが会社を興しただけはある。僕も新しいことに挑戦してみたい。」

大輝はそれから尊敬するよ、とも付け加えた。


 大輝と陽菜を乗せた車は和香の家に到着した。

「ただいま⋯!」

陽菜の声に俊介と和香が玄関まで迎えに来てくれた。パパも和香さんもそのまま、変わってない。あ、でもパパはちょっとオジさんになったかな⋯?なんて。和香さんは笑顔いっぱいで陽菜ちゃん、陽菜ちゃん、と話しかけてくれた。会っていなかった時間を埋めるように。戻ってきて良かった。こんなに歓迎され戻る所があることは嬉しいし幸せな事なんだと噛み締めた。食卓には陽菜の好物の唐揚げやハンバーグ、ポテトサラダなどが彩りよく盛られ所狭しと並び、皆で囲む。まだおかわりあるからね、と和香が促すもそんなに食べられないよと言う大輝に

「じゃあ持って帰りなさいよ!」

と和香はタッパーに詰め始め大輝に持たせようとする。どこの母親も同じことをするんだなと大輝も陽菜も大笑いし、それにつられて俊介も和香も笑った。

陽菜は長野でのりんごバームの事や咲苗の出産の話、信司の消防団の事などを報告した。

「陽菜ちゃん成長してるのね。頑張ってるのね。」

和香も俊介も嬉しそうに陽菜の話を聞いていた。大輝は陽菜の成長が益々自分とは距離が出来ている様にも感じてしまう。楽しそうに信司という男の話をする。自分がいなくとも陽菜は楽しくやっている様にも見える。自分が言い出した看護師への道を進んでいるだけなのに。そしてその信司という男は陽菜のことを好きなんだろうなとも感じた。好きじゃなかったらそこまで陽菜に対して守ってやらないだろう。好きじゃなきゃ。

陽菜はりんごバームを和香達にお土産、として手渡した。今増産してるけど注文に中々追いつかなくて、と話した。

「わあ。これがあの話題のりんごバームね。お洒落なパッケージ!さすが話題になっているだけある。美佐子さんすごいわ。ね?」

和香はりんごバームに見入っている俊介に同意を求めた。俊介もそうだな、と言いながらパッケージを眺めていた。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ