初対面
シンジ・トライの新芽を見せて貰い挨拶をして帰ろうとした時にチャーがどこからともなく走って会いに来てくれた。走るのが大好きで、しかも得意げにしているのが何ともかわいい。トラックの荷台に留守番させていたモカも連れてこよう。チャーとモカはいつまででもじゃれて遊んでいるので犬種を超えた友情がある様に見えた。
「美佐子、来てたんだ。」
後ろから会合から帰ってきた祐司が声を掛けてきた。
「お邪魔してます。さっきね信司くんからシンジ・トライの新芽を見せて貰ったのよ。楽しみね。」
「あぁ。形になるにはまだまだ先だけど。金田さんが市場のリサーチしてて、こういうのどうかって大学の先生にまで話を持っていったみたいで。信司にやらせてみてる。」
「そうだったのね。応援してる。何か出来ることがあったら言ってね。」
「ありがとう。」
祐司は中学の頃と変わらないくしゃっとした笑顔と右手の人差し指で鼻の下をこするクセ。
「祐司くん、変わらないね。そのクセ!」
その言葉にドキッとしたのか祐司は
「やっべ!成長してないってことかな。」
サッカー部の祐司はクラスでもいや学年でも人気者だった。沢山の女子から好感を持たれていたのにも関わらず私に告白をしてくれて、周りからはやっかみもあったけどサッカーをしている、彼がとてもカッコよくて素敵で私の青春だった。別々の高校に進学してからはだんだん連絡取らなくなってしまって自然消滅した。あの頃はまだメールとかLINEとか無かったし⋯そんなツールがあったとしたらまた変わっていたのかも知れないけど。
「じゃあ。娘がそろそろ帰ってくるから帰るね。ありがとう。モカ!帰るよ。」
モカに声を掛け停めてた軽トラに向かおうとしたその時に前の道路を自転車に乗って大学から帰宅途中の陽菜が前を通った。
「あ!ママ。こんにちは。」
陽菜は跨がっていた自転車から降り祐司に挨拶した。
「もしかしてチャーくん?」
モカと遊んでいたチャーが今度は陽菜に遊んで!と尻尾を振り前足で陽菜の太ももあたりにハイタッチをする。
「娘の陽菜です、こちらは吉田祐司さん。」
陽菜と祐司がこんにちは、初めましてと挨拶する。その声を聞いてか奥の新芽の手入れをしていた信司もハウスから出てきた。
「あ。こんにちは。息子の信司です。」
「宮島陽菜です。初めまして。」
陽菜は宮島姓だけど、私が離婚して高橋に戻したと説明した。これが信司と陽菜の初対面の時だった。




