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網目模様の途中  作者: 河野 与一
網目模様の巡
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保証人

 夕食は和風のパスタをさっと作り、済ませた。俊介さんは婚姻届を書く時は酔ってない方がいいよね?、と言って一度出したワインを引っ込めてしまった。私はほろ酔いで記入してもいいんじゃない?と言ってしまったけど、

「もう!こんなに大切なものを書くのに和香は酔いたいのかい。アルコールを入れたらダメだよ。」

と怒られてしまった。

「酔った勢いで籍を入れるのは本意じゃない。若いときならあり得るのかも知れないけど?ずっと前からしたいことだったし待っていたことだから。」

そうね。ごめん!でも俊介さんが柔らかく微笑むから。幸せでこそばゆい気持ち。

「それからね、ちょっと大事な話をしよう。和香が流産した時、本当に申し訳なかった。あんな気持ちになったことがなくてね。和香にも勿論そうだけど、大輝先生や陽菜にもあの時はショックで辛い思いをさせてしまったね。」

俊介さんは真剣に謝り、話してくれた。

「今日、届けを書く事が出来て嬉しいよ。ありがとう。」

いつも仕事で使っているジェルインクのボールペンを出した。本来ならボールペンも特別なものを用意すれば良かったかな、なんて思ったり⋯でもこれ書き易いから。普段使いのものを。結局結婚って每日の日常の積み重ねの延長の先だからね。

俊介さんの次に自分の名前を記入する。「妻となる人」の欄に。ふたりで相談して、俊介さんの宮島姓を名乗ることに決めた。そしてお互い再婚の□にチェック印⋯。同居を始めた日の欄についてはいつだっけ⋯?なんて数えて笑いながら。

「もう随分一緒にいるのに。この日をずっと待っていたよ。」

俊介さんも待っていてくれていた。私も。

そして、保証人2名のうち1人目を大輝に、2人目を陽菜ちゃんにどうしてもお願いしたくて俊介さんに相談すると宅急便で陽菜の好きなお菓子類と一緒に同梱して、送り返してもらおうかといったアイデアが閃き私も同意した。そうだ、東京の銘菓を入れよう。高橋家の皆さんにも食べてもらえるように⋯。それから私が陽菜ちゃんに予備校のある日に良く持たせていたバームクーヘンも入れたら喜ぶかな?近所の洋菓子店のバームクーヘンだから長野では手に入らないだろうしな⋯長野にも美味しいお菓子はいっぱいあるけどね。陽菜ちゃんからサインもらうから、用事しておこう。先ずは大輝にサインもらおう。陽菜ちゃん、大輝の次にサインしてくれるかな。


 「大輝先生、漸く入籍する運びになりました。ずっと和香さんを待たせてしまった形になってしまって。特に和香さんが流産したとき、あの時は本当に申し訳ありませんでした。順番も間違えてしまって。大人の男として、父親として恥ずかしい事だった。ちゃんと先生にお話できなかったのでこの場を借りて。これからも和香さんを幸せにしたいと思っています。先生に婚姻届の保証人を是非お願いしたい。」

数日後、大輝を家に呼び男同士で胸襟を開いて話した。和香はまだ仕事から戻って来なかった。

大輝は

「正直、母親の流産というのは息子の立場としてはショックでした。でもそれからあなたがたの、互いを深く思いやっている気持ちを知りました。そういうことが愛なのかと少しずつは理解できてきました。僕は父親を知らないので正直わからなかったからです。でも最近はもし父親がいたならこんな感じなのかなと思えるようになってきました。これからも、母を宜しくお願いします。」

と言い保証人欄にサインしてくれた。ありがたかった。そんな風に思ってくれていたことを。僕は続けて

「こちらからもう一つお願いがありまして。陽菜の事です。看護師になった暁には、娘のことを考えて頂けませんか?先生のことを一途に思い本人なりに頑張っています。父親として支えてやりたいので。」

僕は大輝に頭を下げた。

「はい。」

大輝は決心はしてくれたようだがそれ以上の言葉はなかったし僕もそれ以上は言えなかった。そのタイミングで和香が帰ってきた。両手いっぱいに東京銘菓などのお菓子を抱きかかえるように。

「あら大輝来てたの?見て、陽菜ちゃんに送るお菓子買ってたらこんなになっちゃった!」

これでしょ、あれでしょ、といくつも出してくる和香に思わず僕と大輝は吹いて笑ってしまった。大輝はその後黒猫たちと遊んで帰っていった。和香が陽菜の好きだったバームクーヘンを大輝にも持たせていた。


 




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