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網目模様の途中  作者: 河野 与一
網目模様の解
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狡猾

 信司は農業大学へ進学のアドバイスを貰うもどこから手を付けてよいのかさっぱり分からず途方に暮れた。社会人選抜がどういったもので、どのような試験があるのかというところから調べることにした。向井教授の推薦があるとはいえ、志望理由の小論文、それから高校卒業程度の生物の口頭試験があるという。高校の生物の教科書を押し入れの段ボールから引っ張り出してみた。幸いにして父親、裕司が東京の農大卒ということで分からないところはアドバイスを受けながら勉強を始めた。農大を受けるにしても、長野の地元の大学か、父親の母校の東京の大学か、少し考えてみたものの結局は長野でりんごの面倒を見ながら大学に通って知識を増やす道が最良だし最短だと思った。だけれども、東京の農大にも行ってみたいとも思ってしまう。母親や眞奈美にも会いたかった。しかし、考えれば考えるほど、やはり長野に軸を置いたほうが結局1番良いだろうとの考えに落ち着いてしまう。

そして陽菜は?陽菜は大学卒業後も長野に留まってくれるのだろうか。それとも、やはりあの大輝先生のもと、東京へ戻るのだろうか。陽菜が東京へ戻るというのなら自分も東京の農大へ進学して守ってやりたいのに、とさえ思ってしまう自分。陽菜が成人式を終え東京から戻って来たときにどうしても渡せなかったあのお守り。これを渡せば陽菜は益々大輝先生を恋しくなり東京へ戻る決意を固めてしまうのではないかとも狡猾に考えてしまう。陽菜には大学を受験することは吐露しなかったしお守りも渡せなかった。ずるい自分。陽菜が東京に戻ると言ったら、東京の農大を受験し合格した暁には、自分も東京の農大に進学が決まったから一緒に行こうと言える。寧ろ、長野の大学へ行くと言ったら陽菜は安心して「お互い進むべき道に進みましょう」と東京へ帰るのでは。受験のことを今の段階で陽菜に打ち明けなかったのは入試に失敗したときに格好悪いからという理由だけ。そうそれだけ。陽菜の反応が怖いからじゃない。そう自分に言い聞かせた。信司は上着のポケットからあのお守りを弄って取り出しては眺めを何度も繰り返し、次に会った時には今度こそ陽菜に返そうと決意した。


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