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チャプター4:「〝VAC〟」

 VAC AFの手によって、街とその近辺から生体兵器の群れは一掃され、街はVACの掌握下に入った。

 

 VAC AFは当初より航空偵察にて、この街の存在は掌握していた。

 そして当初の予定では、この街は簡易な中継点としてのみ利用する予定であり。そのための班のみを残して、前進観測隊は行動を再開進行する予定であったのだが。

 しかし思わぬ敵性存在、生体兵器群との遭遇と。そして何より『拾い物』があったことから、前進観測隊は調査他のために一時停止、逗留することになった。



 場所は街の内にある、打ち捨てられた小さな市民センター施設。

 前進観測隊は、そこをこの街での調査行動のための臨時指揮所としていた。


「……」


 センター施設のメイン空間内の端。そこに少女たちの集う姿がある。

 彼女たちの視線は、ソファに横たえられ、今に衛生員から手当てを受ける黒髪ショートボブの少女に集まっている。

 先にオフィサーに抱き庇われていた、マエナと呼ばれていた子だ。


「――うん、一時的なショックのものだ、命に別状はない。しかし驚いたな、応用できるチューナーが手元にあってよかった」


 衛生員は、次には囲う少女たちに振り向いてそんな伝える言葉を。何か驚きを少し示す言葉と合わせて紡いだ。


「しばらく安静に、何かあればまた声を掛けて」

「すまない……ありがとう」


 そしてしかし、衛生員はそれ以上何らかに言及や追求することはせず。

 少女たちが微かにだが安堵した色を見せたのを見ると、自分は外れる旨を示す。

 衛生員にはオフィサーが代表して礼を返し、衛生員はそれを聞いて返し、場を離れていった。


「……驚きは、こっちもだよねー……」


 その衛生員が場を離れたのを見送った後に、そんな言葉を零し呟いたのはステラ。


「簡単とはいえ、マエナの体を『チェック』から『メンテナンス』して見せた……」

「地上は荒廃し、あっても小さなコミュニティばかりと聞いていました……それなのに「彼等」は組織として完成し、一定水準の技術を携えているように見えます……」


 つづけ、オフィサーにレフィンが零し紡いだのはそんな言葉。

 それは彼女たちの「認識」と、実際に相対したVACの姿から、その「齟齬」に驚愕を示すもの。


「オフィサー……」

「!」


 しかし次に、オフォサーたちの元からか細い声が響き聞こえる。

 見れば皆からマエナと呼ばれていた黒髪ショートボブの少女が気づき、オフィサーたちを見上げていた。


「お手数を……お掛けして申し訳ありません……」

「何を言ってる、大事が無いようでよかった」


 自分が足枷となってしまったことを、悔やむ様子で詫びる言葉を述べて来たマエナ。

 それにオフィサーはそれを少し咎めるように返し。しかし同時にマエナの前にしゃがみ、その頬を撫でてやった。


「!、オフィサー、彼等が来たようです」


 その直後、レフィン耳打ちにてオフィサーに促し伝える。

 オフィサー始め皆が振り向けば、センター施設の玄関入り口より、複数名の戦闘行動服姿の者等が、現れ順に入ってきた姿が見えた。


 それこそアイザックと。そして前進観測隊の士官、隊長クラスに、ドゥインなどの主要曹からなる者等。

 各役目のために他所要に出向いていた各々が、それを終えて場に集ったのだ。


「――待たせたな」


 その現れたアイザック等は、オフィサー始め少女たちの前に雑多に立つと。

 代表してアイザックが、まずはそんな一声を述べた。


「……」


 しかし少女たちの側には。一応己たちの窮地を救ってくれたとはいえ、未だに得体の知れぬアイザック等に対して。

 今も警戒する色が多分に見えた。

 もっともそれには、現れ集った内にやはりユーダイドやスーパーヒューマンの隊員の姿があったことも理由であったが。


「警戒するな――と言っても無理な話か」


 そんな少女たちの様子に不快を覚えるでもなく、アイザックは「当たり前か」と言うように言葉を零す。


「ええと、まずは救ってくれた事に礼を言いたい。……しかし、君等は一体……」


 それに応じ返したのは、オフィサーの美女。彼女はまずは救ってくれた事についてを例で返し。

 しかし合わせて、探る様にアイザック等の身分正体を尋ねる言葉を紡ぎ向ける。


「そうだな、改めて名乗ろう――自分等は、VACだ」


 それにまた応じ答えるように、次にアイザックはまずは自分らの組織――国の名称を名乗って見せた。


「ぶいえーしー……?」


 しかしそれだけでは当然分からないか。今度はステラが「ハテナ」と言うようにキョトンとした顔を浮かべて、疑問の声を零す。


「ここより西側、西海岸を起点にユニステラス大陸の1/4程を領土と定めた――「国」だ」


 それに今度は、またアイザックがVACの、自分等の国についての簡単な説明を紡ぎ述べてみせる。


「国……だって?」

「まじ……?」


 それにまた、驚きの声を零すはオフィサーにステラ。


「――にわかには信じられない」


 しかし、そこで毅然とした声が一つ飛んだ。


「私たちは、地上は全て無に帰したと聞かされて来た。再び文明など産まれようがない程に、破壊し尽くされて崩壊したと」


 声の主は少女の一人、レフィン。

 彼女はオフィサーを押し退け、いや庇うように前に出ると。凛と、そして毅然とした眼に視線でアイザック等を刺し、そんな言葉を。

 彼女たちが知る限りの「常識」を、述べて訴えて見せる。


「そして……人類に仇成す、恐るべき「異形」が跋扈していると」


 そしてレフィンが続け紡いだのは、そんな言葉。

 それは同席する、前進観測隊のユーダイドやスーパーヒューマンの隊員を示し。

 そして同時にその彼等に明確な警戒の意識を向けて明かすものだ。。


「レフィンっ!」


 しかしそれは、取る側からすれば明確な無礼となりうる言葉。

 そんな発言をしたレフィンを叱り咎めるように、次には声を張り上げた。


「命令じみたことを言いたくないが、言葉には気を使ってもらいたい」


 そしてアイザックの側も、言葉をいくらか選んでのものだが。

 抱える指揮下に対するそんな発言を受けて、少し冷淡に作った声で言葉を紡ぐ。


「ウチの面子は、みんな元は咎無き「人間」だ――荒事を望むわけじゃ無いが、身内を良くない風に言われて、ヘラヘラしてるほど人間は出来ちゃいない」


 そしてアイザックが紡いだのは、静かに淡々とした声での、しかしそんな「忠告」、「警告」の言葉。

 前述通り、ユーダイドやスーパーヒューマンは恐ろしくも見える容姿を持つが。

 それが環境汚染や薬学暴走の影響を受けてしまったが故であり、彼等は元は咎無き「人」。

 そんな形の指揮下各員を、侮蔑の意で表現されることを、アイザックは認めはしなかった。


「別に、聞き流しますが」


 方や、当の本人たちの内から代表するように。

 基準小隊の小隊長であるユーダイドの女中尉の彼女は。「なれっこ」だとでも言うように、やれやれといった様子でそんな言葉を零して添えたが。


「すまないっ」


 そんなアイザックからの忠告に、謝罪の声を上げながら。

 レフィンをまるで生徒でも下がらせるように己の背後にし、前に出てきたのはオフィサーの美女だ。


「貴方方への無礼、この子に変わって謝罪する。そして、現れた貴方方の部隊の規模、それに共通規格で揃えられる形を見る所に、国というのも虚言ではないのだろう……」


 オフィサーはまた重ねて詫びるこの場を述べ。

 合わせて推察から核心づける、いやどこか自分に言い聞かせるような色で、そんな言葉を紡ぐ。


「あなたが、この子たちの代表か?」

「えぇ」


 アイザックにあってはそれ以上の今の件への追及は得ず。話を変えてそう尋ねる言葉をオフィサーに向け。

 それにオフィサーは肯定で返す。


「そうだな……私たちも身分正体を明かそう――『エクソティア』、それが私たちの属する組織だ」


 そしてオフィサーは次に、少し意を決するような色を見せた後に。

 そう、己たちの身分正体であるらしい名称を紡いで見せた。

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