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チャプター3:「あらゆるの力」

「っ!」

「わっ、また!?」


 突然の状況事態に、呆気に取られていたレフィンに、ステラと呼ばれていた少女たちだが。

 次にはその目の前でさらに、群がり迫っていた敵生体兵器たちが、立て続けに打ち退き吹っ飛び始めた。


 そして生体兵器たちは、少女たち以外の新たな「敵」の存在、その出現に。

 足並みを崩しつつも、その注意視線を変えて向け。その「敵」に対応するべく動きを見せ掛けた。

 だが。


 ――直後。

 鈍い衝撃音が近くの向こうで轟き上がり。その場に固まっていた生体兵器の一群が、爆炎に巻かれて千切れ吹っ飛んだ。


「っ!?」

「わひゃっ!」


 それにまた目を剥き、驚きの声に反応を上げて見せるレフィンやステラ。


「これは、一体……!?」

「レフィン、あれっ!」


 そして困惑に言葉を零しかけたレフィンだが。しかしそれを遮り次に、ステラがその正体に気づいて向こう指し示した。


 現在地である交差点の向こうの奥。建物の影に隠れた、その先の街路から現れたもの。

 それは、大きなシルエット――装甲戦闘車両だ。


 詳細には、それは戦車駆逐車(駆逐戦車)のもの。大戦争より前にユニステラスに在った国の軍で使用されていた、大分古めかしい代物。

 ヌっ――と現れたそれは。そのオープントップの砲塔に備わる大口径長砲身の砲を、こちらへと旋回の動きから向けている。

 今に爆炎で生体兵器の群れを巻き上げた正体は、その様子からその戦車駆逐車で間違い無かった。


 さらには続け。また交差点から伸びる別方向の街路の先から、複数量の軽量四駆車輛が荒い動きで走り出現

 その各車は戦車駆逐車よりの援護支援を受けながら、交差点上の各所に雑多に散会から停車。

 そしてそのそれぞれの車上からは、正体不明の多数の武装した者等が。

 いや――VAC AF。第14前進観測隊の隊員等が、飛び降りての降車から散会展開。

 それぞれは順次、瓦礫などへの遮蔽にて配置に付き。そして交差点と周辺を抑え掌握するための戦闘行動を開始。

 多種多数の苛烈な銃火銃声を響かせ。生体兵器の群れを、火力にて退け始めた。



「これは、なにが……」


 その交差点上で始まった光景の中。

 全く想定していなかった唐突な事態、出来事から。先までの絶体絶命の状況も忘れ、佇む姿でいたのはレフィン。


「レフィンっ!」

「!」


 しかし、気を抜くにはまだ早かった。

 張り上げ届いたのは、彼女たちを指揮していた『オフィサー』の美女からの、叫び知らせる声。

 そして次には、レフィンは荒さを構わぬ動きで抱き留め押し退けられる。


「!」


 すぐにレフィン自身も状況に気づく。

 レフィンは、オフィサーに庇い退けられたのだ。

 抱き留め、あるいは抱き留められたまま二人の身はその先の地面に飛んで、落ち沈む。

 微かな痛みが走るが、それに構う暇は無かった。


「「!」」


 すぐさま二人が揃って視線を起こして向ければ。

 二人の目の前には、恐竜型から昆虫型まで三体程の生体兵器が迫り、囲っている光景が在り見えた。


「オフィサー!後ろへっ!」

「レフィンっ!」


 慌て、今度はレフィンがオフィサーを庇い、火器を繰り出しながら前へ出る。

 オフィサーは止めようとまた声を上げるが、レフィンは構わない。

 だが、状況は悪く。レフィンの攻撃が間に合う前に、生体兵器たちの向けた火器が、次にはレフィンたちを襲い砕くかに思われた。


 ――ドゥンッ!


 鈍く、しかし劈く音声が響き。

 そして、彼女達を囲っていた内の一体の生体兵器が、レフィンたちの目の前で撃ち吹っ飛んだのは瞬間であった。


「えっ?」

「!」


 ドゥンッ!


 思わずまた目を剥き、呆けた声を上げてしまったレフィンとオフィサーをよそに。

 再びの鈍く劈く音が響き、そしてまた二体目の生体兵器が打ち吹っ飛ぶ。


「「!」」


 そしてその直後の次。二人の背後側方から、一つのシルエットが現れてその傍の前方に立った。

 そのシルエットは、二人をよそに。その手に突き出し構える大口径リボルバーを撃ち放ち、残る三体目の生体兵器を容易く撃ち抜き退ける。


「……っ!」


 その次に、初めて垣間見えて二人が認識したのは。そのシルエット、人物の、堀の深くやや陰険そうな顔立ち。


 それは、他ならぬアイザックのものだ。


「1班前へッ」

「左、支援火器配置しろッ」


 そんな、アイザックの姿に顔を二人がまず垣間見たのも束の間。

 また直後に背後周囲より続々現れたのは、他数名の前進観測隊の隊員等。


((!))


 その数々の姿にまた、オフィサーやレフィンたちは驚きを覚える。

 それは単純に予期せぬ彼等の登場からによるものだけではない。


 それは、彼らの内に含まれる「様々」な存在。


 先陣を切る様に踏み込んでいった、まるでゾンビのように朽ちてしわがれた肌に容姿を持つ隊員。

 ――VACにて「ユーダイド」と呼ばれる、大戦争による環境汚染にて身に「変化」を生じた存在。


 背後側方からヌッ、と現れ。濃い青色の肌を持ち、そして人の身長体躯を圧倒的に超えるあまりにも巨大な身体で、航空機関砲を下げ担いで撃ちばら撒き始めた隊員。

 ――「スーパーヒューマン」と呼ばれる、薬学実験の暴走にて産まれた一種のミュータントである存在。


 そんな数々に、驚いたからだ。


「伍長、20mm機関砲を正面にッ」

「今行く、今やるッ」


 そんな、少女たちから見れば「異形」の存在たちは。

 しかし周りと連携し、極めて理知的に組織立った様子をいずれも見せながら。

 その身で扱う強火力をもって、脅威たる生体兵器たちを容易く退け始める。


 そんな、異質な光景に視線を奪われていたオフィサーにレフィンであったが。

 その彼女たちの視線が、次にはその彼女たちを見降ろすアイザックと合った。


「――」

「「!」」


 その、尖り刺すようなアイザックの視線に、レフィンたちは反射的に警戒意識を覚え。

 オフィサーはレフィンを護る様に抱き、しかしレフィンもオフィサーを庇うようにアイザックを視線で刺し返す。


「おいおい、ビビらせてるぞッ」


 だが、そんな所へまた背後より。

 意図的に軽い調子に作ってでの、割り込む声が掛けられた。


 そして追い付くように場に踏み込み現れたのはドゥイン。

 ドゥインはそんな声を発しながらも、アイザック始め場の皆をカバーするように、マークスマンカービン突き出し構える姿で、側方に立って配置。


「ん?あぁ、すまない」


 そんなドゥインの言葉にて、アイザックはそこで初めて自身の視線が、少女たちに警戒感を与えてしまっていることに気づいたようで。

 しかし慌てるでもなく、淡々とした謝罪の一言を零す。


「ったく――無事か?嬢ちゃんたち」


 そんなアイザックに呆れつつ、ドゥインは周囲の状況を確認して、他隊員等に任せて良いことを確認すると。

 アイザックと変わる様にオフィサーとレフィンの前に立って屈み、そんな安否を尋ねる声を掛ける。


「あ、あぁ……」


 それに代表するように返したのはオフィサー。しかし彼女もまだ驚きの渦中にあるせいか、その声は生返事だ。


「無理も無い、驚いたろう?」


 そんな彼女たちの心中を察して、ドゥインは今に無理に説明をしようとはせず、そう共感を示す言葉をまずは返す。


「レフィン!オフォサー!ちょ、これホントどーいう展開……!?」


 そんな所へ今度は、彼女たちの仲間である少女のステラが。慌て困惑しつつ駆け寄って来る。


「説明に手間がかかりそうだな」


 そんな少女たちの姿に状況を傍より見つつ、そんな他人事の様子で零したアイザックは。

 ひとまず隊長としての自分の仕事に戻る様に、状況を掌握するべく周辺に視線を走らせる。


 交差点上には、今先に先陣を切って突入した戦車駆逐車に。

 さらに続けて追いついた、原型から大分改造増強を施したものである中戦車も追いつき現れ。

 交差点上の各所に展開から停止鎮座、場の確保を進める様子が見える。

 補足すると、この車輛等は前進観測隊の戦闘車輛隊に組み込まれるもの。


 そしてその各車の援護の元、各方での各隊班の戦闘行動から、この場に群がっていた生体兵器群はそのほとんどが掃討無力化されており。その動く姿はほぼ見えなくなっており。


 間もなく。この街はVACの完全な掌握化に入った。

―TIPS―


□第14前進観測隊


・概要


 VACの大陸中央部への進出拡大戦略開始に伴い、先行前進偵察観測のための長距離行動、及びある程度の戦闘作戦展開を想定して編成された隊。

 単純な偵察、調査に限定せず。ある程度の規模までの作戦展開、及び主力部隊の火力投射における前進観測の役割を担うものとされ。

 規模こそ中隊の域に満たないが諸職種混成の形態を成し、柔軟な任務行動を期待したものとなっている。


 第14前進観測隊の他にも、同形態の前進観測隊が複数編成されている。



・編成


・隊本部及び付隊

 ・本部班

 ・工作班

 ・通信班

 ・衛生班

 ・偵察狙撃班

 ・行動支援班

 ・特殊火器班(エネルギー火器、大威力投射火器等)

・基準科小隊

 ・本部班

 ・第1分隊

 ・第2分隊

 ・第3分隊

・戦車車輛隊

 ・戦車班(中戦車×1)

 ・戦車駆逐班(戦車駆逐車×1)

・火力隊

 ・直接火力班(対物ライフル、無反動砲、誘導弾等)

 ・迫撃砲班

 ・火力誘導班(航空、火砲誘導)


 車輛、およそ20輛前後を装備。

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