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万年を生きる平和主義ヴァンパイア、いつの間にか世界最強に ~俺が魔王軍四天王で新たな始祖? 誰と間違ってんの?~  作者: 葉月双
アマラントスの花束を君に

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12話 サビナとアルト


「アルト君」

「はい」

「結婚した瞬間、旦那に『別の女も嫁にしようかな』って言われた妻の気持ちを述べよ」


 サビナが真顔で言った。

 瞳にハイライトがない。

 まるで闇に潜む者みたいだ。

 いや、サビナは元々ザ・闇の者って見た目だけども。

 あと、俺たちヴァンパイアだから闇に潜む者だったわぁ。


「アルト君、とりあえず正座しよっか?」


 サビナが急に笑顔になったので、俺はその場に正座した。

 ロザンナもよくやっている罰正座ってやつか!?

 とりあえず、ここはサビナの地下帝国のサビナの家。

 俺とサビナが30日ぐらい過ごしたあの部屋だ。


「いやぁ、俺はその、断ったんだぜ?」


 ニナとロザンナのプロポーズのこと。

 それに俺は了承したわけじゃなくて、100年後に考えると言っただけだ。


「断れてないよね?」


 サビナがキスできるぐらいまで顔を近づけて言った。


「……押しが強くて……」

「アルト君って、そういうとこあるよね?」


 サビナが淡々と言った。

 おっかしぃなぁ、ヴァンパイアって恋愛感情は希薄だったはずなのに。

 とか思っていると、サビナが急にパッと笑顔になった。


「なんてね」サビナが言う。「500年後ならいいよ。それまでは……わたしの独占ね?」


 サビナが人差し指を俺の唇に当てた。

 俺はサビナの指をパクっと口に含む。


「ひゃぁ!」


 サビナが驚いて飛び退いた。

 それから顔を真っ赤にしてプルプル震えながら俺を見ていた。

 ビビった小動物みたいで可愛い。


「500年だな? 分かった。それはそれとして、今日も可愛いな」

「あああ、アルト君!? そんなこと言うタイプだっけ!? さっきの指パックンも!」

「違うけど、サビナには言いたくて」

「もぉ! アルト君ったらぁ!」


 サビナは身体をクネクネと動かした。

 よし、もう正座はしなくて良さそうだな。

 そう思って立ち上がろうとしたのだけど。


「あ、正座はまだダメ」


 サビナがピシャっと言ったので俺は正座を維持することに。

 あれ? やっぱり怒ってらっしゃる?


「あー、俺たちの結婚式の話だけど……」

「エレノアに任せよ?」

「任せていい相手じゃねぇぞ!?」


 どんな結婚式になるか分かったもんじゃねぇ!

 旅団を引き連れてどっかの裕福な国を征服して、「会場はここにしましょう!」とか目をキラキラさせて言いそうだし!


「わたしそういうの詳しくないけど……」サビナが言う。「うちの帝国の子たちも結婚式ってやらないし……」


「まぁそうだよな……」


 うーん、エレノアは盛大にやって欲しいって言ってたけど、身内だけでこじんまりやってもいいか?


「まずそもそもアルト君、それってどこでやるの?」

「どっかのお城を借りてやるのがいいんじゃね? パレードとかはしなくていいよな?」

「パレード!? 無理無理! わたし陰の者だよ!?」

「俺もな!」


 ぶっちゃけ挨拶とかもあんまりしたくない。

 しばらく沈黙。

 案はなーんにも浮かばない。

 普段ならロザンナとかニナに相談するんだけど、それはさすがに人の心なさすぎ?

 いや、俺は人じゃねぇけど。


「ところでアルト君、子供は何人ぐらい欲しい? エレノアはバンバン生んで欲しいって言ってたけど……」

「そうだよなぁ、数は多い方がいいけど……ヴァンパイアのガキが大量に発生すると思うと頭が痛いな……」

「それはそう!」


 俺たちは自分たちの子供時代を思い出していた。


「世界大丈夫だろうか……」


 俺とサビナが変わり者なだけで、本来ヴァンパイアはみんなエレノアみたいな性格なのだ。

 最近のエレノアはなんだか落ち着いてきた気もするけど。


「ねー」サビナが同意する。「遊びで湖を蒸発させたり、邪神ババアのパンツ盗んだり……他種族と喧嘩したり……」


 それ俺たちじゃね?


「ヴァンパイアの子って親のことなんて平気で殴るよね……」

「さすがに俺たちは負けないと思うぞ……」


 なんせ神と半神だからな!

 てかこのまま生きてりゃサビナも普通に魔神になるだろうし。


「それより、せっかく増えても太陽光チャレンジで半分ぐらい灰になる覚悟しとかねぇとな……」

「聖水一気飲み大会もあるよ……」


 絶滅危惧種だから増やさなきゃ、って思考停止で信じてたけどさぁ。

 ヴァンパイアって本当に増やしていい種族か?


「なんだか憂鬱になっちゃった……」とサビナ。


 マリッジブルーってやつか?

 いや違うか?


「だからアルト君」サビナが決意を固めたような瞳で言う。「とりあえず抱いて」


「おう……おう?」


 俺は一瞬、頭が混乱したのだが。

 そんなことはおかまいなしに、サビナがその半神の力を存分に振るって俺をベッドに放り投げる。

 ボヨン、とベッドで跳ねた俺の身体が、再びベッドに落ちる前に俺の服は全て剝ぎ取られた。

 速いっ!


◇


 俺とサビナの結婚式は魔王城で行われた。

 あのあと、俺とサビナは結局エレノアに相談した。

 そうすると、エレノアがザっと考えてくれて(しかも比較的まともだった)、魔王城の使用許可も取ってくれた。


 ロザンナは割とノリノリで「ぼくの時の参考にする!」と言っていたので問題ない。

 俺とサビナは曇天の空の下、バルコニーで魔物の群衆に手を振った。

 俺はいつもの服に似ているちょっといい服を着ていて、サビナは漆黒のドレス。

 午前中に魔王城での挨拶やら何やらを終えて、俺たちは地下帝国へと向かった。

 地下帝国でも俺たちは群衆に手を振った。


「うううぅ! ついに! ついにサビナ様が! うぅぅぅ!」


 サビナの眷属のマイルズが感極まって泣いてしまった。

 夕方まで地下帝国で挨拶やら何やらを済ませて、次に俺の村へと移動。

 そう、1日で三か所を回るハードスケジュール結婚式!

 まぁ式ってか、ただのお披露目会だな。


 村の広場には『祝! 領主様の結婚!』という横断幕がかけられていた。

 まるで祭りのように村人たちが色々準備してくれていて、俺はサビナの腰を抱きながらみんなに挨拶した。

 ニナがアホみたいに泣いていたけど、どういう涙なのか分からなかった。

 リクが村人を代表して大きな花束を俺たちに渡す。


「領主様、姉貴を眷属したみたいですけど、僕も眷属になりたいです」


 リクは上目遣いでとっても可愛い表情で言った。

 マジでこいつ、なんでこんな可愛いんだろうな?

 俺は思わず頷いてしまった。


 まぁ、どうせリクの家族は了承するだろうし、問題ない。

 その後は自由にみんなで食事を楽しんだ。

 エレノアと子供たちがブラピに乗って村を駆け回っている。


「元気だなぁ……」

「うん……わたしちょっと疲れちゃった……」


 サビナが寄りかかってきたので、俺はソッと支える。


「じゃあ、今日はうちでゆっくり寝ようか」

「え?」


 サビナが目を丸くして俺を見た。

 なんだ?

 もう何もなくね?

 魔王城、地下帝国、俺の村の3つでお披露目会したんだし。


「寝るの?」

「疲れてんだろ?」

「……人間風なら……このあと初夜って言って……朝までエッチする行事があるけど?」


 なんだってー!?

 って、そういや聞いたことあるな!


「いや、待て待て、今日はエレノアも泊まる予定なんだ」


 エレノアは朝からずっと俺たち一緒にいる。


「……じゃあ、わたしの家に行く?」


 サビナがジィーっと俺を見詰める。

 うーん、これ断ったらダメなやつか?

 しょうがねーなー!

 エレノアはブラピもいるし大丈夫だろ!


「行くかぁ!」

「うん!」


 サビナが俺に飛びついてきたので、俺はそのままサビナをお姫様抱っこ。


「ちょっと嫁さんとイチャついてくる!」


 俺は村人たちにそう宣言して、地下帝国の入口へと【ゲート】したのだった。


「ねぇアルト君」

「うん?」

「500年は……本当にわたしが独占、するからね?」


 瞳を潤ませ、頬を染め、真っ直ぐに俺を見ながらサビナが言った。

 ああ、こいつマジで可愛いな。




あと1話あります。

最終回っぽいけど、あと1話後日談(300年後)があります。


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9月17日にコミカライズの一巻が発売されます!

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